化学工学論文集
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39 巻, 6 号
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編集ノート
移動現象,流体工学
粉粒体工学
  • 佐藤 明, 青島 政之
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 6 号 p. 485-492
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル 認証あり
    磁性粒子のブラウン運動を高精度で再現するために,粘度の値を修正することで系の設定温度を与えようとする,粘度修正法を組み込んだシミュレーション法の妥当性を検討するのが本研究の主たる目的である.得られた主な結果を要約すると次のようになる.凝集構造のスナップショットや2体相関関数に着目し,理論解と考えられるモンテカルロ法の結果と比較した結果,粘度修正法を組み込んだ本ハイブリッド型シミュレーション法は定性的および定量的に非常によい一致を示す.さらに,磁化曲線もモンテカルロ法の結果と非常によく一致することから,粒子の回転ブラウン運動も,物理的に妥当なレベルで誘起されることが明らかとなった.ついで,流れ問題へのハイブリッド型シミュレーション法の適用を念頭に置いて,粘度修正法の特徴を詳細に検討した結果,粘度の修正係数は,磁場の強さならびに粒子間磁気力を種々に変えても,ほとんど変化せずほぼ一定であることが示された.さらに,粒子の体積分率や極端に少ない粒子数でない限り系の粒子数にもほとんど依存しないことが明らかとなった.
分離工学
  • 若林 敏祐, 長谷部 伸治
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 6 号 p. 493-502
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル 認証あり
    内部熱交換型蒸留塔(Heat Integrated Distillation Column; 以下,HIDiCと呼ぶ)は有限段の実装置のため,可逆蒸留操作と違い各段で物質移動,熱移動の不可逆性が異なるため,内部熱交換の熱負荷には最適分布が存在する.そして,適切に選択された段間のみで内部熱交換を行えば,全段で熱交換する場合と同等,あるいはそれ以上の消費エネルギー削減を得られる可能性がある.筆者らはこれまでに,このような形態のHIDiCを設計するために,H-xy線図上に可逆蒸留線と操作軌跡線を示しT-xy線図と統合する手法を開発したが,HIDiCの適用に関する適性判断に関しては研究の余地が残されている.本報では設計用に開発した線図を用いて,HIDiCの適用が望ましい系の特徴について検討した.その結果,適性を判断する際には,フィード組成,分離条件が決定的な因子となることを示した.特に,フィード組成中の軽質成分の濃度が高く,かつ留出,缶出製品とも高純度まで分離するような場合を除けば,ほかの条件ではHIDiCは適性があることが明らかになった.
  • 児玉 昭雄, 瀬尾 光弘, 宮下 裕一, 大坂 侑吾
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 6 号 p. 503-507
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル 認証あり
    圧力スイング吸着PSAプロセスによって,模擬バイオガス(メタン,二酸化炭素,水蒸気の混合ガス)から二酸化炭素と水蒸気を分離し,高濃度メタンを得ることを試みた.二酸化炭素吸着剤として,Si含有量5–9%のCHA型シリカアルミノフォスフェート(SAPO-34)とゼオライト13Xの2種類の吸着剤を用いた.前者はデシカント除湿用に開発された水蒸気吸着剤であり,二酸化炭素に対する吸着容量はゼオライト13Xよりも劣るものの水蒸気の脱着が比較的容易である.本実験条件において,ゼオライト13Xを用いたPSAプロセスでは,原料ガス中に水蒸気が少量でも存在すれば二酸化炭素に対する分離能が失われるため,原料ガスの高度除湿が不可欠となるが,SAPO-34ゼオライトを用いた場合には相対湿度20%程度を上限として水蒸気が共存しても二酸化炭素に対する分離能が維持できることがわかった.これより,ゼオライト13Xを用いた場合に比べ,予除湿工程の簡単化・省エネルギーが期待できる.
  • 竹内 宏拓, 天野 佳正, 相川 正美, 町田 基, 今関 文夫
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 6 号 p. 508-513
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル 認証あり
    酸化活性炭による重金属イオンの吸着は,表面酸性官能基,具体的にはカルボキシル基とのイオン交換によって進行する.本研究では,酸化剤として硝酸,ペルオキソ二硫酸アンモニウムを用いてビーズ状活性炭(BAC)の酸化を行い,酸性官能基の導入量の増大を試みた.調製した酸化活性炭の比表面積・細孔構造を窒素の吸脱着等温線により,表面官能基量をBoehm滴定により,さらに重金属イオン吸着能をカドミウムイオンの吸着によってそれぞれ評価した.硝酸,ペルオキソ二硫酸アンモニウム酸化によって同程度のカルボキシル基量をもつ酸化活性炭が調製できたが,カドミウムイオン吸着量はペルオキソ二硫酸アンモニウム酸化活性炭のほうが多く,初期pHがおよそ5のとき最大で0.76 mmol/gの吸着量を示した.また,吸着時の平衡pHを変化させて吸着実験を行ったところ,pHが高いほど吸着量も大きくなり,ペルオキソ二硫酸アンモニウム酸化活性炭では平衡pHが7.1–7.6のときに1.8 mmol/gものカドミウムイオンが吸着した.酸化が進行するにしたがって見かけの比表面積および細孔容積が大きく減少したことから,酸化によって細孔がマイクロ孔からメソ孔,さらには窒素が吸着できないマクロ孔へと押し広げられたことが推定された.
  • 永井 直文, 長谷川 泰久, 伊藤 直次, 水上 富士夫
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 6 号 p. 514-519
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル 認証あり
    水–アルコール分離を目的に,ベーマイトナノファイバーゾルおよびシランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS))との混合ゾル溶液を調製し,アルミナ多孔質管上にディップコートおよび熱処理することによりベーマイト膜およびベーマイト-GPTMS複合膜を作製した.ベーマイトナノファイバーには,平均短径が4 nmで,平均長径が1200 nm, 1400 nm および2000 nmの3種類を使用した.膜作製条件の最適化を行うことで,浸透気化分離のH2O/IPA分離係数の向上を目指した.その結果,ディップコート時の支持体の引上げ速度が100 cm/min以下で,低濃度のゾルを複数回コーティングすることで,H2O/IPA分離係数が高い膜が得られることが明らかになった.ここで,1200 nmおよび1400 nmのベーマイトナノファイバーはアルミナ多孔質管上ですべてのファイバーが管長方向に均質に配向し,さらにはスリット状の細孔が形成されることが確認された.さらに,ベーマイトナノファイバーとGPTMSを1 wt%添加した複合化ゾルを用いて作製した複合膜では,H2O/IPA分離係数が1628の高い水選択分離膜を得ることができた.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 峯 浩二, 宇治田 吾朗, 田谷 正仁
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 6 号 p. 520-526
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル 認証あり
    Polianthes tuberosa(チューベローズ)カルスによる細胞外多糖の生産に関し,カルスの分離方法と多糖類の回収効率について検討した.分離すべき固形分(カルス,細胞片)の中には,回収すべき多糖の分子サイズを下回る粒子径のものが存在した.カルス単独のデッドエンド定速ろ過では,形成するケークが圧縮性を示した.珪藻土,シリカ,セルロースパウダーなどのろ過助剤を用いたケークろ過では,検討した操作条件の下でケークが非圧縮性を示し,カルスの分離と多糖の透過を両立できた.それは,カルス,ろ過助剤,多糖の電気的反発によるものと考えられた.3% NaCl存在下で,粒径の小さなろ過助剤(平均粒子径27.1 µm)を用いると,光学的透過度が95%前後の清澄なろ液が安定して得られ,多糖がほぼ100%回収できた.
  • 坂田 ユミ, 浅見 和広, 太田口 和久
    原稿種別: ノート
    2013 年 39 巻 6 号 p. 527-530
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究では密閉式測定試験器を用いて揮発性有機化合物(VOC)の生分解反応を分析した.VOCのモデル物質としてトルエン,オタクンを選択した.トルエン,オクタンをそれぞれ生分解できる Pseudomonas putida mt-2, Pseudomonas oleovorans をVOC生分解微生物として選定した.さらにそれらの微生物による第一代謝物であるベンジルアルコール,オクタノールを対象物質として選択した.オクタン分解菌である P. oleovorans はトルエンを分解することができないうえ,オクタンとトルエンの複合基質を培養液に添加した場合,オクタン分解を行うものの,トルエンの毒性のために分解能力が下がった.トルエン分解菌である P. putida はオクタノールを分解可能であったが,トルエンとオクタノールの複合基質を添加するとオクタノールの毒性のために死滅した.単に単一な基質の微生物による分解機構を解析すること以外に,複合基質が分解微生物に与える影響を考慮することも大事であることがわかった.
材料工学,界面現象
  • 今駒 博信, 山村 方人
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 6 号 p. 531-538
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル 認証あり
    塗膜乾燥分野では,これまで拡散係数の推算を伴う一般化Fick式(GF式)が利用されてきたが,本研究では,実測相互拡散係数を用いる一般化Maxwell–Stefan式(GMS式)の可能性に期待して,3成分塗膜乾燥過程を対象としたモデル式の提案を試みた.このとき,非浸透性基材上の塗布層乾燥に特有な以下の条件,塗布層底面における物質移動の体積流束が0であることと乾燥収縮が生じることを考慮した.
  • 今駒 博信, 河野 和宏, 堀江 孝史
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 6 号 p. 539-544
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル 認証あり
    仮想2成分Fick型塗膜を対象に,低温熱風,高温熱風,赤外線を想定した低温熱風併用内部定率発熱の3つの場合に対してそれぞれ,基材の異なる塗膜のシミュレーション実験を行った.それらの結果を用いて,実用的な塗膜乾燥条件の範囲内で,基材の異なりに起因する乾燥速度曲線の差異が生じる可能性について調査した.その結果,差異が生じる可能性は存在し,減率乾燥期間において塗膜に与えられた全熱量に比べて同期間における塗膜温度の上昇に要する顕熱量が大きいほど,基材熱容量の増加が減率乾燥速度の低下におよぼす影響は大きくなることがわかった.
    続いて,異種基材間塗膜乾燥速度の推定法を提案した.この方法をシミュレーション実験結果に適用することで,基材を含む塗膜の乾燥速度曲線から塗布層のみの乾燥速度曲線の推定を試みた.その結果,推定結果はシミュレーション結果と良好に一致し,本研究で提案した推定法の有効性が示唆された.
環境
  • 石山 新太郎, 神谷 昌岳, 近藤 充記, 比氣 明典
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 6 号 p. 545-552
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル 認証あり
    最高570,000 Bq/kgを超える高放射能汚染土壌の校庭土,原野土ならびに側道脇土の界面化学的分散制御と高速せん断流解砕による土壌洗浄実験を行い,土壌特性に関する洗浄・濃縮・減容化効果について下記結論を得た.(1)3種類の原土壌に対して30 min間程度の解砕洗浄を行うことにより60–95%の洗浄率が期待できる.(2)解砕洗浄後の再生土(8,000 Bq/kg以下)の回収率は3種類原土壌において60–82 wt%であり,特に,原野土において500 Bq/kg×33 wt%の低線量化での回収を達成した.(3)高濃縮土の固形化による汚染土壌の減容化(最高260,000 Bq/kg)において60–85 wt%を達成した.(4)本解砕洗浄技術により汚染土壌に含まれる全FP量の90%以上のものが濃縮ケークとして回収可能である.(5)高放射能汚染土壌の主要FP捕獲鉱物相は校庭土においては金雲母等の層状ケイ酸塩類鉱物であり,原野土や県道脇土においてはモルデナイトである.
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