陰イオン交換体の一つであるMg/Al系層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide,LDH)を用いて,いくつかのカルボン酸イオンやドデシル硫酸イオンなどイオンサイズや構造の異なる有機陰イオンのイオン交換特性を調べた.イオン交換前後のLDHの構造変化や,LDHの表面疎水性におよぼす有機陰イオンの種類および捕捉量の影響について検討を行った.
C
6H
5COO
−,C
2O
42−,CH
2(COO)
22−およびC
6H
4(COO)
22−のイオン交換等温線の形状はLangmuir型を示した.LDHのイオン交換容量の理論値に対して71–88%に相当する有機陰イオンを捕捉できた.LDH層間への有機陰イオンの取り込み量の差は,主に有機陰イオンの価数や大きさの違いに起因すると考えられる.同様に,C
12H
25OSO
3−のイオン交換等温線はLangmuir型であり,イオン交換容量とほぼ同量のC
12H
25OSO
3−がLDHに捕捉された.有機陰イオンを取り込んだLDHは,LDH層間での有機陰イオンの配向性に応じてその層間距離が変化することがわかった.ジカルボン酸イオンを捕捉したLDHの接触角は出発原料であるNO
3−型LDHの接触角と大きな差はなく,LDH表面は親水性を示した.本研究で用いた有機陰イオンではC
12H
25OSO
3−をLDHに捕捉させたときに最も大きい接触角,すなわち疎水性表面が得られた.
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