化学工学論文集
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39 巻, 1 号
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編集ノ-ト
移動現象,流体工学
  • 佐伯 隆, 吉田 雄一, 田中 直, 小林 周平, 重村 智史
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/01/20
    ジャーナル 認証あり
    流体輸送において,流体中にある種のカチオン系界面活性剤を加えて抵抗低減効果を発現し,ポンプ動力の省エネルギーを図る技術は水循環の空調設備を中心に実用化が進められている.一方,流動と伝熱のアナロジーから,抵抗低減によって伝熱低下が起こることが予想され,いくつかの実験結果も報告されている.しかし,実用化において伝熱のトラブルが確認されないことを考えると,実機と同様の条件でその特性を評価することが必要である.本研究では,2種類のカチオン系添加剤について,抵抗低減効果とその伝熱特性を実験的に評価し,空調設備に与える伝熱面の影響を考察した.
  • 古川 陽輝, 加藤 禎人, 多田 豊, 高 承台, 李 泳世
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/01/20
    ジャーナル 認証あり
    ドラフトチューブを備えた攪拌槽は工業的に用いられているが,この攪拌槽に関する所要動力のデータは公表されていない.本報では,ドラフトチューブ付き攪拌槽で,ドラフトチューブの幾何条件や攪拌翼の条件を変化させた際の動力特性を明らかにした.その結果,所要動力はドラフトチューブの幾何形状の影響をほとんど受けず,翼の幾何形状の影響の方が大きいことがわかった.また,その動力数は邪魔板なしの攪拌槽のものより大きくなるが,パドル翼では邪魔板幅と槽径の比BW/D=0.05,ピッチドパドル翼ではBW/D=0.08の邪魔板をそれぞれ1枚用いた場合の数値に相当することがわかった.
  • 大平 勇一, 島津 昌光, 小幡 英二, 安藤 公二
    原稿種別: ノート
    2013 年 39 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/01/20
    ジャーナル 認証あり
    6枚羽根タービン翼を備えた6段縦型攪拌槽の液混合特性について,逆混合モデルを適用して逆流量および交換流量におよぼす液粘度の影響を実験的に検討した.槽径DTは0.10 m,翼径Diは槽径DTの1/2とした.攪拌液としてカルボキシメチルセルロース水溶液または水飴水溶液を用いた場合でも,逆流量f,供給流量q,交換流量Qの間にf=Qq/2の関係が成立した.6枚羽根タービン翼を備えた6段縦型攪拌槽の修正無次元交換流量Q/(nDi3Ar)は攪拌レイノルズ数NReの範囲によって,0.0,0.50,1.0乗に比例する.
分離工学
  • 山口 俊雄, 井内 諒, 青木 和也, 桜井 誠, 亀山 秀雄
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 18-27
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/01/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究の狙いは,低濃度VOCs排ガス処理のための,中小型装置向けの新たなシステムの開発である.吸着技術を応用することにより,省エネ性が高く安価な装置の実現を目指している.VOCsガスとして代表的なトルエンを選択し,市販の椰子がら粒状活性炭を充填した固定層を用いて,ガス流通法により吸着実験を実施した.トルエン低濃度領域50–1600 ppm(主として自燃しにくい500 ppm以下),温度30–180°C,流速0.18–0.55 m·s-1で吸着実験を行い,最初に,吸着平衡,および定形濃度分布の形成を前提とするMTZ法(定形物質移動帯の解析による)により気相濃度基準総括物質移動容量係数(以降,濃度基準総括物質移動容量係数と記載)を算定し,吸着平衡および吸着速度に関する特性を明らかにした.つぎにLangmuir式,濃度基準総括物質移動容量係数を変数とする濃度基準線形推進力近似法モデル(以降LDFCモデルと記載)に基づく数値計算による破過曲線と,実験で得られた破過曲線との非線形回帰によるカーブフィッティング(以降,LDFCカーブフィッティング法と記載)により,濃度基準総括物質移動容量係数を算定し,吸着特性を明らかにした.同時に,MTZ法で算定された濃度基準総括物質移動容量係数との比較により,LDFCカーブフィッティング法に基づく濃度基準総括物質移動容量係数算定法の妥当性および有用性を検討した.上記実験範囲において,吸着平衡はLangmuir式で表現できることを確認した.濃度基準総括物質移動容量係数に関して,吸着層入口ガスのトルエン濃度の影響は小さく,ガス流速,吸着温度の影響が大きいことを定量的に確認した.また,実験領域でのLDFCカーブフィッティング法の適用は,妥当性があると同時に,効率の良い手法であることが明らかになった.LDFC近似法は吸着システムおよび関連技術の開発と設計において,有用な解析法であることが確認された.
  • 平山 雄祥, 岡村 雄介, 藤原 邦夫, 須郷 高信, 梅野 太輔, 斎藤 恭一
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/01/20
    ジャーナル 認証あり
    地表水中へ放出された放射性セシウムを除去するために,セシウムイオンを特異的に吸着する不溶性フェロシアン化物(KCoFC)を,6-ナイロン繊維にvinylbenzyltrimethylammonium chloride(VBTAC)とN-vinyl-2-pyrrolidone(NVP)を共グラフト重合して得られた高分子鎖に担持した.0–0.5 Mの範囲で塩化ナトリウムを添加した10 mg/L塩化セシウム水溶液を,不溶性フェロシアン化物(KCoFC)担持繊維に流通させた.0.5 M塩化ナトリウムを添加したときのセシウム動的吸着容量は,添加していないときのそれと比較して30倍大きくなった.また,海水中での吸着等温式はLangmuir型の式に整理でき,不溶性フェロシアン化物(KCoFC)担持繊維のセシウム飽和吸着量は20 mg-Cs/g-dryであった.
熱工学
  • 稲垣 照美, 一色 俊洋
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/01/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究は,相変化蓄熱媒体の1つである酢酸ナトリウム3水和物の液相状態における熱物性を評価し,その熱輸送プロセスとしての水平密閉矩形容器内自然対流の伝熱特性を実験的に検討したものである.ここでは,これまで計測した酢酸ナトリウム3水和物に関する熱物性値の定量的な精査とともに,未だ同定されていない比熱や熱伝導率に対する温度依存性を評価し,実使用形態に合わせた熱輸送プロセスに必要不可欠な伝熱データベースの充実を図った.また,実測した熱物性値に基づいて水平密閉矩形容器内自然対流の熱伝達率を再整理することで,従来から提案されている伝熱相関式と比較・検証しながら液相状態下の自然対流の伝熱特性を解明した.その結果,酢酸ナトリウム3水和物の比熱や熱伝導率に対する温度依存性を解明するとともに,新たに実測した熱物性値を適用することにより液相状態下の自然対流熱伝達が先に提案されている水平密閉矩形容器内自然対流熱伝達に関する伝熱相関式と良好な一致を示すことが明らかになった.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 中杤 昌弘, 片山 真, 加藤 竜司, 大河内 美奈, 高瀬 智和, 吉田 安子, 川瀬 三雄, 本多 裕之
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/01/20
    ジャーナル 認証あり
    ミルクアレルギー発症は血清中のIgEが認識するエピトープの位置によるという仮説のもと,診断に重要なIgEエピトープを,分布関数を用いた網羅的組み合わせ解析法(CC-GAM)で解析した.弱識別器として2分枝の決定木を用い,Adaboostアルゴリズムにより3入力全網羅で600万種類以上のモデリングを実施し,10-fold CVでの正答率の頻度分布を描出した.EMアルゴリズムで解析したところ,総合正規分布は,ベイズ情報量基準から分布数5個の混合正規分布で表現できることがわかった.基準正答率より高い平均値をもつ“重要正規分布”に帰属する識別器の入力変数を解析したところ,帰属頻度の高い重要なペプチドエピトープ16種類が特定できた.aS1C30,aS1C47は同一タンパク質内組み合わせ解析でも選別された.特にaS1C30の一部(SERYLGYL)は既往の研究でも重要なペプチドとして報告されていることから,我々の選択方法が診断に重要なペプチドを選択する方法として適していることを示唆した.
エネルギー
  • 板谷 義紀, 市橋 伸久, 小林 信介, 丸毛 謙次, 増井 龍也
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/01/20
    ジャーナル 認証あり
    臭化リチウム/水系吸収式ヒートポンプの性能向上を目指して,吸収液に吸着剤微粒子を分散させ過飽和状態にすることで,臭化リチウム微細結晶をスラリー化させる方式を提案した.結晶スラリーの物性と伝熱特性を確認するため,まず結晶粒度分布と粘度の計測および液膜伝熱試験を行った.次いで吸収器および再生器内で伝熱面上をスラリーが液膜流下する場合を想定して,熱・物質同時移動解析を行い,ヒートポンプ性能に与える微細結晶の効果を検討した.LiBr濃度63.4%,吸着剤分散濃度5.56%,温度25°Cの結晶スラリーの粒度分布は10–200 µm,メジアン径は57.0 µmであった.また,同条件の結晶スラリーの温度20°Cのときの粘度は1.67×10-2 Pa·sであり,温度変化させて結晶量が増加すると,粘度が増大するものの十分な流動性が認められた.伝熱平面を流量3.6–49.0 ml/sで流下する吸収液膜と熱媒体間の総括熱伝達係数は106.5–892.9 W/(m2·K)であった.吸収液中に分散させた吸着剤が伝熱に与える影響は小さく,吸収液流量の増加に伴い総括熱伝達係数は増加した.熱・物質同時移動解析では,吸収器内伝熱面積1 m2のとき,水蒸気吸収量は吸収液単独と比較して,過飽和結晶スラリーの結晶溶解効果により100%増加することを明らかにした.
環境
  • 芝田 隼次, 村山 憲弘, 田中 智史, 古屋仲 秀樹, 古屋仲 茂樹
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/01/20
    ジャーナル 認証あり
    2011年3月に起こった福島第1原子力発電所の事故以来,原子力発電所から放射性物質を含んだ高濃度汚染水が排出されている.破壊された原子力発電所から生じる汚染水の量は50,000 t以上に達する.このような緊急事態に鑑みて,セシウムやストロンチウムのような放射性物質が公共水領域に放出される前に,それらの放射性物質の除去が必要である.この研究では,2–30年の半減期をもつ放射性セシウムを汚染水から除去するためにゼオライトによるイオン交換反応が検討されている.工業的な連続汚染水処理システムを設計するために,水熱合成法で調製した4種の異なるタイプのゼオライトによるセシウムのイオン交換の捕捉量と捕捉速度が比較検討された.さらに,連続処理システムでの最大処理量が評価された.セシウムイオンを1 ppm(これは3.2×106 Bq/cm3に相当する)の濃度で含む500 dm3の汚染水が10 gのK–CHA型ゼオライトで処理できることがわかった.このことは,K–CHA型ゼオライトを用いる連続汚染水処理設備を構築すると,極めて多量の汚染水から放射性セシウムを除去することが可能であることを示している.
  • 山本 剛, 堀 健太, 中曽 浩一, 山本 高久, 舘林 恂
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 60-66
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/01/20
    ジャーナル 認証あり
    近年,燃焼技術の向上により燃焼器から排出されるPMは微小化し,既存のPM除去装置では捕集できないサブミクロンオーダーのPMが増加している.PMは粒径が小さいほど人体の奥深くに入り込み,悪影響を及ぼしやすいことから,早急な対策が必要であるが,今のところ有効な対応策はない.そこで本研究では,既存の方法とは異なる付着力を利用した高効率PM除去装置を開発するため,流動層をPM除去装置に適用し,そのPM捕集特性について理論的・実験的に検討を行った.実験結果より,PMの流動抵抗以外の支配因子は,大きい粒径から小さい粒径になるに従い重力から付着力に変わり,その境界はPM粒径8.95 µmと2.25 µmの間にあることが示された.また,PMの支配因子が付着力である粒径2.25 µm以下の場合,PMは流動層式PM除去装置により効率的に捕集されることが示された.実験結果と解析結果の比較から,本モデルで構築した流動層式PM除去装置におけるPM付着モデルの妥当性を確認した.解析結果から,PMの付着は気泡内ではほとんど起こらず,主にベッド粒子層の体積分率の高い部分で起こること,またベッド粒子が存在しない領域では,PMの付着は起こらないことが示された.
  • 小林 信介, 岡本 千洋, 水野 光国, 田邊 靖博, 板谷 義紀
    原稿種別: ノート
    2013 年 39 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/01/20
    ジャーナル 認証あり
    汚泥焼却灰を含む水スラリーからの高効率固液分離プロセスの開発を目的とし,旋回式クロスフローによる脱水実験を行った.また,汚泥焼却灰スラリーの性状を評価するため,異なるスラリー濃度,pHにおける流動抵抗を測定するとともに,スラリーへの分散剤添加が流動抵抗や旋回式クロスフローによる脱水性能に及ぼす影響について評価を行った.汚泥焼却灰スラリーはスラリー濃度が25%以上で擬塑性を示し,スラリー濃度が高くなるとともに指数関数的に流動抵抗値が大きくなった.スラリーのpHによって流動抵抗値に大きな変化は見られなかったが,分散剤添加は流動抵抗値に影響を与え,分散剤を汚泥焼却灰スラリーに添加することで35%以上の高スラリー濃度領域においても流動抵抗が小さくなり,またせん断速度に対する流動抵抗の変化も小さくなった.旋回式クロスフローによる汚泥焼却灰水スラリーの脱水においては,スラリー濃度にかかわらずほぼ一定の脱水速度を維持したまま連続的な脱水が可能であり,また分散剤をスラリーに添加することでさらに高い脱水率が達成可能であることが明らかとなった.
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