Versatic Acid 10(以下,VA10)にTri-
n-butyl phosphate(以下,TBP)を添加した混合抽出剤を用いて,Sc
3+の抽出および剥離特性を調べた.FT-IRによりVA10とTBPの結合形態を分析し,TBPの改質剤としての添加効果を考察した.酸化チタン製造工程の廃液を想定してSc
3+–Ti
4+–Zr
4+水溶液からSc
3+の溶媒抽出を行い,共存成分からのSc
3+の分離を検討した.McCabe–Thiele解析によるSc
3+の向流多段プロセスの操作条件の設定を行った.
VA10にTBPを添加すると,Sc
3+の抽出されるpHが高pH側にシフトし,低濃度のH
2SO
4にてSc
3+を剥離することができた.VA10に添加したTBPはSc
3+の抽出反応を抑制し,剥離反応を促進することがわかった.有機相のFT-IRスペクトルより,二量体として存在していたVA10の一部が改質剤のP=Oと水素結合を形成していることが示唆された.Sc
3+–Ti
4+–Zr
4+混合水溶液からVA10+TBPを用いて溶媒抽出を行うと,pH 4.6のときSc
3+, Ti
4+およびZr
4+の抽出率は77, 3, 8%,分離係数はβ
Sc/Ti=100, β
Sc/Zr=38となった.0.5 mol/dm
3 H
2SO
4を用いてSc
3+, Ti
4+およびZr
4+をそれぞれ100, 8, 22%剥離することが可能であった.向流多段抽出によってSc
3+とTi
4+, Zr
4+を分離し,Sc
3+を回収することができる.流量比(A/O)=1.01での2段の向流抽出により,500 mg/dm
3のSc
3+を99%回収し,相比(O/A)=6.00の1段の剥離でSc
3+を6倍濃縮して回収できることが明らかになった.
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