化学工学論文集
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38 巻, 5 号
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編集ノ-ト
[特集] 水と大気と土の化学工学
  • 原稿種別: 巻頭言
    2012 年 38 巻 5 号 p. 289
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2012/09/21
    ジャーナル 認証あり
  • 利谷 翔平, 周 勝, 下ヶ橋 雅樹, 寺田 昭彦, 細見 正明
    原稿種別: 報文
    2012 年 38 巻 5 号 p. 290-298
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2012/09/21
    ジャーナル 認証あり
    畜産排水を高窒素負荷で施肥した飼料イネ水田における窒素除去機構を明らかにするために,栽培期間中の窒素収支と畜産排水施肥後の土壌間隙水中無機態窒素の挙動を評価した.飼料イネ(品種:はまさり)の移植前の基肥および栽培期間中に3回実施した畜産排水の追肥により,計567 kg-N·ha−1の窒素を施肥した.栽培期間中,間隙水中の無機態窒素(NH4-NおよびNO2+3-N)の溶脱量,亜酸化窒素(N2O)およびアンモニア(NH3)の排出量,飼料イネの窒素吸収および土壌への窒素残留量を測定し,窒素収支を評価したところ,全投入窒素の83.1%がイネによる吸収と脱窒で除去され,11.7%が収穫時の土壌に残留した.水田の落水後,間隙水中のNO3-N濃度およびN2Oフラックスの急激な上昇が見られ,硝化・脱窒の促進において落水が重要と推察された.追肥後における土壌中無機態窒素の除去速度をボックスモデルから推定した結果,3回目の追肥後における飼料イネの窒素吸収速度の低下が,土壌への窒素残留の原因と推察された.これらの結果は,追肥時期と追肥量の適切な決定が,土壌残留窒素の低減に重要であることを示唆している.
  • 蒲原 弘継, Udin Hasanudin, Anugerah Widiyanto, 橘 隆一, 熱田 洋一, 後藤 尚弘, 藤江 幸一, ...
    原稿種別: 報文
    2012 年 38 巻 5 号 p. 299-304
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2012/09/21
    ジャーナル 認証あり
    東南アジア地域においては,バイオエネルギー生産によるクリーン開発メカニズムのプロジェクトがこれまでにいくつかはじまっている.これらのプロジェクトのバイオマス生産のライフサイクルにおける効果を明確にすることが重要である.したがって,本論文では,インドネシア,ランプン州のフィールド調査を通して,タピオカ生産における温室効果ガス排出量を明らかにし,バイオガス利用による温室効果ガスの削減効果を明らかにすることを目的にした.温室効果ガス排出量は,バイオマス由来の炭素の収支,化石燃料と化学肥料の消費量,亜酸化窒素とメタンの排出量により評価した.はじめに,バイオマス由来の炭素の収支として,タピオカ製粉工場では,キャッサバに固定された炭素のうち,46%がタピオカ製粉に,12%が廃水に,残りがバイオマス残渣に変換されていた.加えて,廃水処理池では,廃水の炭素のうち,34%がメタンに変換されていた.これらの結果をもとに,本論文では,タピオカ生産による温室効果ガス排出量を1.4 t-CO2eq/t-tapiocaと推計した.廃水処理池におけるメタンの排出による温室効果は,温室効果ガス排出量全体の64%を占めていた.さらに,本論文では,タピオカ製粉工場内においてバイオガスをエネルギー利用することにより,65%の温室効果ガス排出量の削減が可能になることを明らかにした.
  • 高橋 伸英, 鶴川 正剛, 新井 親夫, 福長 博, 山田 興一
    原稿種別: 報文
    2012 年 38 巻 5 号 p. 305-311
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2012/09/21
    ジャーナル 認証あり
    土壌の保水性,透水性を検討するうえで,土壌の水分特性を測定することは避けて通れない.しかし,その測定は複数の方法を用いなければならず,それぞれが煩雑であり,長時間を要する.そこで,本研究では,土壌の粒度分布と空隙率から水分特性を推定する簡易的な方法を提案し,均一径球状粒子および粒度分布幅の広い土壌試料充填層への適用性を評価した.
    粒径1, 5, 18 µmの球形単結晶アルミナ粒子,および,粒径50, 160, 400 µmのガラスビーズのそれぞれの試料を充填した層について測定された水分特性は,ある水分ポテンシャルで急激な含水率の変化を示した.また,その水分ポテンシャルの大きさは粒径と密接な関係が認められた.これらの球状粒子の充填層について,本研究で提案された方法により予測された水分特性は測定結果とよく一致した.また,180–300 µmに粒度調整された豊浦砂についても,予測結果と実測の水分特性はよく一致し,非球形粒子充填層に対しても本研究の推定方法が適用可能であることが示された.
    一方,粒度分布幅の広い土壌粒子を充填した層では,広い水分ポテンシャルの範囲で含水率が変化する水分特性を示した.予測された水分特性では,大きな粒径に対応する水分ポテンシャルにおいて含水率の変化が測定値よりも過大であり,測定値との良好な一致が得られなかった.実際の土壌では大きな粒子間に小さな粒子が入り込んでいることを考慮し,大きな粒子の寄与を減じたところ,測定値と予測値の良好な一致が得られた.
    以上より,本研究で提案された方法は,非球形かつ粒度分布幅の広い土壌粒子充填層についても水分特性の予測に適用可能であることが示された.
  • 齋藤 宏樹, 田中 秀平, 福田 加代子, 田熊 保彦, 加藤 茂, 里川 重夫, 山崎 章弘, 小島 紀徳
    原稿種別: 報文
    2012 年 38 巻 5 号 p. 312-317
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2012/09/21
    ジャーナル 認証あり
    汚染土壌の浄化法として原位置分解法が注目されている.本研究では,その中でも化学的手法であるフェントン反応によるトリクロロエチレン(TCE)の分解速度の基礎データを取得することを目的とし,鉄粉を鉄源として用いたときに溶出した鉄イオン濃度やpH変化が分解速度に与える影響を,緩衝溶液をも用いて検討した.
    分解反応速度は,過酸化水素濃度に依存し,88 mol/m3程度の濃度で極大値をとるが,これは過酸化水素から生成した水酸ラジカルによるTCE分解だけではなく,これと競争して起こる過酸化水素による水酸ラジカルの消費により説明される.上記の条件では,鉄の溶解すなわち鉄イオン濃度の上昇速度は最も大きく,また,pHも最も速く低下した.緩衝液を用いた実験から得られた鉄の溶解速度がpHに大きく依存するとの結果から,TCE分解の加速は鉄イオン濃度の上昇によりもたらされたのであり,pHの低下によるものではないことが示唆された.また,鉄イオンを用いたときには初期の急激なTCEの分解が生じ,一方鉄粉を用いた場合には導入期が存在したことは,鉄粉の比較的遅い溶解と,鉄イオンを用いた迅速なフェントン反応により説明できる.
    鉄粉近傍の境膜内の鉄イオン,TCE分解により生ずると考えられる酸性物質およびTCEの濃度分布に関する議論から,境膜内では液本体に比べ鉄イオン濃度が高くpHが低いことが推定された.また,TCEの境膜内の移動速度は,その境膜内における速い分解反応により,加速されていることが示唆された.
  • 南 翔子, 三好 貴之, 村山 憲弘, 芝田 隼次
    原稿種別: 報文
    2012 年 38 巻 5 号 p. 318-323
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2012/09/21
    ジャーナル 認証あり
    ヒ素は発癌性を有する物質であり,地下水のヒ素による汚染は環境問題となっている.水溶液中のヒ素の除去を目的として種々の金属酸化物による吸着除去試験を行った.実験結果からヒ素との親和力が強く,安価で人体に無害であるFeの酸化物を吸着剤として用いることとした.Fe21とFe31のモル比を変化させてγ-Fe2O3を合成した.
    ヒ素は地下水中でAs(III)およびAs(V)として存在し,pHに依存してその存在形態が変化する.γ-Fe2O3を用いてヒ素の吸着除去試験を行い,除去率におよぼすpHの影響を調べた.除去挙動とヒ素吸着前後の吸着剤表面の電位の変化から吸着現象を検討した.pH 7以下で中性種(H3AsO3)として存在するAs(III)はファンデルワールス力のような物理的な作用または化学的な作用によって吸着される.As(V)はpH 1以上で陰イオン(H3AsO32,H2AsO32)として存在しており,等電点以上のpHでは静電的反発力が大きく作用していると考えられる.温度による吸着特性を調べた結果,As(III)の吸着には温度による変化はみられなかったが,As(V)は温度依存性が強いことがわかった.
  • 白土 新太郎, 飯塚 淳, 山崎 章弘, 柳沢 幸雄
    原稿種別: 報文
    2012 年 38 巻 5 号 p. 324-328
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2012/09/21
    ジャーナル 認証あり
    THFハイドレート層を分子ふるい効果を有する分離膜として用いることを目的とし,欠陥がなくかつ薄いTHFハイドレート膜の作成を試行錯誤によって試みた.THFハイドレートは大小2種のケージから構成されるII型のハイドレート構造を有する.このうち,空の小ケージがガス分離のための分子ふるいゲートとして働くことが期待される.THFハイドレート水溶液への膜の塗布と浸漬を組み合わせた方法により,THFハイドレート層の厚さをコントロール可能であることが示唆された.また,THFハイドレート層の作成後,一度THFハイドレート生成温度以上で養生し,再度冷却することにより,欠陥のないTHFハイドレート/多孔質γ-アルミナ複合膜を作成可能であった.この複合膜では,ヘリウムの定常透過流束が数時間の間観察された.一方,六フッ化硫黄の場合には検出できる透過流束は観察されなかった.これらにより,この複合膜が分子ふるい効果を示すことを実証した.
  • 大浦 誠一郎, 原田 浩幸, 川喜田 英孝, 大渡 啓介, 森貞 真太郎
    原稿種別: ノート
    2012 年 38 巻 5 号 p. 329-333
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2012/09/21
    ジャーナル 認証あり
    リン酸イオンを除去するために,リン酸イオンに対して親和性が高いZr(IV)イオン担持させたzeoliteを吸着剤として調製した.zeoliteにZr(IV)イオンを担持させた結果,飽和担持量は吸着剤に対して1.20 mol/kgであった.リン酸イオンの吸着を行うと,pH 2–4において100%吸着した.pHの上昇とともにリン酸イオンの吸着率は減少した.リン酸イオンのH-zeoliteおよびZr-zeoliteの飽和吸着量は,pH 7において,それぞれ0.13 mol/kgおよび0.65 mol/kgであった.実排水(下水処理場の二次処理水)のリン酸イオン吸着は,30 sで100%吸着できることを確認した.
反応工学
  • 平松 義文, 高塚 透
    原稿種別: 報文
    2012 年 38 巻 5 号 p. 334-340
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2012/09/21
    ジャーナル フリー
    流動接触分解(FCC)プロセスは,廉価な重質留分をガソリンなどの白油へ効率良く分解する装置として,さらには石化原料などの有用成分を生産する装置として着目されている.技術的なアプローチとして必要なのは,重質分子から反応を制御し,有用な成分を選択的に生産するための技術である.特に,当装置にかかる原料,使用する触媒,運転条件について,有効となる因子を見出し,一般化することが必要である.本研究では,その一環として,重油流動接触分解触媒の被毒金属による劣化に関する検討を行った.結果,検討範囲の濃度では,被毒金属量に対して,一定の割合で活性が低下することが明らかとなった.物性評価から,この劣化はゼオライトの脱アルミによる劣化が主であることが明らかとなった.先報の結果と合わせ,重油流動接触分解触媒の活性は,水熱条件(温度,スチーム濃度,時間)と被毒金属量で表現できることが示唆された.これらの実験結果を用い,実装置でのFCC触媒性能をシミュレーションできる循環流動層型反応システムモデルを開発し,実装置での再生条件が触媒劣化に与える影響を定量的に評価した.
生物化学工学,食品工学,医用工学
エネルギー
  • 小林 信介, 牛越 淳太郎, 竹内 広将, 稲野 稔, 高岡 一栄, 板谷 義紀
    原稿種別: ノート
    2012 年 38 巻 5 号 p. 345-350
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2012/09/21
    ジャーナル 認証あり
    木質バイオマスの微粉砕において粉砕原料の粒度や含水率が粉砕性に与える影響について評価を行った.また,353 Kの低温乾燥処理により含水率制御を行った微粉砕木粉を用いて酵素糖化実験を行い,乾燥処理が酵素糖化率に与える影響についても検討を行った.粉砕原料の粒度を調整し粉砕実験を行った結果,原料の粒度区分により粉砕速度は大きく異なるが,粉砕初期段階における原料含水率が粉砕速度に与える影響は小さく,また粉砕原料の粒度がセルロース結晶の破壊に与える影響は粉砕原料の含水率にかかわらず小さいことがわかった.粉砕原料を乾燥することで含水率の制御を行った場合には粉砕原料の含水率が小さいほど木質バイオマスの粉砕性は向上し,原料の含水率とセルロース結晶の破壊速度には相関性があることがわかった.乾燥処理を行い粉砕した木粉の酵素糖化率は乾燥処理を行っていない場合とほぼ同等であり,事前の乾燥処理による酵素糖化阻害は確認されなかった.
エラータ
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