化学工学論文集
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36 巻, 6 号
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編集ノ-ト
分離工学
  • 姫野 修司, 竹谷 究, 藤田 昌一
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2010 年 36 巻 6 号 p. 545-551
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル 認証あり
    高いCO2/CH4分離性能を有するDDR型ゼオライト膜を用いたバイオガスの膜分離プロセスの開発を行うとともに,DDR型ゼオライト膜を用いた下水処理施設から発生するバイオガスの分離・精製と膜の耐久性を評価した.まず,簡素な1段分離プロセスに必要な膜性能を数理モデルにより把握し,実験によってDDR型ゼオライト膜を用いる際の最適な処理流量を決定した.次いで,実バイオガス分離・精製を行うために下水処理施設内にパイロットプラントを設置し,精製実験を行った.結果,目標とする回収CH4濃度90%,排出CO2濃度97%で精製可能であった.また,約40時間以上通気しても膜性能は変化しなかった.そのため,本研究で開発した膜分離プロセスは十分にバイオガスの分離・精製に適用することが可能であることがわかった.さらに,バイオガスの前処理を一切行なわず1600時間供給することにより,バイオガス中の不純物が膜分離性能に与える影響の検討を行った結果,長時間の通気によりバイオガス中に不純物として含まれる高級炭化水素,シロキサンなどの高沸点化合物により膜性能が低下すると考えられた.
  • 澁川 卓実, 大平 勇一, 小幡 英二
    原稿種別: ノート
    専門分野: 分離工学
    2010 年 36 巻 6 号 p. 552-556
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル 認証あり
    排ガスに含まれるSO2による亜硫酸塩の生成を目的として,工場排ガスを模した酸素を含有する混合ガスを用いてSO2の吸収実験を行った.SO2吸収によって生成する亜硫酸イオン濃度と硫酸イオン濃度をHPLCで測定し,それらの生成比率について温度288–333 Kで検討した.その結果,pHが6以上の吸収液にSO2を吸収させた場合,温度に関係なくほとんどが硫酸イオンになるが,吸収液のpHが4付近になると亜硫酸塩を生成する.pHが4未満の吸収液でSO2吸収を行う場合,温度303 K以下では亜硫酸イオンが生成するが,温度333 Kでは硫酸イオンが生成する.
熱工学
  • 鈴木 芳行, 原田 拓自, 庄子 正和, 渡部 弘達, 松下 洋介, 青木 秀之, 三浦 隆利
    原稿種別: 報文
    専門分野: 熱工学
    2010 年 36 巻 6 号 p. 557-565
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル 認証あり
    現在,窒素酸化物やすすといった環境汚染物質の同時排出削減法として,エマルジョン燃料の研究が行われている.加熱過程におけるエマルジョン燃料液滴では,蒸気吹き出し(puffing)およびミクロ爆発といった2次微粒化現象が発生することが知られているが,2次微粒化挙動の詳細が解明されているとは言い難い.本研究では,界面活性剤のHydrophile-Lipophile Balance(HLB)値がエマルジョン燃料の乳化特性および2次微粒化特性に及ぼす影響を検討した.加熱過程における分散滴の挙動を観察するために,水相のみに着色したエマルジョン燃料を用いて観察を行う内部挙動の可視化方法を提案した.この可視化方法を用いて,着色した水およびHLB値の異なる界面活性剤を用いて調製したエマルジョン燃料液滴を熱電対に懸垂し,集光加熱を行い,2次微粒化挙動を高速度カメラにより観察した.その結果,Oil-in-Water(O/W)型エマルジョン燃料においては,水中油滴が凝集し,O/W型からWater-in-Oil(W/O)型への転相が生じた後に,分散した油中水滴が再凝集し,ミクロ爆発が発生することが示された.W/O型エマルジョン燃料においては,HLB値の増加に伴い,ミクロ爆発発生確率が減少するが,O/W型エマルジョン燃料においては,HLB値にかかわらず,ミクロ爆発発生確率に大きな差異はないことが示唆された.
反応工学
  • 吉井 泰雄, 穐山 徹, 木曽 文彦, 細井 紀舟, 光来 要三
    原稿種別: 報文
    専門分野: 反応工学
    2010 年 36 巻 6 号 p. 566-570
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル 認証あり
    石炭ガス化複合発電システムに適用するCOS加水分解触媒を選定するために,固定層反応装置を用いて反応温度,水蒸気濃度などに対する影響を評価した.さらに常圧石炭ガス化炉の後流に水洗浄塔,およびCOS転換器を設置し,石炭ガス化ガス雰囲気下にて,空間速度,COS濃度の影響を評価した.その結果,TiO2系のCRS31触媒(Axens社製)は反応温度393 K,水分濃度2.6%でCOS転化率は0.9と高い性能を示した.CRS31触媒によるCOS加水分解速度はCOS濃度の1次に比例し,433 K,水分濃度2%のCOS加水分解反応の速度定数は3.3 s−1であった.CRS31触媒のHClに対する耐久性能はAl2O3系触媒に比べて優れている.常圧ガス化炉後流に設置したCOS転化器に実形状のCRS31触媒を充填し,H2S等を含有した多成分系のガス条件においてTiO2系触媒のCOS転化性能を評価した結果,反応温度453 K以上,滞留時間1 s以上で転化率は0.98と高い性能を示した.
  • 田中 良, 山本 剛, 笹井 亮, 板谷 義紀
    原稿種別: 報文
    専門分野: 反応工学
    2010 年 36 巻 6 号 p. 571-575
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル 認証あり
    本研究では難分解性廃液として微量PCB含有絶縁油を想定し,マイクロ波非平衡プラズマを用いて難分解性廃液を液体のまま直接分解することを試みた.マイクロ波非平衡プラズマを用いた絶縁油の分解率は80%程度であり,トリクロロベンゼンの脱塩素化率は78–87%であった.また,PCBを分解した場合は,転換率5.2×10−4%と,わずかではあるがPCBからPCDFへの変化が起こり,ノンオルト体のCo-PCBは分解率3.0–46%であったが,PCB全体としては77%の分解率であった.本研究により,マイクロ波プラズマ中に微量PCB含有絶縁油を液体のまま直接投入して分解可能であることが明らかとなった.
プロセスシステム工学,安全
  • 樋口 文孝, 野田 賢, 西谷 紘一
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム,工学,安全
    2010 年 36 巻 6 号 p. 576-581
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル 認証あり
    イベント相関解析は,離散的に発生するイベントとその発生時刻からなるイベントログデータからの知識抽出法である.本論文では,エチレンプラントのイベントログデータにイベント相関解析を適用し,日々のプラントオペレーションに潜む連鎖アラーム,定型操作,不要なアラームおよび操作の抽出を試みた.操作イベントおよびアラームイベントをイベント間の類似度に基づきグループ化し,同一グループ内に含まれるイベント群の関係を詳しく分析した結果,個々のイベント情報からだけではわかりにくいイベント群の発生原因を的確に発見できることを示した.また,従来の個別のイベント発生頻度に着目した方法では削減対象とならなかった発生頻度の少ない不要イベントも抽出できることを確認した.イベント相関解析の結果をもとにイベント削減策の効果を定量的に評価できるため,費用対効果に基づく改善に役立つ.
  • 武田 和宏, 濵口 孝司, 野田 賢, 木村 直樹, 伊藤 利昭
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム,工学,安全
    2010 年 36 巻 6 号 p. 582-588
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル 認証あり
    化学産業におけるプラントの大規模化やプラント監視制御システムの高度化によりプラントアラームシステムの重要性が高まっている.適切なアラームシステムの設計のためには,膨大な数の測定変数の中からアラーム変数をシステマティックに選択する仕組みが必要である.本論文では,状態変数間の因果関係を表す二層Cause-Effect(CE)モデルに基づき,識別したい異常原因を定性的に識別できるアラーム変数と管理範囲の組合せを網羅的に導出できるアルゴリズムを提案する.簡単なプロセスを例題に本手法の有用性を例示する.
材料工学,界面現象
  • 河野 昭彦, 矢田 賢司, 堀邊 英夫, 太田 裕充, 柳 基典
    原稿種別: 報文
    専門分野: 材料工学,界面現象
    2010 年 36 巻 6 号 p. 589-593
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル 認証あり
    炭酸エチレン(Ethylene Carbonate: EC),炭酸プロピレン(Propylene Carbonate: PC)による化学増幅ネガ型ノボラックレジストの除去性を検討した.ネガ型レジストを用いることにより,ポジ型レジストでは困難なレジスト除去時間(レジスト除去速度)を定量的に求めることが可能であることを明らかにした.露光量の増加につれレジストが架橋するため,EC,PCとも除去速度は遅くなった.溶剤温度が同じとき,ECの除去速度はPCのそれに比較し速かった.ECの分子サイズがPCのそれに比較し小さいので,レジストに侵入しやすく溶解させやすいためと考えられる.アレニウス則をEC,PCによるレジスト除去反応に適用することにより,露光量が高いほど,また溶剤の分子サイズが大きいほど,活性化エネルギーが高いことが判明した.
  • 青島 政之, 尾崎 正孝, 佐藤 明
    原稿種別: 報文
    専門分野: 材料工学,界面現象
    2010 年 36 巻 6 号 p. 594-604
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル 認証あり
    一辺の長さが約0.9 μmのキューブ状ヘマタイト粒子からなる,格子構造を有する自己集合膜の構造解析を行った.キューブ状粒子はFeCl3水溶液を373 Kで8 d間エージングして合成した.粒子の直接光学顕微鏡観察から,デジタル画像解析法により動径分布関数を決定した.弱い磁場と粒子間の磁気的相互作用が格子構造に及ぼす影響を明らかにするため,キューブ状ヘマタイト粒子の2次元モンテカルロ・シミュレーションも行った.非常に弱い地磁気の場合,粒子の沈降過程を通して鎖状および正方格子構造がガラス平板上に形成した.シミュレーションの結果から,正方格子構造は粒子の磁気モーメントのジグザグな配向によって安定化していることが明らかになった.比較的強い磁場の場合,実験で得られた動径分布関数の第1ピークよりもやや長距離側にブロードなショルダーが現れる.これは理想的な単分散系の場合のシミュレーションによって得られた動径分布関数に現れた3つのピークに相当するものである.このことは,磁場方向に傾いた磁気モーメントを持つ,エネルギー的に安定な斜方格子構造が形成することを示している.
エネルギー
  • 辻口 拓也, 増見 直人, 川久保 歩美, 中川 紳好
    原稿種別: 報文
    専門分野: エネルギー
    2010 年 36 巻 6 号 p. 605-610
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル 認証あり
    高濃度メタノールを利用する直接メタノール燃料電池(DMFC)の開発を目指し,メタノールタンクと膜電極接合体の間に,特定の細孔径および開孔率をもった孔開き金属箔を挿入したパッシブ型DMFCを提案し,孔開き金属箔の細孔径および開孔率がパッシブ型DMFCの発電特性に与える影響について検討した.適切な開孔率をもつ孔開き金属箔を用いることで,メタノールクロスオーバーを十分抑制し,高濃度メタノールを用いて発電することができた.電極へのメタノール供給速度は金属箔の開孔率に大きく依存し,開孔率が1%以下では開孔率の増加に伴いメタノール供給速度も増加した.開孔率が3%以上では,開孔率が増加してもメタノール供給速度はおおよそ一定の値を示した.この結果は,メタノール溶液が開口部から金属箔表面に一定距離ぬれ広がっていることで説明づけられた.
環境
  • 谷本 めぐみ, 福岡 寛, 重本 直也
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2010 年 36 巻 6 号 p. 611-616
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル 認証あり
    1,4-ジオキサンを含む排水を高温(25–80℃)で,空気もしくは窒素ガスを曝気することにより1,4-ジオキサンを揮発させた.揮発した1,4-ジオキサンを含む気体に紫外線を照射することにより1,4-ジオキサンを分解した.水溶液からの1,4-ジオキサンの揮散挙動はHenry定数を用いて説明することができた.気化した1,4-ジオキサンをUV照射により分解したが,容器内での平均滞留時間にかかわらず単位時間当たり一定量が分解された.このようなガスバブリング-UV照射を1,4-ジオキサンを含む廃棄物埋め立て地浸出水に適用したところ,1,4-ジオキサンを十分に分解できることが確かめられた.1,4-ジオキサンのUV分解生成物として,acetic acid,acetol,ethylene glycol monoformateおよびethylene glycol diformateが検出された.これらの生成物は1,4-dioxane環の酸化的解列によって生成すると推定された.
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