化学工学論文集
Online ISSN : 1349-9203
Print ISSN : 0386-216X
ISSN-L : 0386-216X
37 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
編集ノ-ト
物性,物理化学
移動現象,流体工学
  • 岡田 文太朗, 石丸 拓, 橋本 俊輔, 井上 義朗
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2011 年 37 巻 1 号 p. 4-11
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル 認証あり
    流体混合を考える場合,通常は異なる種類の流体物質が空間的に均一に混ざり合ったとき,混合が完了したと判断する.しかし,Belousov-Zhabotinskii反応(BZ反応)のような自発的かつ周期的な化学反応を行う流体系では,系内の微小流体要素は反応成分の物質量だけでなく,濃度変化の周期や位相といった周期的な運動モードを特徴付ける情報も併せ持つことができる.さらに,この種の情報は,流体要素の空間移動が無くても流体要素間の近接相互作用を通じて,周囲に伝播することができる.したがって,BZ反応を行う流体系を撹拌した場合には,通常の流体混合の場合とは異なる濃度パターンの時空間変化が観測される可能性がある.本研究では,ヨウ素の脱色反応,可逆な呈色反応とBZ周期反応を行う3種類の混合実験における濃度の時空間パターン変化の違いを比較しながら,流体混合に関する従来概念の再検討の必要性について考察する.
  • 小川 浩平, 吉川 史郎, 片桐 将達
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2011 年 37 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル 認証あり
    6枚平羽根タービン翼(FBT),6枚平羽根ディスクタービン翼(FBDT),6枚45°平羽根傾斜翼(上昇流)(PBT(Up)),同(下降流)(PBT(Down)),および3枚マリンプロペラ翼(Marine)の5つの汎用撹拌翼の混合性能を,情報エントロピーを導入して定義された総括混合性能指標(MW)の実測値に基づいて,実操作上の視点から比較検討した.平均MW値,最大MW値(MWmax)に達したときの翼回転速度(Nmax),MW/NmaxMWの翼回転速度の変化に対する応答性能,MWmaxで規格化されたMW(=MW/MWmax)の翼回転速度の変化に対する応答性能,槽単位体積撹拌所要動力あたりのMWmaxMW/MWmaxと撹拌所要動力の余裕度の積を混合性能比較因子とした場合,上記の5つの汎用撹拌翼の混合性能の順番は良い方からFBT > FBDT > PBT(Up) > Marine > PBT(Down)となり,平羽根タービン翼(FBT),平羽根ディスクタービン翼(FBDT)がほかの3つの撹拌翼よりも高い混合性能を示すことを定量的に明らかにした.
  • 加藤 禎人, 亀井 登, 多田 豊, 加藤 紀幸, 加藤 知帆, 伊吹 竜彦, 古川 陽輝, 長津 雄一郎
    原稿種別: ノート
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2011 年 37 巻 1 号 p. 19-21
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル 認証あり
    層流域から乱流域まで幅広い範囲において的確な動力相関方法のないアンカー翼の撹拌所要動力が測定された.層流域では,アンカー翼を大きなパドル翼とみなすことで,その動力数は2枚羽根パドル翼に対する永田の式,亀井らの式で十分相関できた.乱流域では,亀井らの式でパラメーターの補正を加えることなく相関できた.ただし,乱流域で回転数が大きくなり渦が発生した場合,動力数は相関値より若干大きくなるので注意が必要である.
分離工学
  • 小野 勇次, 天野 佳正, 相川 正美, 町田 基
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2011 年 37 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル 認証あり
    椰子殻から製造した市販の活性炭を用い,粒径の大きさが溶液中からの有機化合物の吸着と脱着に及ぼす影響を検討した.異なる粒径(0.053–0.588 mm)の活性炭へのフェノールとベンゾチオフェン,それぞれの吸着実験を25℃で行った.フェノールの吸着等温線はLangmuir式によく合い,粒径の大きさが最大吸着量に及ぼす影響はほとんどなかった.活性炭の粒径を小さくするほどフェノールとベンゾチオフェンの吸着速度は速くなった.吸着平衡に達する前に吸着を終わらせ脱着をした時,最初に外表面から速く脱着した後に,ゆっくりと活性炭内部への再吸着が起こることが示された.擬一次速度式,擬二次速度式による速度解析に従って,吸着の初期の段階は擬一次速度式に合い,時間の経過とともに擬二次速度式に合うことが示された.また,擬一次と擬二次を組み合わせることによって初期から平衡に至る吸着過程を予測した.
熱工学
  • 稲垣 照美, 渡邉 直哉
    原稿種別: 報文
    専門分野: 熱工学
    2011 年 37 巻 1 号 p. 28-37
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究は,これまで提案した三色放射温度計に放射率比なる物理量を導入することで計測原理の適正化を図り,温度計測の高精度化と汎用化を意図したものである.すなわち,3種類の赤外フィルタで分光された赤外線が検知する放射率を実験値に基づいて一定の割合(放射率比)で線形モデル化し,同定した線形近似式を計測原理に組み込んだ計測系を構築した.ここでは,周囲の温度環境に依存する外部熱源,計測角度,あるいは各種表面性状などが温度計測に及ぼす影響について実験的に評価した.その結果,提案した三色放射温度計測法は,常温域や常温域に比較的近い中温領域における低放射率物体表面の温度計測に有効であることが確認できた.この計測法は,さまざまな生産プロセスや化学プラントの温度管理など,従来の接触式や非接触式センサでは計測が困難な体系に対しても広範囲に利用できるものと期待される.特に,計測対象の放射物性に関するデータベースをあらかじめ構築しておけば,より精度の高い温度計測が可能となろう.
反応工学
  • 出口 清一, 香月 良太, 杉浦 佳美, 武市 敏典, 柴田 直樹, 井須 紀文
    原稿種別: ノート
    専門分野: 反応工学
    2011 年 37 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル 認証あり
    高強度コヒーレント光の短波長化に既用の粗大単結晶非線形光学材について,粉状にて低強度インコヒーレント可視光を短波長化できれば,粉状可視蓄光材と組み合わせることで光触媒反応に有効と考えられる紫外分散光源を構築できる.
    非線形光学材LiNbO3の試薬粉末を水中オレンジⅡ光触媒反応場に供し,反応速度の向上を以って上記前提現象を間接的に確認した.可視蓄光粉末と単結晶由来のLiNbO3粉末を共存させ紫外分散光源型としたところ,光触媒粉末のみに比べ5倍程度の水質浄化反応速度促進を得た.
  • 出口 清一, 杉浦 佳美, 柴田 直樹, 香月 良太, 武市 敏典, 井須 紀文
    原稿種別: ノート
    専門分野: 反応工学
    2011 年 37 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル 認証あり
    光触媒粉末による水質浄化において,その励起紫外光源の分散化を試行した.ここでは,紫外分散光源の一候補として,電界変化により冷光するエレクトロルミネセンス(EL)に着目した.
    その結果,簡便な固相熱分解法により,紫外域を電界発光するとされるモリブデンおよびクロム置換型タングステン酸カルシウム(CaWO4 : MoおよびCaWO4 : Cr)粉末を調製できた.水中オレンジⅡの放電分解に比べ,光触媒ならびに上記EL粉末の共存系では高い水質浄化速度促進が得られた.また,CaWO4 : Mo(3 wt%)粉末への各種金属ドープ効果を検証し,CaWO4 : Mo(3 wt%) : Ce(2 wt%)ならびにCaWO4 : Mo(3 wt%) : Dy(1 wt%)が本プロセスに最適であることを確認した.なお,金属ドープCaWO4 : Mo(3 wt%)粉末調製に要す化学物質・エネルギー・時間に対する水質浄化速度促進効果の総合的見地から,CaWO4 : Mo(3 wt%)を実用上最適EL粉末とした.
プロセスシステム工学,安全
  • 小川 浩平, 黒田 千秋, 吉川 史郎
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2011 年 37 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル 認証あり
    人間がさまざまな事態/状態を主観的評価値に基づいて階層分けした結果と客観的評価に基づいて階層分けされる結果との関係,また従来の主観比によって設定した安全率と客観比によって設定される安全率との関係について,情報エントロピーの視点から検討を加えた.階層分けの場合は,各階層の主観的評価値軸上の幅が均等になるように階層分けしても,その客観的評価値軸上の幅は中間層ほど大きくなることに注意すべきであり,階層分けを議論する場合には主観的評価値だけでなく客観的評価値に基づいても行う必要があることを明らかにした.また安全率を設定する場合は,より安心できる安全率を志向するためには,既存の主観確比に基づく安全率だけでなく,主観比から変換された客観比に基づく安全率をも考慮する必要があることを明らかにした.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 大島 達也, 二井手 哲平, 白木 光, 馬場 由成
    原稿種別: 報文
    専門分野: 生物化学工学,食品工学,医用工学
    2011 年 37 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル 認証あり
    養殖ブリから採血された血液に対してタンパク質変性,酵素分解,限外ろ過の順に処理を施してヘモグロビンから酵素処理ヘム鉄(HIP)を調製し,濃縮させる各行程について検討した.プロテアーゼ分解の後,限外ろ過して得られた透過液と残渣について乾燥質量と鉄イオンの分布を分析するとともに,各試料に含まれるペプチド成分の分子量測定を行った.その結果,プロテアーゼによってヘモグロビンが目的通りに分解されていること,限外ろ過膜によってHIPはろ過残渣として定量的に回収されていることが示された.ろ過残渣として得られたHIPは分子量2,400–7,300程度の成分を含んでいた.分画分子量の異なる限外ろ過膜での透過実験の結果,分子構造が剛直なヘム鉄を主成分とするHIPは,分画分子量20,000の膜を用いた場合でも95%以上がろ過残渣として回収されることが示された.
エネルギー
  • 西田 耕介, 伊藤 寛和, 津島 将司, 平井 秀一郎
    原稿種別: 報文
    専門分野: エネルギー
    2011 年 37 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル 認証あり
    固体高分子形燃料電池(PEFC)においては,高性能化に向けて解決すべき課題の一つに,氷点下起動運転時での水分凍結によるセル出力低下の問題がある.そこで本研究では,低温起動運転時でのPEFCカソード電極内部における水分の凍結現象を直接可視化できるようにし,水分凍結挙動とセルの電圧特性の相関関係について検討を行った.また,ガス拡散層(GDL)の構造や運転条件が,水分の凍結現象やセルの性能に及ぼす影響についても議論した.その結果,−10℃でPEFCセルの発電を開始しても,カソードで生成された水分はすぐに凍結せず水滴の状態で存在し,しばらく発電を維持した後,カソード電極内の液水が凍結しセル電圧が降下することが明らかになった.また,氷点下環境下での起動運転の継続時間は,GDLの素材(カーボンペーパー,カーボンクロス)や出力電流密度,カソード供給ガスの酸素濃度に大きく支配されることが示された.
環境
  • 張 文卿, 加藤 茂, 小島 紀徳
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2011 年 37 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル 認証あり
    都市ごみは,焼却により衛生的問題を生じずに容量を大幅に減少させることができるため,焼却処理されることが多い.特に途上国では今後焼却処理の割合が増えるものと期待される.しかしながら,焼却灰を埋め立て処理する際には,有害元素の溶出が懸念される.本研究では,カラムに都市ごみ焼却飛灰を詰め,硝酸による浸出透過実験を行った.いくつかの実験において,ある段階で急激なpH低下,透過速度の増大およびAl,Zn,Feといった元素の溶出濃度の急上昇がみられることがわかった.
    この現象は次のように説明された.まず,主要元素であるCaが溶解し,浸出液のpHがカラム内で透過に伴い上昇する.このとき,Al,Zn,Feといった元素は,カラムの上部で一度溶解するが,カラムの下部でpHの上昇に伴い再析出する.このことにより徐々に透過速度が低下する.しかし,Caの溶出がほぼ終了し,pHが低下するとともに,析出物が再溶解し,これが透過速度の急激な増大をもたらす.
    このような現象の発現は,灰の充填方法,すなわち水の事前添加・水和や,ひび割れの存在,充填密度・層高などに影響された.本報告でみられた現象は,長期間埋め立て場所からの重金属の溶出がみられていない場所でも,突然急激に溶出が始まることがあり得ることを示唆するものである.
  • 望月 友貴, 森 広介, 菅原 勝康
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2011 年 37 巻 1 号 p. 70-77
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,塩化揮発法によるNd–Fe–B磁石からの希土類元素の選択的分離回収プロセスの開発のための基礎的なデータを取得することを目的として,塩素気流中,昇温速度30℃/min,最高到達温度100–1000℃の加熱条件下でのNd–Fe–B磁石中のNd,Prならびに共存元素の塩化揮発挙動を詳細に追跡した.
    Nd–Fe–B磁石を塩素気流中で加熱すると磁石中のFeとBが低温部で揮発することから,固相中にNdおよびPrを濃縮させることができた.Nd–Fe–B磁石の微粉末は活性が高いために,大気中にて容易に酸化することから,大気雰囲気中500℃で加熱処理し,酸化Nd–Fe–B磁石粉末を調製した.この酸化試料を塩素気流中で加熱したところ,FeとCoを選択的に揮発できたが,希土類元素とBの大部分は,水に不溶な形態にて固相に残存した.一方,還元剤として,炭素粒子ならびにSiC粉末を用いて,酸化Nd–Fe–B磁石を塩素化したところ,いずれの炭素源においても,1000℃までにFe,CoならびにBを完全に揮発させることができ,PrとNdの希土類元素のみを固相中に水に可溶な形態で濃縮させることができた.そして,塩素化還元揮発処理後の残渣に水処理を行うことにより,希土類元素のみを選択的に分離回収可能であることがわかった.
feedback
Top