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原稿種別: 巻頭言
2017 年 43 巻 4 号 p.
169
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
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黒沢 厚志, 加藤 悦史, 杉山 昌広, 増田 耕一
原稿種別: レビュー
2017 年 43 巻 4 号 p.
171-177
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
気候変動研究の知見は国際政治に影響を与えた.気候変動枠組条約の京都議定書は先進国に温室効果ガス排出削減を義務づけた.一方でパリ協定は全締約国が削減に参加することを求めている.気候変動対策技術は,温室効果ガス排出を削減する緩和策,気候変動の影響を軽減する適応策,および気候工学的対策に分類される.世界の研究機関では,統合評価モデルを活用して,新技術の導入可能性や温室効果ガス排出経路などの緩和策シナリオ分析を実施している.モデル試算結果インベントリは気候変動に関する政府間パネル第5次報告書のメタ分析に貢献した.エネルギーシステムの検討には,需要と供給の両方の視点が含まれるべきである.たとえば,年間エネルギー消費がほぼゼロであるネット・ゼロ・エネルギー建築物が新しいコンセプトとして提案されており,低CO2エネルギーキャリアと組み合わせれば,民生部門のゼロエミッションにつながる可能性がある.各国の国別目標を積み上げても,パリ協定の長期温度目標達成に必要なレベルに達しない可能性が高い.人為的気候介入である気候工学と呼ばれる対策が一部の科学者により検討されている.気候工学のオプションには,CO2除去,および太陽放射管理があり,気候–エネルギーシステムモデリングや社会科学研究の分野で具体的評価が進められている.今後の化学工学に関する研究,開発,実用化は,ほとんどすべての技術的な気候変動対策において重要な役割を果たす.
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齋藤 優子, 熊谷 将吾, 吉岡 敏明
原稿種別: レビュー
2017 年 43 巻 4 号 p.
178-184
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
近年,世界のプラスチック生産量が増加している中で,資源利用効率の観点および省エネルギーの観点からプラスチックリサイクル技術の意義はますます高まっている.本論文ではプラスチックリサイクル,とりわけ,高収率のモノマー回収や原燃料としての再利用が可能で,発生したガスや残渣も活用できる手法を含むフィードストックリサイクル(Feedstock Recycling)に焦点を当て,新たな技術動向および課題について論じた.さらに,プラスチックリサイクル研究および技術開発の現状に関して国際比較を行った.その結果,産業分野や家庭から実際に排出されるプラスチックの組成がますます複雑化してきている中でリサイクルの技術的課題が増大していることが示唆された.一方で,政策的課題・社会システム的な課題もあり,国による差異も顕在化してきていることがわかった.
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尾形 剛志, 成田 弘一, 大石 哲雄, 田中 幹也, 大井 健太
原稿種別: 報文
2017 年 43 巻 4 号 p.
185-192
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
ヒ素含有銅鉱物の湿式処理において,アルカリ性水溶液中のヒ素吸着分離挙動の把握が求められている.弱酸性から弱アルカリ性水溶液中におけるヒ素吸着については多くの研究がなされているが,アルカリ性域における知見は極めて乏しい.そこで,本研究では従来型の吸着剤(樹脂系および無機イオン交換体)に対して,アルカリ性水溶液中における3価および5価のヒ素吸着特性についてスクリーニング試験を行った.樹脂系吸着剤では,3価の亜ヒ酸イオンには配位型のグルカミン型樹脂が,5価のヒ酸イオンには強塩基性陰イオン交換樹脂が比較的高い吸着能を有していることが明らかとなった.X線吸収微細構造スペクトル解析より,グルカミン型樹脂による亜ヒ酸イオンの吸着はグルカミン基に多数存在する水酸基がヒ素に直接配位することで起こり,また,強塩基性陰イオン交換樹脂によるヒ酸イオンの吸着は陰イオン交換反応であることが示唆された.無機イオン交換体においては,水酸化物系および鉄酸化水酸化物系がアルカリ性水溶液中のヒ素に対して高い吸着能を有しており,ヒ酸イオンより亜ヒ酸イオンのほうが高い吸着性を示した.特に含水酸化セリウムはアルカリ性域においても3価および5価のヒ素に対して高い吸着能を有していることが明らかとなった.
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吉田 翔, 村山 憲弘, 芝田 隼次
原稿種別: 報文
2017 年 43 巻 4 号 p.
193-198
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
Fe–Al系複合酸化物による水溶液中のAs(III)とAs(V)の除去について検討した.共沈法により得られたFe3+とAl3+を含む複水酸化物を前駆体に用いて,それを焼成することにより複合酸化物を合成した.これらの複合酸化物を吸着剤に用いた時のAs(III)およびAs(V)の除去挙動を調べた.As除去におよぼすpHやFe–Al混合比の影響,As(III)とAs(V)を含む混合溶液からの全Asの同時除去について検討を行った.
焼成温度500°C以下で得られるFe–Al系複合酸化物は非晶質であった.比表面積およびヒ素の除去能の点から,300°Cでの焼成が適当であった.Fe : Al=1 : 1の場合,As(III)とAs(V)のいずれに対しても高い除去性能を示した.Fe3+とAl3+の複合化によって飛躍的にAs(V)除去能が向上する相乗効果が認められた.As(III)およびAs(V)の吸着等温線は,それぞれFreundlich型およびLangmuir型の形状を示した.種々の混合比で調製したAs(III)+As(V)混合溶液からのAsの同時除去を行った結果,Fe : Al=1 : 1の条件で合成した複合酸化物が優れたAs(III)とAs(V)の同時除去能を示した.
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後藤 健彦, 小川 飛鳥, 中田 大貴, 飯澤 孝司, 中井 智司
原稿種別: 報文
2017 年 43 巻 4 号 p.
199-206
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
フリー
側鎖に第三級アミンを持つN-[3(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド(DMAPAA)からメチレンビスアクリルアミド(MBAA)を架橋剤としてラジカル重合によりゲルを合成し,重金属イオン除去剤への応用を検討した.DMAPAAはカチオン性のアクリルアミドモノマーであり,水中でアミノ基がプロトン化して水酸化物イオンを生成するため強い塩基性を示す(pKa=10.35).DMAPAAを架橋したゲルが水中で膨潤すると生成した水酸化物イオンがイオン性相互作用によりゲル内部に留まり,ゲルの内部が塩基性に保たれ,pHの値は合成条件によってpH 8–10の間で変化することが明らかになった.このゲルを塩化銀,硝酸銅,硝酸鉛,硝酸ニッケル,硫酸マンガン,硝酸カドミウムなどの金属塩溶液に浸漬するとゲル内に拡散した金属イオンが水酸化物イオンと反応してゲル内に金属水酸化物を形成することが示された.また,硝酸銅,硝酸ニッケル,硝酸マンガンの混合水溶液にゲルを浸漬した結果,ゲルのpHを調整することで銅イオンが選択的に除去されることが示された.また,ゲルによる金属イオン除去量はゲルを構成する高分子アミノ基のモル数に比例することが示された.さらに,除去量が最大値に達したゲルでも水酸化ナトリウム溶液に浸漬して,プロトン化したアミノ基に吸着した対イオンを水酸化物イオンと置換することで,繰り返し金属イオンを捕集できることが明らかになった.したがってアミノ基がプロトン化可能な高分子ゲルを用いることで,従来の沈殿除去法や吸着除去法と比較して簡便な新しい重金属捕集分離方法の可能性が示された.
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加藤 達也, 八木澤 真, 松岡 光昭, 所 千晴, 榊原 泰佑, 林 健太郎
原稿種別: 報文
2017 年 43 巻 4 号 p.
207-212
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
わが国で依然として発生している硫酸酸性の坑廃水に対して効率的な処理を達成するため,中和処理による水質変化を予測可能なシミュレータの開発を目的としたモデリングを実施した.具体的には有害元素除去能力を有する水酸化第二鉄および水酸化アルミニウムに対する表面錯体形成を考慮した化学平衡計算を用いて,中和時の薬剤添加によるpH変化や,各元素の残留濃度を正確に予測可能な定量モデルの構築を行った.各水酸化物に対する表面錯体モデル構築には,拡散層モデルをベースに構築した.構築した定量モデルの有用性を確認するため,2種類の実在の酸性坑廃水を用いて中和滴定実験を実施し,実験結果と解析結果を比較した.その結果,構築した定量モデルは,薬剤添加によるpH変化や,各元素の残留濃度を再現できることを確認した.
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堀内 健吾, 松岡 光昭, 所 千晴, 大和田 秀二, 薄井 正治郎
原稿種別: 報文
2017 年 43 巻 4 号 p.
213-218
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
近年,自動車や電気電子産業で需要が増加しているリチウムイオン電池(LIB)の正極材にはコバルト(Co)等の有用金属が多く用いられていることから,リサイクルプロセスの確立が求められている.物理選別と湿式処理の組み合わせは,使用済みLIBからのCo回収に有用な手段の1つであるが,同様に正極材に大量に共存するアルミニウム(Al)は忌避元素の1つとして知られている.そこで本研究では最前段である加熱操作に着目し,後段の磁選における高効率なCo回収とAl成分との相互分離に適した加熱条件を検討した.使用済みLIB内の正極活物質LiCoO2はLiが欠損したLixCoO2(x<1)の形態となっており,Al粒子やC粒子との共存,ならびに加熱時に発生するCO2の他,COやCH4, C2H4などの還元性の気体によって,加熱による分解が促進され,磁性を有するCoO相やCo相が生成しやすいことがわかった.また,加熱時の昇温速度を遅くすることでCoO相やCo相の粒成長を促し,Al成分の粉化を防ぐことが確認された.その結果,使用済みLIBから75.5%の回収率でCo成分をAl成分と相互分離することに成功した.
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林 順一
原稿種別: 報文
2017 年 43 巻 4 号 p.
219-223
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
バイオマス(ヒノキチップ)を炭化(炭化温度500–1000°C)して,分子篩炭素の製造を試みた.得られた炭化物を用いて,二酸化炭素–メタン,プロパン–プロピレンの分離の可能性について吸着量,吸着速度の面から検討した.その結果,二酸化炭素–メタンについては,すべての炭化物に二酸化炭素もメタンも吸着したが,いずれの場合もメタンより二酸化炭素を多く吸着した.炭化温度800°C以上の炭化物に対して,分子サイズが大きいメタンの吸着時定数が二酸化炭素の30–180倍であることがわかった.プロパン–プロピレンについては,炭化温度800, 900°Cで得られた炭化物に対してプロピレンは吸着するが,プロパンはほとんど吸着しないことがわかった.また,炭化温度700°Cの炭化物に対して,プロパンの吸着時定数はプロピレンの110倍であることがわかった.以上のことからヒノキチップ炭化物を用いて二酸化炭素–メタン,プロパン–プロピレンの分離が可能であると考えられた.
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利谷 翔平, 澤柳 薫, 鈴木 一弘, 周 勝, 寺田 昭彦, 細見 正明
原稿種別: 報文
2017 年 43 巻 4 号 p.
224-230
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
豚ふん尿と稲わらの高温乾式メタン発酵における稲わらの代替有機物としての利用可能性を調べるため,河川管理で発生する7種類の草本系および3種類の木質系バイオマスの高温乾式メタン発酵特性を調査した.回分高温乾式メタン発酵における,有機物(VS)当たりのメタン(CH4)生成ポテンシャルは109±8.1–347±62 m3/t-VSであり,剪定枝が最も低く,稲わらが最も高かった.メタン生成ポテンシャルは草本系バイオマスの方が木質系バイオマスより高い傾向にあり,リグニン含有率の増加とともに減少する傾向が見られた.さらに,養豚が盛んな茨城県をモデルに,耕作放棄地(稲わら),河川(刈草および剪定枝)および公園・道路・果樹園(剪定枝)より発生するバイオマス量からメタン生成量を推定したところ,稲わら,草本系バイオマスおよび剪定枝でそれぞれ31.3, 1.68および1.42 m3/yだった.そこで,チガヤおよび剪定枝と豚ふん尿の混合基質の反復回分式高温乾式メタン発酵を実施した.その結果,メタンガス生成量は,チガヤおよび剪定枝でそれぞれ251±44および157±9.4 m3/t-VSであり,メタン生成ポテンシャルとほぼ同等のメタン生成を示した.したがって,チガヤと剪定枝は稲わらの代替バイオマスとして利用可能であることがわかった.
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高橋 伸英, 望月 俊, 増田 顕澄, 嶋田 五百里, 長田 光正, 福長 博
原稿種別: 報文
2017 年 43 巻 4 号 p.
231-237
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
本研究では,現状の化石系燃料によるハウス暖房から脱却し,木質バイオマスの発酵熱を暖房熱源として利用することを目指し,発酵試料の温度,含水率,C/N比が木質バイオマスの発酵速度におよぼす影響を調査した.カラマツのかんなくず,窒素添加材である発酵鶏糞,微生物供給材を混合したものを発酵試料として用い,2 Lのアルミ製反応容器に充填し,強制通気を行いながら所定の温度に保持した.反応容器通過前後の酸素消費速度から発酵速度を評価した.その結果,C/N比70の場合,温度40°C,含水率60%のとき最も高い発酵速度が得られた.また,13, 20, 70の異なるC/N比で発酵実験を行った結果,C/N比の低下にともない木質バイオマスの単位質量当たりの発酵速度は上昇したが,混合試料の単位質量当たりの発酵速度は必ずしも増大しなかった.これはC/N比を下げるためには発酵鶏糞を多量に添加する必要があるためである.発酵ガス中の酸素と二酸化炭素濃度から,消費された酸素はほぼ100%二酸化炭素に転換されており,好気性発酵が良好に起こっていることが示唆された.また,暖房に必要な発酵試料の量,および装置体積を推定した.
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杤岡 英司, 山下 学, 碓井 次郎, 細川 恒, 寺田 昭彦, 細見 正明
原稿種別: 報文
2017 年 43 巻 4 号 p.
238-244
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
本研究の目的は,最初沈殿池汚泥から回収した繊維状物を脱水助材として利用した際の脱水性能におよぼす影響について明らかにすることである.嫌気性消化汚泥を対象として,定圧濾過実験と実規模のスクリュープレス脱水機による脱水実験の2種類の実験を行った.定圧濾過実験では,この回収した繊維状物を添加することで濾過速度は増大し,平均濾過比抵抗は低下することが確認された.これらの効果は,繊維状物の添加率を増加させることで,より高まることが明らかとなった.スクリュープレス脱水機を用いた実規模の脱水実験においては,最初沈殿池汚泥から回収した繊維状物を添加することで脱水ケーキの含水率は82から68%まで低下した.また,年間を通して繊維状物の添加率を増加することで脱水ケーキ含水率が低下する関係は一つの曲線で表現できた.このことから,繊維状物の添加率を調整することで脱水ケーキ含水率を任意に操作することが可能と推察できる.さらに,繊維状物の添加により汚泥処理速度,高分子凝集剤添加率の低減効果の改善も確認された.これらの結果は,下水に含まれる繊維状物が脱水助材となることを示唆している.
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山本 光夫, 南 克哉, 劉 丹
原稿種別: 報文
2017 年 43 巻 4 号 p.
245-251
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
浅海の岩礁・転石域における大型の海藻群落が衰退・消失する磯焼けの問題に対して,考え得る要因の一つとして溶存鉄不足に着目した藻場再生技術の研究開発が行われてきた.本技術は,産業副産物である転炉系製鋼スラグと木質バイオマス由来の堆肥(腐植物質)を混合した施肥材(鉄分供給ユニット)を利用して海域への供給を行うものである.北海道日本海側での実証試験ではその効果が確認され,実用化に向けての研究・検討が進められているが,基礎研究としては,施肥材からの鉄溶出特性について,製鋼スラグへの有機物添加効果に着目した検討が行われてきた.施肥材として実際に使われている堆肥のほか,竹粉末の添加効果が検討されている.本研究においては,鉄溶出促進に寄与する有機物の特性を検討・評価することを目的として,竹炭およびリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を担持したMAP担持竹炭の製鋼スラグへの添加効果に関する実験結果に基づき,これまでの研究を踏まえた考察を行った.また鉄以外の溶出特性として,製鋼スラグにも含まれるリンに着目しての定量的な検討を試みた.研究においては,製鋼スラグ,堆肥,竹炭,MAP担持竹炭を用いて9種類の試料を作製し,試料から溶出する全鉄,溶存鉄の経時変化をモニタリングしたほか,全リンについての分析を合わせて行った.その結果,鉄溶出促進に対する堆肥と製鋼スラグの混合効果が改めて示されたほか,添加する有機物については,溶出量の多さとともに鉄と錯形成しやすい構造を有する有機物を製鋼スラグに添加した方が効果的であることが推察された.さらに施肥材からはリンの溶出はあるものの,鉄溶出量との比較からリン供給材というよりも鉄供給材としての能力を有することが示唆された.
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中井 智司, エステバン ミニョ, 大野 正貴, 小瀬 知洋, 奥田 哲士, 西嶋 渉
原稿種別: 報文
2017 年 43 巻 4 号 p.
252-257
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
本研究では,触媒としてFe3+を用いたPFOAの光分解処理にキレート剤を併用し,分解促進を図った.キレート剤であるクエン酸,シュウ酸,EDTAの添加により,Fe3+を触媒とするPFOAの光分解が促進されることを確認した.しかしながら,キレート剤による分解速度定数の大きな差異は認められなかった.また,クエン酸を鉄に対してモル比1 : 1にて加えた系列において溶存鉄濃度を分析した結果,溶存鉄濃度はクエン酸非添加系の約1.8倍に維持されたことが確認された.したがって,クエン酸によるPFOA光分解の促進の一因は溶存鉄イオンの増加であることが示された.また,このとき触媒として加えたFe3+の約70%が溶存状態として維持されており,クエン酸の添加量をモル比1 : 1以上に増やしても分解促進はほとんど認められなかった.一方,分解されたPFOA分子の脱フッ素率を求めた結果,Fe3+とクエン酸の併用により,PFOAの分解によって生じた短鎖のペルフルオロ化合物の分解もさらに促進できることが明らかとなった.なお,UV照射の出力を14 Wから40 Wに増加させた場合,Fe3+,ならびにFe3+とキレート併用によるPFOAの分解促進効果は小さくなった.
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菅原 一輝, 小川 人士, 鈴木 誠一, 井上 千弘
原稿種別: 報文
2017 年 43 巻 4 号 p.
258-263
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
環境中に飛散した放射性セシウム(Cs)およびストロンチウム(Sr)の日本の耕作地における環境動態を調査するために,非放射性CsとSrを圃場に添加し牧草類への吸収特性を評価した.同時に,土壌への吸着の影響を排除するため寒天培地を用いた栽培試験を行い,植物が持つ本来のCs吸収能の検討を行った.圃場試験においては,CsとSrを同時に添加した場合に収穫量が減少したものの,CsもしくはSr単独で添加した場合では収穫量は大きく変わらなかった.植物体中の濃度は,Csを圃場に添加した場合には添加しなかった場合に比べて大きくCs濃度が上昇したが,Srの場合は添加・非添加問わず同程度の濃度であった.しかしながら,牧草に吸収されたCs量は圃場に添加した量の1%程度であり,環境中にCsが放出された場合に植物体へ移行する量は限定的であることが示唆された.寒天培地での試験では,植物体の生長量とCs吸収量の間には正の相関関係が見られた.圃場試験と寒天培地での栽培試験の結果を比較すると,植物体中のCs濃度はCsが作土に吸着すると考えられていた圃場試験と比較的容易に吸収されると思われた寒天培地の結果間で正の相関関係を示した.したがって,圃場作土中のカリウムやカルシウムがCsの作土への吸着を阻害し,植物に吸収されやすい遊離状態に保っている可能性が示唆された.以上の結果から,有機物が多い日本の畑作土においてCsは土壌粒子に吸着し,大部分は植物に吸収されにくい形態になるものの,一部は肥料分の影響によって遊離して植物に吸収される機構が考えられる.
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寺田 昭彦, 臼井 陽菜子, Qian Bao, 中井 智司, 細見 正明
原稿種別: 報文
2017 年 43 巻 4 号 p.
264-270
発行日: 2017/07/20
公開日: 2017/07/20
ジャーナル
認証あり
排水に含まれる医薬品類や生活用品中の化学物質(PPCPs)が排水処理場で処理されずに環境へ流出することが問題となっている.アンモニア酸化細菌(AOB)はアンモニア酸化に加え,難生分解性物質の分解能を有することが報告されており,PPCPsの分解促進が期待される.このような背景をかんがみ,本研究はAOBであるNitrosomonas europaeaを用いて,抗生物質であるクラリスロマイシン(CAM),抗てんかん剤であるカルバマゼピン(CBZ)の2種の医薬品類の分解実験を行った.CBZは生分解が困難であったが,CAMはN. europaeaによって分解可能であることが示された.また,CAMの分解速度は硝化細菌を含む活性汚泥よりも最大で1桁高いことが示唆された.N. europaeaにCAMを添加した場合,アンモニア酸化はCAM 10 µg/L以上で阻害された.マイクロアレイによるN. europaeaの遺伝子発現解析の結果,N. europaeaのアンモニア酸化活性が阻害されるCAM濃度においても,アンモニア酸化やリボソーム合成をコードする遺伝子群は活発に転写されることが明らかになった.
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