化学工学論文集
Online ISSN : 1349-9203
Print ISSN : 0386-216X
ISSN-L : 0386-216X
39 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
編集ノート
移動現象、流体工学
  • 安藤 健志, 今井 悠介, 平井 秀和, 中山 顕
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    発泡材に代表される連結多孔質体と粒子群に代表される非連結多孔質体の界面熱伝達の違いについて,局所体積平均理論に基づく理論的考察を行った.非連結多孔質体については,境界層理論を適用し,界面熱伝達率が速度のほぼ0.5乗に比例することを,また連結多孔質体については一次および二次流路から成る多孔質体モデルを導入することで,界面熱伝達率が速度のほぼ1乗に比例することを,それぞれ示している.導出されたこれらの関係式は,今まで報告されてきた実験データとよく一致することから,本考察の妥当性が明らかとなった.
  • 安藤 健志, 桑原 不二朗, 楊 臣, 中山 顕
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 78-85
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    発泡金属が充填されたチャネル流路の強制対流熱伝達について,作動流体と発泡金属間の局所熱移動を考慮すべく2エネルギ方程式モデルを導入し,局所非熱平衡解析を行った.アルミ発泡金属が埋め込まれた流路内を空気が流れる場合(熱伝導率比8200,気孔率0.95)について,今まであまり考慮されてこなかった迷路効果および熱分散について適切なモデリングを行った.十分に発達した強制対流場に注目し,等温壁の場合と等熱流束の場合について,解析解を導出した.等温壁条件の場合については局所熱平衡近似がほぼ成立するのに対し,等熱流束条件の場合には局所熱平衡から大きくずれることから,2エネルギ方程式モデルの導入が不可欠であることがわかった.
  • Dhar Abhinav, 島田 直樹, 冨山 明男
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 86-93
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    THINC(Tangent of Hyperbola for Interface Capturing)法がもつ双曲線正接関数に着目し,二値分布の輸送に有効であることを確認した.次に,多次元問題に使用する際に生じる問題点を指摘し,界面の傾きに応じて関数内部の係数を調整する修正を施した新しい手法を提案した.三種類の形状輸送テストを通した結果,提案した手法はTHINC/WLIC法,THINC法,Donor–Acceptor法,風上差分法に比べて,形状誤差の抑制に優れていること,十分な体積保存性を有することを確認した.
    壁面に衝突する液滴に対し,提案した手法は優れた体積保存性を有する計算が行えることを確認した.また,液滴を構成する界面を2セル以内で捕獲できることを確認した.さらに気泡の上昇速度計算した結果,既往の実験結果とよく一致した.また,体積率の保存性にも優れ,気泡を構成する界面を2セル以内で捕獲できていることがわかった.
  • 古川 陽輝, 加藤 禎人, 加藤 史都, 深津 吉孝, 多田 豊
    原稿種別: ノート
    2013 年 39 巻 2 号 p. 94-97
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    角型撹拌槽に設置されたパドル翼,ピッチドパドル翼およびRushtonタービン翼の撹拌所要動力が測定された.これまで見積もることができなかった角型撹拌槽の動力数は,断面の正方形に外接する円筒槽にその内径の1/10の幅を持つ邪魔板を1枚設置した場合の動力数とほぼ同等であることがわかった.
分離工学
  • 松山 絵美, 木村 紗有佳, 門間 慶太, 内海 惠介, 三宅 遼, 河本 高志, 黒沼 良介, 野村 幹弘
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 98-103
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    PrTMOS(Propyltrimethoxysilane)とO3を反応種として用いた対向拡散CVD法によりベンゼン選択透過シリカ複合膜を得ることに成功した.製膜条件では,蒸着温度とO3流量が重要なパラメータであった.240˚C蒸着では,H2/N2透過率比が250となった.H2,N2の分子径は0.29 nm,0.36 nmであることより,得られた膜の細孔径は0.3 nm程度と考えられる.一方,270˚C蒸着では,N2/SF6透過率比が529となった.SF6の分子径が0.55 nmであることより,細孔径は,0.4–0.5 nm程度と考えられる.これより,蒸着温度の上昇とともに細孔が大きくなっているといえる.これらの膜のSF6透過率は,PV透過試験での全透過流束と高い相関があることがわかった.ベンゼンの分子径は0.58 nmであり,SF6とほぼ同程度のためと考えられる.蒸着温度320˚C,O3流量0.4 L min-1にてベンゼン/シクロヘキサン選択性が113,全透過流束2.2×10-4 kg m-2 h-1とベンゼン選択透過膜を得た.
  • 横山 克己, 松田 弘幸, 栗原 清文, 栃木 勝己
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 104-111
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    自動気液平衡測定装置を用いて,水+プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)+プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)系のAntoine定数とNRTLパラメータを決定した.先に同装置を用いてメタノール+エタノール+水系や,アセトン+メタノール+水系のNRTLパラメータを決定している.これらのNRTLパラメータを用いて,レシジュアル曲線マップを描くことに相当する単蒸留計算での気相組成に着目し,それをプロットした留出曲線マップを描き,バッチ蒸留の留出軌跡と比較した.さらに,水+PGME+PGMEA系では液液分離する領域が存在するため,この領域では2相に分け,油相のみをスチルに戻した場合の留出曲線マップを描き,バッチ蒸留の留出軌跡を検討した.これらから,気液平衡物性が不明な系でも,この測定装置と比較的簡単に描くことができる留出曲線マップにより,バッチ蒸留での分離の可能性を評価できることを示した.
  • 中倉 英雄, 永田 宏志, 河村 飛鳥
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 112-116
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子を含むラード/リン酸緩衝液系エマルションの振動型クロスフロー精密濾過が実験的に調査された.本エマルションは,肝臓再生療法における骨髄液中の単核細胞の濾過・洗浄操作に対するモデル試料として使用された.固体粒子を含む油水エマルションの高速度濾過に,振動型クロスフロー濾過が有効なことが明らかとなった.過度の振動濾過は,密な濾過ケーク構造を生じさせ,したがって,濾過速度の減少に通じることを示した.また,擬定常状態における濾過速度には,最適操作条件が存在することが判明した.
熱工学
  • 稲垣 照美, 横江 晴佳
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 117-125
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    遷移域は層流から乱流に移行する過程において必然的に発生する現象であるが,自然対流の遷移域における熱流動現象やそれが熱伝達におよぼす影響については必ずしも解明されていない.そこで,本研究では等熱流束で加熱された垂直な平滑平板に沿って発達する定常状態下の自然対流に焦点を当て,伝熱面の二次元温度場を赤外線サーモグラフィで観測しながら遷移域に出現する特徴的な熱輸送機構を実験的に考察した.すなわち,遷移域に出現する温度パターンや温度変動についてさまざまな画像・統計処理を加えて温度場の輸送機構を考察した.壁面温度場を赤外線サーモグラフィで可視化した結果,遷移域には特徴的な温度パターン(低温の馬蹄様形状温度パターン)が幾つか観察された.また,遷移域の温度変動には,比較的短い周期の変動成分だけではなく,比較的長い周期の変動現象が内在することも初めて明らかとなった.この周期的な変動現象は,乱流域へ移行するにつれて消滅する.なお,前者の短周期変動に基づいた遷移域は,従来から提唱されている線形安定理論による周波数領域と良好に対応した.
反応工学
  • 谷口 智, 大森 隆夫, 河村 光隆, 片岡 祥, 山本 拓司, 中岩 勝, 高橋 厚, 藤谷 忠博
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 126-131
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    ゼオライト触媒を用いてバイオエタノールからプロピレンを合成するプロセスについて,実験値を説明できるように反応機構の探索・構築ならびに反応速度定数の決定を行い,プロセスのシミュレーターを開発した.最終的に決定された反応機構は,16の化学種が関与する28の反応式から構成されている.反応速度定数(頻度因子と活性化エネルギー)の値は,反応シミュレーションによる計算値と実験値の差を最小にする非線形最適化問題として,遺伝的アルゴリズムを用いて解くことにより決定した.シミュレーターによる計算結果は,プロピレンやエチレン等の主要成分の実験結果をよく説明できており,反応器の最適な設計・操作に役立つことが期待される.
生物化学工学、食品工学、医用工学
  • 浅見 和広, 上島 功裕, 太田口 和久
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 132-137
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究では土壌スラリー内難分解性物質のモデル物質としてビスフェノールA(BPA)を選定し,白色腐朽菌による生物除去反応実験を振盪フラスコ,ローラーボトル反応器,気泡塔を用いて行った.土壌スラリーを作るのにはある一定値の土壌水分比が必要であった.その値は最大土壌水分保持量以上であることが示唆された.反応器として振盪フラスコを用いてBPAの生物除去反応を行った結果,その除去率は24 hにおいて0.97(n=2)であった.既往の固相生物除去反応に比べて,およそ30倍の時間短縮が見られた.振盪フラスコ内に土壌スラリーが確認される場合,振盪速度(60,100 rpm)に関わらず,24 hのBPA除去率は0.98±0.01となった.ローラーボトル反応器は振盪フラスコに比べて低速回転で生物除去反応を十分に進めることが可能であり,12 hにおいて残留BPAは検出されなかった.気泡塔での生物除去反応では,土壌スラリー量,通気量を同一にしても反応器の形状によって除去反応速度に違いが生じた.反応器の性状は,酸素供給の差ではなくスラリーの混合状態に影響したと考える.
材料工学、界面工学
  • 片山 滋雄, 久田 剛大, 米澤 節子, 岩井 芳夫
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 138-143
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    超臨界二酸化炭素と水を用いて綿繊維表面にZnOとTiO2のナノ粒子を多量に,かつ強固に担持させる処理を行った.処理した綿繊維表面をSEMで観察してZnOとTiO2のナノ粒子の担持状況を確認し,EPMAで分析してZnOとTiO2の担持量を定量化した.超臨界二酸化炭素処理の効果を確認するため,超臨界二酸化炭素処理した綿繊維と超臨界二酸化炭素処理を行っていない綿繊維にZnOとTiO2を浸漬処理で担持させて,抗菌試験(ZnO)と白色度測定(TiO2)を行い比較した.SEM観察とEPMA分析の結果,超臨界二酸化炭素処理した綿繊維は,処理を行っていない綿繊維に比べてZnO,TiO2ともに担持量が大幅に増加した.ZnO,TiO2ともに綿繊維表面にしわが多く発生する条件で処理するほど担持量が多くなり,20 MPa,80˚C,1 h処理で担持量が最も多い結果となった.抗菌試験と白色度測定では,超臨界二酸化炭素処理した綿繊維の方が静菌活性値(ZnO),白色度(TiO2)ともに高く,また水洗処理を行っても静菌活性値,白色度が高い結果となった.
  • 安形 行広, 後藤 洋介, 高橋 聖司, 河野 昭彦, 小池 国彦, 西山 逸雄, 嘉本 律, 堀邊 英夫
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 144-149
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    プリベーク(PB)温度の異なるノボラック系ポジ型レジスト(ノボラック樹脂+溶解抑制剤(PAC))の湿潤オゾンによる除去特性について,FT-IRおよびマイクロサンプリング質量分析法(μ-MS)による化学構造の変化,熱重量測定(Thermo Gravimetry Analyzer; TGA)による残存溶媒量の変化など種々の構造解析を行い評価した.PB温度を100–200˚Cまで変化させたレジスト膜は,湿潤オゾンによってすべて除去された.ただし,PB温度100–140˚Cではレジスト除去速度は変化せず,PB温度160˚C以上ではPB温度が高くなるほどレジスト除去速度が低下した.FT-IRスペクトルより,ノボラック系ポジ型レジストは160˚C近傍でPACからN2が脱離するが,ノボラック樹脂については変化がみられなかった.μ-MSの結果では,PB温度によってノボラック樹脂およびPACの分解温度や化学構造は変化しなかった.TGA測定により,レジスト膜中の残存溶媒はPB温度140˚Cと160˚Cとの間でほぼ完全に蒸発した.以上のことからPB温度を変えてもレジスト膜の化学構造の変化や熱架橋は起こらず,PB温度が160˚C以上になることで膜中の残存溶媒がほぼ完全に蒸発し,レジスト膜が収縮し硬化する.このため,PB温度160˚C以上で,レジスト除去速度が大きく減少した.
エネルギー
  • 嶋田 五百里, 大島 義人, 大友 順一郎
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 150-156
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    直接エタノール形燃料電池の高効率化を目指し,250˚C近傍の中温域におけるPtRu/C触媒上でのエタノールの電極酸化反応について検討を行った.反応生成物分析により高いCO2選択率を観測し,低温域と比較して完全酸化反応の進行を確かめた.また,Ru添加により,Pt/C触媒を用いた場合の副生成物であるCH4の生成が抑制される一方,CH3CHO選択率の増加を観測した.さらに,電極反応の詳細反応モデルを作成し,速度論的解析により反応経路や律速段階を解明するとともにRuの添加効果について検討したところ,Ru添加によってエタノールの脱水素反応と水の解裂反応が促進されることがわかった.特に中温域では,Ru添加により水からのOH生成反応が速やかに進行し,Pt上でのC–C結合解裂反応によって生成したC1吸着種の酸化が促進されることがわかった.したがって,中温域におけるエタノールの完全酸化反応の達成に向けてRu添加が有効であることが確かめられた.
環境
  • 高橋 亮, 植木 智也, 伊藤 光輝, 高瀬 つぎ子, 佐藤 理夫
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 157-162
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    酸化セリウムを主成分とする研磨材(酸化セリウム系ガラス研磨材)は,レンズ・プリズム・液晶パネル基板,ハードディスク用ガラス基板などの精密研磨工程で多量に使用されている.セリウムはレアアース(希土類)の一種である.レアアースの原料鉱物は9割以上を中国から輸入しており,酸化セリウム系ガラス研磨材も需要の増大や中国の資源戦略により価格が急騰している.研磨材の使用量削減に向けた取り組みが必要であり,われわれは使用済研磨材スラリーからの研磨材微粒子回収技術を検討してきた.使用済スラリー中の固形分は微細なため自然沈降による分離は困難であるが,凍結した後に自然解凍することにより二次粒子が形成されて沈殿物と上澄み液の2層に容易に分離できることを発見した.研磨材微粒子の沈降特性が異なるさまざまな使用済スラリーで試行したが,良好な分離ができた.本手法は冷凍機以外の特殊な機器を必要とせず,凝集剤などの薬品類も不要であるため,使用済スラリー中の微粒子を回収するための効果的な方法である.
  • 小田 晴信, 郭 ユ, 木田 智久, 大喜多 結以, 甘利 俊太朗, 桜井 誠, 亀山 秀雄, 宮田 清藏
    原稿種別: 報文
    2013 年 39 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル 認証あり
    ガソリン自動車の排出ガスの浄化に使われる三元触媒には白金など貴金属が含まれている.近年これら貴金属の需要は急速に高まり,価格の高騰も起こっていることから貴金属の使用量削減が急務となっている.そこで我々は,鉄–セリウム–炭素を担持した通電加熱アルマイトプレート触媒を研究することにより,貴金属を含む触媒に匹敵する排出ガス浄化触媒の開発を目指している.本研究では,有機金属溶液を用いてセリウムおよび鉄を含浸担持し,気相合成により炭素を担持する方法で,通電加熱アルマイト触媒の合成および排ガス浄化特性について検討を行った.その結果,酒石酸セリウムとクエン酸鉄アンモニウムを含浸担持し一酸化炭素ガス処理を行った,鉄–セリウム–炭素を含む通電加熱アルマイトプレート触媒が自動車排出ガス浄化触媒として有望な特性を有していることを明らかとした.
feedback
Top