化学工学論文集
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41 巻, 3 号
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編集ノート
移動現象,流体工学
  • 廣瀬 裕二, 大坪 泰文
    原稿種別: 報文
    2015 年 41 巻 3 号 p. 179-183
    発行日: 2015/05/20
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル 認証あり
    ポリエチレングリコール(PEG)微粒子をシリコンオイル中に分散した系に外部から電場を印加するとその流動性が変化する「エレクトロレオロジー(ER)効果」が発生する.我々はこれまでにPEGの分子量を小さくするとER効果が強くなることを見出しており,主鎖のエーテル基ではなく末端の水酸基がPEG微粒子分散系のER効果の発現に寄与していると考えられる.本研究ではPEGの末端の水酸基を酸化剤により酢酸エステル化およびカルボキシル化したものを合成し,さらに末端が長い直鎖アルキルエステルとなったPEG(エマノーン)を用意しPEGの末端基がその分散系のER効果におよぼす影響を調べた.
    末端が直鎖アルキルエステルおよび酢酸エステル基の場合は水酸基の場合と比較して微粒子分散系のER効果は弱くなったのに対し,カルボキシル基としたものでは逆に大幅に強くなった.末端が水酸基およびカルボキシル基のPEG分散系について電場印加時に電極間に生じる粒子の鎖状構造を肉眼および顕微鏡で観察したところ,カルボキシル化PEGはやや太いカラムを形成した.末端をカルボキシル化したことで粒子間の引力相互作用が強くなり,鎖状構造が太くなることでER効果が強まったと考えられる.そこでアルコール,酢酸エステルおよびカルボン酸の双極子モーメントの大きさを計算したが顕著な差は見られなかった.PEG末端の水酸基をエステル化した際には水素結合に相当する相互作用が失われるのに対し,カルボキシル化すると1つの末端で2カ所水素結合を作るようになることから,PEG微粒子分散系のER効果には粒子の水素結合が大きな影響をおよぼしていると推測される.
  • 加藤 禎人, 小栗 良高, 松野 昌幸, 古川 陽輝, 南雲 亮
    原稿種別: 報文
    2015 年 41 巻 3 号 p. 184-189
    発行日: 2015/05/20
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル 認証あり
    井上ら(Inoue et al., 2009a, 2009b, 2012)の開発した流脈の可視化法に基づき,特殊な2段翼であるベンドリーフの混合特性を評価した.類似の幾何形状を持つ他社の大型パドル翼とは異なり,液深と槽径の比が小さい場合でも槽内全体を混合可能であることがわかった.また,混合に適した翼径と槽径の比d/Dは0.6を超えるところであり,0.5以下では混合性能がよくないこともわかった.さらに,本翼の動力数は,これも他社の大型翼とは異なり,上部翼を無視することができ,下部翼の寸法をプロペラ翼および3枚後退翼の相関式に代入することにより推算可能であることを示した.
分離工学
  • 大川 禎一郎, 牛田 吉彦, 島田 昌幸, 関 信夫, 渡井 直樹, 金原 彦克, 北川 重文, 大西 正俊, 豊田 素典, 田村 吉隆, ...
    原稿種別: ノート
    2015 年 41 巻 3 号 p. 190-193
    発行日: 2015/05/20
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル 認証あり
    著者らは,ホエイのナノろ過(NF)濃縮において,ホエイの溶質を膜を透過する画分(透過溶質)と透過しない画分(非透過溶質)の2成分からなると仮定し,濃度分極式と輸送方程式等を用いて,NF濃縮に伴う透過流束の変化を予測可能な理論的解析法について報告している.本論文では,ホエイの高度脱塩を行うため,NFの前処理として塩素型陰イオン交換樹脂に通液し,主として非透過溶質に分類されるクエン酸,リン酸等を透過溶質に分類される塩素に交換したホエイ(イオン交換ホエイ)においても本理論的解析法が適応できるかを検討した.その結果,本理論的解析法はNF濃縮中の透過流束変化を精度良く予測することが可能であり,ホエイの組成(透過溶質と非透過溶質の割合)が大幅に変わっても成り立つ汎用性の高い方法であると考える.
材料工学,界面現象
  • 三木 功, 塩崎 景子, 重本 直也
    原稿種別: 報文
    2015 年 41 巻 3 号 p. 194-199
    発行日: 2015/05/20
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル 認証あり
    香川県さぬき市産の花崗岩砕砂,銅スラグおよび高炉セメントを用いて製造したモルタルブロックを野外に敷設したところブロック表面の一部が褐色に変化した.このような褐変現象を考察するために骨材断面やブロック褐変部周辺の元素分布を測定するとともに赤外分光分析による褐色物の同定を試みた.その結果から,砕石砂粒子中に含まれる硫酸鉄(III)が雨水と接触することにより粒子外に溶出し,モルタル中の水酸化カルシウムと反応して褐色のオキシ水酸化鉄となってブロック表面に局所的に析出したと推定された.硫酸鉄(III)を含浸させた花崗岩砕砂を普通ポルトランドセメント用いたモルタル中に埋設した場合にも褐変現象が発現した.また,有効な褐変防止対策として,酸水溶液による花崗岩砕砂表面からの鉄溶出を提案した.
  • 片山 滋雄, 鮫島 翔, 米澤 節子, 岩井 芳夫
    原稿種別: 報文
    2015 年 41 巻 3 号 p. 200-206
    発行日: 2015/05/20
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル 認証あり
    綿繊維内部にナノ粒子を注入するには,綿繊維内部の空隙を拡張して,ナノ粒子が綿繊維内部を通過しやすくする必要がある.空隙を拡張する処理として,綿繊維を24 wt%NaOH水溶液に1 h浸漬し,100˚Cで4 h乾燥した後,水洗により綿繊維内部に侵入させたNaOHを除去した.処理した綿繊維の断面をSEMで観察した結果,綿繊維断面に500 nm程度の多数の空隙があることが確認できた.また,内部の空隙を拡張した綿繊維を,30 ppmのナノ銀液に浸漬し,80˚C, 20 MPaの超臨界二酸化炭素雰囲気で1 h保持した後に乾燥し,断面をTEMで観察した結果,10–30 nmの多数のナノ銀粒子が注入されているのが確認できた.ナノ銀を注入した綿繊維をマグネチックスターラーで3 h水洗し,水洗前後の断面をTEMで観察した結果,水洗前後でナノ銀量に大きな差はなく,綿繊維内部に注入されたナノ銀は水洗でも除去されないことがわかった.また,マグネチックスターラーで6 h水洗したナノ銀注入綿繊維の抗菌試験で,静菌活性値は5.7あり,抗菌性能はほとんど低下しなかった.
広領域,その他
  • 中村 明, 亀山 秀雄
    原稿種別: ノート
    2015 年 41 巻 3 号 p. 207-212
    発行日: 2015/05/20
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル 認証あり
    持続可能な社会の形成には,地球の持続と,地域社会の発展の両方の条件を満たす必要がある.その実現には,化学工学を初めとしたさまざまな専門領域での学術的知見の活用と多様なステークホルダーの協働が必要となる.本研究では,その実現に必要な社会のキャパシティ(能力)をハード面とソフト面に加え,人間の意識・行動などに関連するヒューマンウェアという要素を加えてモデル化し,過去の国際協力プロジェクトの分析より,そのモデルの妥当性を考察した.その結果,従来あまり意図的にプロジェクトに組み込まれてこなかったヒューマンウェアの向上が社会のキャパシティに重要な影響を与えることが示唆された.
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