化学工学論文集
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41 巻, 6 号
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編集ノート
移動現象,流体工学
  • 山根 岳志, 大塚 健吾, 吉田 正道, 柴柳 敏哉
    原稿種別: 報文
    2015 年 41 巻 6 号 p. 351-357
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究では矩形容器内の溶液に密度的に安定な鉛直温度差を与えた場合に生じる熱拡散現象,Soret効果に注目し,レーザホログラフィー実時間干渉法を適用して行う独自のSoret係数計測システムを提案する.本システム,本実験方法により,Soret効果により生じる濃度分布を干渉縞で捉えることが可能であった.また,干渉縞が等屈折率線と一致し,溶液の屈折率が温度と濃度の関数であることを利用することで,干渉縞から系内濃度が計測でき,またSoret効果の厳密解を通じてSoret係数が算出できた.Soret係数の実験値と文献値とを比較したところ,両者の一致は良好であり,本システムは十分実用的であることがわかった.
  • 加藤 禎人, 吉田 愛実, 古川 陽輝, 南雲 亮, 多田 豊
    原稿種別: 報文
    2015 年 41 巻 6 号 p. 358-361
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル 認証あり
    日本で開発された各種大型翼の混合機構を解明するため数値解析に基づきその流脈パターンを明らかにした.井上らの解析で予測されたとおり,得られた流脈パターンは速度ベクトルからは予想しがたいものであった.層流域における流脈パターンは同一レイノルズ数であっても翼の種類によって大きく異なることが明らかになった.また,実験で明らかになった液深が流脈パターンに大きな影響を与えることも数値解析により再現することができた.
分離工学
  • 芝田 隼次, 森山 佳, 植薄 祐介, 村山 憲弘
    原稿種別: 報文
    2015 年 41 巻 6 号 p. 362-367
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル 認証あり
    Versatic Acid 10(以下,VA10)にTri-n-butyl phosphate(以下,TBP)を添加した混合抽出剤を用いて,Sc3+の抽出および剥離特性を調べた.FT-IRによりVA10とTBPの結合形態を分析し,TBPの改質剤としての添加効果を考察した.酸化チタン製造工程の廃液を想定してSc3+–Ti4+–Zr4+水溶液からSc3+の溶媒抽出を行い,共存成分からのSc3+の分離を検討した.McCabe–Thiele解析によるSc3+の向流多段プロセスの操作条件の設定を行った.
    VA10にTBPを添加すると,Sc3+の抽出されるpHが高pH側にシフトし,低濃度のH2SO4にてSc3+を剥離することができた.VA10に添加したTBPはSc3+の抽出反応を抑制し,剥離反応を促進することがわかった.有機相のFT-IRスペクトルより,二量体として存在していたVA10の一部が改質剤のP=Oと水素結合を形成していることが示唆された.Sc3+–Ti4+–Zr4+混合水溶液からVA10+TBPを用いて溶媒抽出を行うと,pH 4.6のときSc3+, Ti4+およびZr4+の抽出率は77, 3, 8%,分離係数はβSc/Ti=100, βSc/Zr=38となった.0.5 mol/dm3 H2SO4を用いてSc3+, Ti4+およびZr4+をそれぞれ100, 8, 22%剥離することが可能であった.向流多段抽出によってSc3+とTi4+, Zr4+を分離し,Sc3+を回収することができる.流量比(A/O)=1.01での2段の向流抽出により,500 mg/dm3のSc3+を99%回収し,相比(O/A)=6.00の1段の剥離でSc3+を6倍濃縮して回収できることが明らかになった.
反応工学
  • 山﨑 量平
    原稿種別: 報文
    2015 年 41 巻 6 号 p. 368-373
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル 認証あり
    微粒子流動層内の気泡の半径方向合一と分裂を考慮したポピュレーションバランスモデルを提案して,気泡の層内半径方向分布を理論的に解析し,以下の結果を得た.
    (1)気泡の合一と分裂が動的平衡状態にある場合,局所気泡頻度は流動層中心軸で最大値をとり,壁面上で0となる0次第1種ベッセル関数状の分布を呈する.この分布は放物線状分布でよく近似できる.
    (2)大塔径の流動層内では,気泡が塔径と気泡径によって一義的に決まる大きさのクラスターを形成して,これが運動単位となって挙動する.
    (3)前記(2)によって,流動層中の気泡の上昇速度の塔径依存性が説明できる.
プロセスシステム工学,安全
  • 矢嶌 智之, 添田 幸宏, 橋爪 悟, 橋爪 進, 小野木 克明
    原稿種別: 報文
    2015 年 41 巻 6 号 p. 374-380
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/11/20
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    動的システムの計画・運転においては,システムの将来挙動を予測し,その結果に基づいて意思決定を行うことが必要である.しかし,システムの動的挙動がさまざまな要因によって複雑に変化する場合には正確な予測を行うことは困難となる.たとえば生産現場では,機械の故障や処理時間,作業員数の変動といったさまざまな不確定的な要因による変動が,システムの挙動の予測を困難にする.したがってこれらの不確実性の影響を考慮したモデルとそのうえでの意思決定支援手法が望まれる.一方,確率推論の一つのツールとして,ベイジアンネットワークが注目されており,システムの故障診断や危険の予知,医療診断など広い分野に応用されている.本研究では,不確実性を含む動的生産システムの挙動を予測するためのモデルとしてベイジアンネットワークを拡張したダイナミックベイジアンネットワークを用い,そのうえでの意思決定支援手法について検討した.検討した手法を適用した数値実験を行った結果,その有効性が確かめられた.
材料工学,界面現象
  • 大島 達也, 山下 利沙, 馬場 由成
    原稿種別: 報文
    2015 年 41 巻 6 号 p. 381-386
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/11/20
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    難水溶性物質であるクルクミンは単体での経口吸収性に乏しく,添加剤との複合化などによる分散性の改善が求められる.最近,カゼインをクルクミンの溶解性を改善するキャリヤーとして用いた研究が報告されているが,ほとんどの場合有機溶剤に溶かしたクルクミンを用いて複合体が調製されている.本研究では,安全性およびコストの観点から,有機溶剤を使用しない混練法によって分散性の高いクルクミンとカゼインとの複合体(Cur–Cas)を,クルクミンが安定な中性条件下で得るための調製条件を検討し,得られた複合体の分析を行った.粉末混合物に少量の水を加えて混練して調製したCur–Casは,より高温で混練するほど分散性の高い複合体となり,既往の分散剤を用いて調製した複合体と同等以上の見かけの溶解度を示した.Cur–Casの表面電荷は主にカゼインによって決定づけられ,カゼインが負に帯電する5.7以上のpHで高い分散性を示した.Cur–Casは粒子径300 nm程度のコロイド粒子として水溶液に分散しており,示差熱分析およびX線回折の結果より,Cur–Casに含まれるクルクミンは結晶性が低下していることが示された.
  • 今駒 博信, 河野 和宏, 瀧 紘, 堀江 孝史
    原稿種別: ノート
    2015 年 41 巻 6 号 p. 387-391
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル 認証あり
    塗膜は基材とその上の塗布層で構成されている.本研究では,塗膜の基準となる乾燥速度を,塗布層のみの乾燥速度であると考え,これを「塗膜の固有乾燥速度」と名づけた.固有乾燥速度の厳密な値を,乾燥実験から得ることは不可能であるため,本研究では,Fick型拡散に支配されるポリビニルアセテート–トルエン系塗膜を対象にシミュレーション実験を行い,固有乾燥速度曲線と基材を含む塗膜の乾燥速度曲線を得た.その結果,固有乾燥速度曲線は基材を含む速度曲線に比べて大きく,その差は水系ポリマー塗膜に対する結果と比較して格段に大きかった.続いて,基材を含む塗膜の乾燥速度曲線に,既往の推定法を適用して固有乾燥速度曲線を推定した.この推定法は,異なる熱容量の基材を含む塗膜間の乾燥速度相互推定法である.推定結果はシミュレーション結果と比較的良好に一致したが,一致の程度は水系ポリマー塗膜の結果に比べて劣った.
  • 今駒 博信
    原稿種別: 報文
    2015 年 41 巻 6 号 p. 392-396
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究は,2成分塗膜での実測相互拡散係数を用いて,3成分塗膜の拡散移動流束を推定する試みのひとつである.本研究では,水–可塑剤–ポリマー3成分塗膜に着目し,この塗膜を水–可塑化ポリマーの擬2成分塗膜と見なして得られる見掛け拡散係数を,3成分塗膜に対する一般化Maxwell–Stefan式(GMS式)を用いて定式化した.この式に2成分塗膜での実測相互拡散係数を代入して得られた見掛け拡散係数の推定値は実測値と一致した.
エネルギー
  • 西村 顕, Mahadi Amir Hakimi, 長田 康太郎, 馬場 雅, 廣田 真史
    原稿種別: 報文
    2015 年 41 巻 6 号 p. 397-405
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル 認証あり
    電解質膜(PEM)に一般的によく用いられるNafion膜を組み込んだ固体高分子形燃料電池(PEFC)単セルを通常運転される作動温度より高温の90°C, 100°Cで運転した.供給ガスの流量と相対湿度を変化させて,アノードとカソードのセパレーター背面の温度面分布をサーモグラフィーで測定し,通常の作動温度での熱・物質移動特性との違いを検討した.また,同時に発電特性も比較した.その結果,電圧値は単セル初期設定温度によらず供給ガス相対湿度の低下に伴い低くなった.特に単セル初期設定温度が高いほど電圧値低下は大きくなった.これらは,PEMの乾燥による電気抵抗増大のためである.また,供給ガス相対湿度40%RHでは,単セル初期設定温度100°Cを除き,供給ガス流量の増加に伴いPEMが乾燥して電圧値が大きく低下した.アノード観察面とカソード観察面の温度面分布を比較したところ,単セル初期設定温度80°C, 供給ガス相対湿度100%RHを除き,アノードとカソードの供給ガスの熱物性や流量,ならびに水分濃度分布の違いに起因してアノード観察面の方が温度面分布は均一化した.カソード観察面の温度面分布は,単セル初期設定温度によらず,供給ガス相対湿度100%RHでは他の供給ガス相対湿度よりも均一化した.一方,100%RH以外の供給ガス相対湿度では,単セル入口から出口にかけて温度は上昇した.しかし,供給ガス相対湿度40%RHでは,単セル初期設定温度90°Cの方が80°Cよりも単セル出口付近の温度上昇は小さくなった.アノード観察面の温度面分布について,供給ガス相対湿度100%RHでは,単セル初期設定温度90°Cの方が80°Cよりも均一化した.Nafion膜を使用したPEFCについて高温条件で高発電性能を得るためには,供給ガス相対湿度の設定条件を最適化したり,ガス流路のコーナー部に液水が滞留しないようにするなどしてPEMの湿潤状態を制御することが重要であることがわかった.
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