化学工学論文集
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38 巻, 1 号
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編集ノ-ト
  • 今駒 博信
    原稿種別: レビュー
    2012 年 38 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究は,筆者らが主として化学工学論文集で公表してきた,バインダー乾燥偏析,材料温度変化法,乾燥特性モデルに関する諸研究の紹介と今後の展望を,「相関モデル」をキーワードとして,塗膜乾燥のモデル化に対する視点から試みたものである.
    相関モデルとは,塗膜乾燥における複雑現象に対する研究成果を,生産へ迅速にフィードバックする目的で,筆者らが最近提案したものである.ここでの相関とは,物質とエネルギー収支式に基づいた現象内変数の相互関係を意味している.移動メカニズムと移動物性値の全容が明確でなければ利用できない予測モデルに対して,相関モデルでは,収支を行う領域を適切に変えることで,移動物性値の一部(a)または全部(b)が,極端な場合は移動メカニズム(c)が不要となるため,研究成果の生産への迅速なフィードバックが可能となる.
    本研究では,(c)の例として湿り材料温度変化を用いて乾燥速度を推定する「材料温度変化法」,(a)と(b)の例として乾燥速度を用いて乾き材料内のバインダー偏析を推定する「バインダー乾燥偏析推定法」を紹介した.両方法ともに集中定数系モデルに基づいている.両方法を組み合わせることで材料温度変化データを用いたバインダー乾燥偏析の推定が期待できる.
移動現象,流体工学
  • 古瀬 順彦, 菰田 悦之, 鈴木 洋
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2012 年 38 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル 認証あり
    急激な変化を伴う流動場での粒子凝集分散挙動は,定常流動場におけるそれとは異なると考えられる.本研究では,ステップ状の剪断速度を印加した場合の凝集体の成長および破壊過程を直接観察によって調査し,レオロジー特性から予測される定常流動場での挙動との違いを明らかにすることを目的とした.水中におけるポリスチレン粒子の凝集性をカルボキシメチルセルロース(CMC)濃度により制御し,CMC濃度が凝集分散特性に及ぼす影響も調査した.この結果,剪断速度低下に伴う凝集体成長過程は粒子の衝突に支配されており,CMC濃度の凝集体成長速度への影響は現れなかった.一方,剪断速度増大に伴う凝集体破壊過程では,高CMC濃度ではCMC吸着層が粒子の接触を妨げるために速やかに破壊されるが,低CMC濃度では高い凝集性をもつ粒子は破壊されにくくその破壊過程は不均一になり,また,ステップ状の速度変化による凝集体破壊の場合,定常流動場における分散状態評価の大きさと比べると完全分散に近い条件で異なる結果となった.
  • 橋本 俊輔, 西村 亮俊, 井上 義朗
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2012 年 38 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル 認証あり
    一般的な流体混合を考える場合,2種以上の流体物質が空間的に均一に混ざり合ったとき,混合が完了したと判断する.実際の撹拌・混合操作における混合完了時間の測定には,ヨウ素の脱色反応などの化学反応による色変化検出法がよく用いられる.この場合,概念的な流体混合の完了時間と実測される色変化終了時間とが一致するとは限らない.本研究では,従来の流体混合概念と実測される混合完了時間との関係を再考するとともに,ニクロム酸イオンによる可逆変色反応とヨウ素の不可逆脱色反応を利用した2つの測定法を利用して混合完了時間を測定し,両者が異なって見える原因について検討した.実験結果によれば可逆反応を用いた場合の色変化終了時間は不可逆反応のそれよりも長くなる.可逆変色反応では,一度変色しても系全体の濃度が均一化するまでは色の復帰が容易に起こりうるため,色変化の完了時間は撹拌槽内の濃度の均一化に必要な時間と一致する.他方,不可逆脱色反応の場合,測定時点で濃度が不均一であっても,過去に一度脱色された領域は再着色される可能性が少ない.すなわち,従来の不可逆脱色反応から混合完了時間を測定する方法では誤差が生じ得る.また,両手法における混合完了時間の差異は,撹拌レイノルズ数が大きくなるほど顕著であった.
  • 佐藤 明, 青島 政之
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2012 年 38 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル 認証あり
    磁性粒子サスペンション系の流体問題への適用を図るために,揺動流体力学に基づいた粒子のブラウン運動誘起法に関して,ブラウン運動の誘起レベルの精密化を実現するための粘度修正法に関して詳細に検討した.揺動流体力学の理論では,粘度が大きいほど大きなランダム力が発生するので,粘度の値を修正することでランダム力を妥当なレベルに発生させるのが本粘度修正法の概念である.本研究では熱力学的平衡状態にある3次元の磁性粒子サスペンション系を対象として,モンテカルロ法の結果との比較による凝集構造の妥当性,ならびに,粘度のスケーリング値に及ぼす種々の因子の影響を詳細に検討した.得られた結果を要約すると以下のようになる.まず,磁性粒子の凝集構造に関して,スナップショットおよび2体相関関数による比較から,モンテカルロ法の結果と定性的および定量的に非常によく一致する.また,磁化曲線に関してもモンテカルロ法の結果と非常によい一致を示す.さらに,粘度修正法の特徴としては,粒子間磁気力および磁場の強さにはほとんど依存せず,粘度の修正係数はそれらの変化に対してほぼ一定であり,また体積分率の変化に対しても粘度の修正係数はほぼ一定である.以上より,流れ場および非一様磁場の環境下で,局所的に粒子の体積分率の変化する状態や,印加磁場の非一様性により磁性粒子に働く体積力が系内で変化するような状態が生じる流体問題をシミュレートする方法として,非常に可能性のある方法であると結論づけることができる.
  • 牛田 晃臣, 長谷川 富市, 川見 真人, 内山 広成, 鳴海 敬倫
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2012 年 38 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル 認証あり
    マイクロバブルについては基礎研究から応用研究まで多くの報告がなされている.その中でもマイクロバブル混合による抵抗低減効果に注目した研究は,基礎的・応用的研究において非常に重要,かつ,興味深い結果が報告されている.しかし,その多くが水にマイクロバブルを混合させた場合であり,界面活性剤水溶液や高分子水溶液に代表される複雑流体にマイクロバブルを混合させた場合の流動特性やレオロジー特性に関する報告はほとんどない.そこで,本研究では,平均粒径20 μmのマイクロバブルを混合させた水と希薄高分子水溶液を小オリフィス(直径=100–400 μm)に通過させ,その際の圧力損失を測定し,流動特性を明らかにした.その結果,マイクロバブルを混合していない希薄高分子水溶液は弾性により水よりも低い圧力損失となり,マイクロバブルを混合した場合は,混合していない場合より高い圧力損失を示した.この現象は,高分子鎖の絡み合いをマイクロバブルが阻害することにより生じたと考察し,算定した弾性応力もこの考察と対応する結果となった.
粉粒体工学
  • 浅尾 勝哉, 吉岡 弥生, 綿野 哲
    原稿種別: 報文
    専門分野: 粉流体工学
    2012 年 38 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル 認証あり
    ポリイミド粒子はジアミンとテトラカルボン酸二無水物のそれぞれの溶液を室温下で超音波照射しながら沈殿重合してポリアミド酸粒子を調製し,次にそれを加熱イミド化して得ることができる.この方法で得られるポリイミド粒子の特長は粒子径分布が比較的狭く,サイズや形態が前駆体のポリアミド酸粒子に依存することである.また,ポリアミド酸粒子は反応に用いる溶媒の種類によって生成するサイズが異なり,この現象を利用することによりサイズ制御が可能であると考えられる.しかし,反応溶媒が粒子サイズに影響を及ぼす因子についての検討はなされていない.
    そこで,本研究ではポリイミド粒子の前駆体であるポリアミド酸粒子のサイズ変化に及ぼす反応溶媒の影響について溶解パラメータ(Solubility Parameter)を用いて検討した.その結果,ポリアミド酸粒子のサイズは反応溶媒とポリアミド酸とのHansen 溶解度パラメータ(Hansen Solubility Parameters, HSP)距離と相関することがわかった.また,HSPを構成するエネルギー項の中で分散力に由来するエネルギーδdが粒子サイズに影響を及ぼす支配的な因子であることがわかった.これらより,ポリアミド酸粒子の沈殿重合法において,反応溶媒とポリアミド酸のそれぞれのHSPが粒子サイズの制御に利用できることがわかった.
プロセスシステム工学,安全
  • 鎌田 美志, 齋藤 泰洋, 庄子 正和, 松下 洋介, 青木 秀之, 三浦 隆利
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2012 年 38 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル 認証あり
    PSI-Cellモデルを用いた一般的な噴霧燃焼の数値解析は均質燃焼を表現することに適した手法であるが,不均質燃焼に対しては適切ではないと考えられる.そこで,液相の計算において単一滴燃焼を考慮する新しいモデルを提案する.本モデルでは,単一滴燃焼であると考えられる状態の液滴を燃焼モードとし,群燃焼または蒸発の挙動を示す液滴を蒸発モードと区分する.予備計算として単一滴燃焼の解析を行い,液滴の蒸発速度,火炎半径および液滴の受熱量を算出するためのデータベースを作成する.燃焼モードと判定された液滴の蒸発速度については,データベースから取得する.蒸発モードと判定された液滴については,従来の蒸発モデルを用いた計算を行う.本研究では,本モデルを用いて,重油の噴霧燃焼を対象とした数値解析を行った.その結果,不均質燃焼を再現することが可能となり,実験値との比較から提案したモデルの有用性が示唆された.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 峯 浩二, 清水 将夫, 佐野 耕太郎
    原稿種別: 報文
    専門分野: 生物化学工学,食品工学,医用工学
    2012 年 38 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル 認証あり
    細胞外へ多糖を産生するPolianthes tuberosa(チューベローズ)カルスについて,多糖産生に対する溶存酸素濃度およびせん断力の影響を評価した.両者を独立して評価する方法として,充填層型リアクターを使用することが有効であった.カルスの酸素消費速度は溶存酸素濃度の上昇とともに増加するが,多糖の産生は7.6 g/m3をピークに減少した.溶存酸素濃度を7.6 g/m3近傍に保った条件の下では,供給する培地が与えるせん断力に対して,多糖の産生は極大値を有した.工業生産において一般的に使用される通気撹拌槽では,7.6 g/m3付近での溶存酸素濃度の制御は可能であり,好ましいせん断力の付与は難しいものの,安定な操作域での運転が可能であった.
  • 大平 勇一, 島津 昌光, 小幡 英二
    原稿種別: ノート
    専門分野: 生物化学工学,食品工学,医用工学
    2012 年 38 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル 認証あり
    スピルリナおよびクロレラからの細胞内物質漏出速度におよぼす撹拌の影響を明らかにするため,スピルリナ懸濁液の撹拌実験を行った.濾過によってスピルリナおよびクロレラを除去した培養液の紫外吸収を測定したところ,撹拌を行うことでスピルリナおよびクロレラから細胞内物質が漏出することがわかった.細胞内物質の漏出速度はスピルリナ濃度の1.0乗と羽根枚数の1.3乗に比例した.撹拌レイノルズ数Reが1.1–2.2×104の範囲で,スピルリナからの細胞内物質の漏出速度定数は7×10−3 m3 · kg−1 · h−1であり,クロレラのそれに比べて1.4倍である.
環境
  • 大野 隆之, 飯塚 淳, 柴田 悦郎, 中村 崇
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2012 年 38 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル 認証あり
    超音波照射下の空気のマイクロバブルの高速挙動による洗浄効果に関する検討を行った.高速度カメラを用いて,20 kHz, 600 Wの出力の超音波照射下での空気のマイクロバブルの試料表面での挙動を撮影した.マイクロバブルは単一の形状を維持したまま,試料表面を高速で移動しながら凝集することが明らかとなった.油性インク,カーボン汚れに対する洗浄実験を行い,超音波照射下のマイクロバブルの物理的挙動が洗浄効果につながることを明らかにした.超音波洗浄で見られたキャビテーションのスポットダメージは,マイクロバブルの共存時にはほとんど見られなかった.これはマイクロバブルが洗浄面を覆うため,ダメージの原因となるような洗浄面付近でのキャビテーションが発生しなかったためであると考えられる.これらの結果から,空気のマイクロバブルを利用した低周波(20 kHz)での超音波マイクロバブル洗浄は,比較付着力の弱い汚れや洗浄面のスポット破壊を避けたい場合に適した洗浄方法であると考えられる.
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