化学工学論文集
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45 巻, 2 号
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編集ノート
移動現象,流体工学
  • 青木 大祐, 坂東 芳行, 鈴木 森晶
    原稿種別: 報文
    2019 年 45 巻 2 号 p. 39-45
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,地震時における矩形水槽内のスロッシング波高の抑制対策として多孔板の設置を提案し,水槽内でのスロッシング挙動について実験的に検討した.開孔率および孔径を組み合わせた多孔板を水槽の中間位置に設置し,振動数をある間隔で変えて水槽内の波高を測定した.また,多孔板を中間位置に設置できない場合を想定して,多孔板の設置位置を変えた実験も行った.

    開孔率の高い多孔板では,水槽幅に基づくスロッシング固有振動数付近で波高が卓越し,開孔率が低いほど波高抑制効果は大きくなった.一方,開孔率の低い多孔板では,スロッシング固有振動数が水槽幅から水槽の半分幅に基づく値へと遷移し,開孔率が低いほど波高抑制効果は小さくなった.本測定範囲では,開孔率15%の多孔板で高い波高抑制効果が得られ,この開孔率においては孔径が小さいほど波高抑制効果は若干高くなった.多孔板を水槽中間から少し離れた位置に設置しても,波高抑制効果に大きな影響は見られなかった.

  • 古川 陽輝, 永谷 勇人, 加藤 禎人
    原稿種別: ノート
    2019 年 45 巻 2 号 p. 46-50
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル 認証あり

    球底円筒槽において,槽底形状が撹拌所要動力へ与える影響を幅広いレイノルズ数領域で調べた.撹拌翼には放射流翼であるパドル翼とタービン翼および軸流翼であるピッチドパドル翼とプロペラ翼を用いた.球底円筒槽での撹拌所要動力は,邪魔板がない場合は,いずれの撹拌翼においてもレイノルズ数にかかわらず平底円筒槽との差異はなかった.一方,邪魔板を設置した場合は,放射流翼では遷移域から乱流域において球底円筒槽の撹拌所要動力は平底円筒槽より小さくなったが,軸流翼では槽底形状による撹拌所要動力の違いはレイノルズ数にかかわらずなかった.さらに,邪魔板付球底円筒槽の撹拌所要動力は,邪魔板挿入深さをパラメータとして用いることで相関できた.

粉粒体工学
  • 田中 裕幸, 菅澤 昌之, 横田 英明, 酒井 幹夫
    原稿種別: 報文
    2019 年 45 巻 2 号 p. 51-59
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル 認証あり

    ビーズミルは粉砕機であり,微粒子の解砕においてビーズ間のせん断力が支配的な粒子プロセッシングシステムである.数値シミュレーションを用いてビーズミルの設計および運転条件の最適化が進められている.既存の固液混相流の数値シミュレーション手法のEuler–Lagrange法では,任意壁形状における壁境界条件を計算に取り入れることが困難であり,Lagrange–Lagrange法では,任意壁形状が正確に得られるが,流体をLagrange的に扱うために計算負荷増大が課題であった.これらの課題を解決するため,Advanced DEM(Discrete Element Method)–CFD(Computational Fluid Dynamics)法により,符号付距離関数(Signed Distance Functions)でDEM粒子と任意形状壁間の接触判定を行い,埋込境界法(Immersed Boundary Method)でEuler格子中の壁境界条件を求めた.計算手法の妥当性を示すために密度が異なる2種類の媒体粒子を用いて媒体粒子の空間分布および粒子速度をシミュレーションと実験で比較した.ビーズミルは,媒体粒子に作用するせん断力が重要であるため,みかけの摩擦係数をパラメーターとした感度解析を行った.本研究を通して,Advanced DEM–CFD法は,ビーズミルにおける媒体挙動の再現性が良いこと,ビーズミルの数値シミュレーションでは摩擦係数の設定が極めて重要となることが示された.

  • 山本 利彦, 鈴木 崇成, 宍戸 昌広, 武居 正史, 畑 克彦
    原稿種別: 報文
    2019 年 45 巻 2 号 p. 60-65
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル 認証あり

    硝酸銀/クエン酸ナトリウム水溶液を熱水処理した際の銀ナノ粒子の形成メカニズムに関して,これまでほとんど検討されなかった,水に難溶のクエン酸三銀塩を経由する銀ナノ粒子の形成ルートの存在を明らかにした.また,クエン酸ナトリウム水溶液と硝酸銀水溶液の混合により生成したクエン酸三銀塩が水中での保持時間の経過とともにオストワルド熟成によって粒子形態および結晶形態が変化すること,ならびに,長時間水中で保持した結晶形態の変化したクエン酸三銀塩からは,銀ナノ粒子よりも銀ナノロッドが形成しやすいことを明らかにした.

分離工学
  • 大榮 薫, 大島 達也, 小畑 佑介, 金丸 慎太郎, 本多 剛, 臨 護
    原稿種別: 報文
    2019 年 45 巻 2 号 p. 66-71
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル 認証あり

    N-ビニルホルムアミドをジビニルベンゼンおよびアクリロニトリル存在下で懸濁重合し,その後加水分解して得られるポリビニルアミン架橋樹脂を担体として化学修飾することで新規イミノ二酢酸型キレート樹脂Hym-Iを調製した.IRスペクトルにより,ポリアミド架橋樹脂の加水分解によってポリビニルアミン架橋樹脂が得られ,その後イミノ二酢酸基が導入されたHym-Iが得られていることが確認された.ともにイミノ二酢酸樹脂であるHym-Iおよび市販のキレート吸着剤DIAION™ CR11の金属吸着性を比較した結果,Hym-Iは酸性条件での3価金属イオンの吸着率が相対的に低く,市販吸着剤にない3価金属に対するCu(II)への選択性を示すことが明らかになった.Langmuir式によりCu(II)の飽和吸着量を算出した結果,Hym-IはCR11の1.8倍の3.70 mmol/gの飽和吸着量を示した.

  • 入谷 英司, 片桐 誠之, 福田 正秀
    原稿種別: 報文
    2019 年 45 巻 2 号 p. 72-79
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル 認証あり

    O/Wエマルションのデッドエンド精密濾過において,膜面上に形成される濾過ケークの特性を推算する手法を得るため,遠心場での近赤外光の透過率が測定できる分析用遠心機を使用して,O/Wエマルションの遠心浮上実験を行った.種々の濃度で得た初期浮上速度およびローター回転数を種々に変化させて得た圧密クリーミング層の平衡厚さから,O/Wエマルションの濾過と浮上の相似性に基づき,部分ケーク比抵抗,部分ケーク空隙率,固体圧縮圧力間の関係を示す,いわゆる圧縮透過データを得た.このようにして求めた圧縮透過データを用い,濾過ケークの圧縮性におよぼす濾過圧力の影響が考慮された圧縮性ケーク濾過モデルに立脚して,デッドエンド濾過で形成される濾過ケークの平均ケーク比抵抗や平均ケーク空隙率を推算した.遠心浮上データから推算したこれら平均ケーク比抵抗および平均ケーク空隙率の圧力依存性の妥当性を検証するため,濾過の進行にともなう濾過速度の減少を推算する方法が,濾過ケークの一部が剥離する従来の下向流デッドエンド濾過ではなく,ケークの真の特性値が得られる上向流デッドエンド濾過に適用された.その結果,濾過速度の推算値は,実験データと比較的良好な一致を示すことがわかった.したがって,遠心浮上法による圧縮透過データの決定は,O/Wエマルションの精密濾過挙動を精度良く推算できる便利なツールとして役立つものと考えられる.

  • 大榮 薫, 田渕 亮丞, 大島 達也, 原 孝佳, 島津 省吾
    原稿種別: 報文
    2019 年 45 巻 2 号 p. 80-85
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
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    本研究では,酢酸イオンを層間内にもつNi–Zn層状塩基性塩(NiZn)を水熱法により合成し,水溶液から毒性のAs(III)およびAs(V)を除去するための吸着特性を評価した.NiZnを用いたAs(III)およびAs(V)の吸着率は市販のハイドロタルサイトよりも高かった.NiZnはpH 6.4–10.6でほぼ100%のAs(V)を除去した.吸着におよぼす共存イオンの影響を検討した結果,As(V)の吸着率はリン酸イオンの存在下で大きく減少した.As(III)およびAs(V)の吸着率はその溶存化学種に大きく影響し,主な化学種がH2AsO3およびH2AsO4のときに高い吸着率を示した.NiZnへのAs(III)およびAs(V)の飽和吸着量はそれぞれ1.24および1.05 mmol·g−1であった.XRD回折ピークから算出したd100より,As(V)吸着前後のNiZnの層間距離は1.3から0.91 nmへ減少した.加えて,FT-IRスペクトルにおいて酢酸イオン由来の吸収ピークの減少が確認され,854 cm−1にAs–O由来の弱い吸収ピークが現れたことから,As(V)はNiZn層間の酢酸イオンとのイオン交換により除去されたことが明らかになった.ただし,pH 6.2±0.5においてAs(III)はNiZn表面に吸着されることが示唆された.NiZnは中性水溶液中のAs(V)およびアルカリ溶液中のAs(III)の吸着除去に優れていることが示された.

反応工学
  • 井関 芳和, 岩崎 良平, 坂本 友和, 山口 進, 水越 克彰
    原稿種別: 報文
    2019 年 45 巻 2 号 p. 86-90
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
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    水加ヒドラジン燃料電池稼動時に,副生し燃料中に蓄積されるアンモニアを水中プラズマで分解することを試みた.アンモニアは水中に生じたプラズマに直接取り込まれ,窒素と水素に分解されるのに対し,水加ヒドラジンは水分子のプラズマ分解で生じた過酸化水素等の活性酸素種と溶液中で反応し,分解されることがわかった.アンモニア・水加ヒドラジン共存水溶液中でプラズマを発生させると,アンモニアが選択的に分解され,水加ヒドラジンの分解は抑制された.これは,揮発性の高いアンモニアが優先的にプラズマの内部に取り込まれ,OHラジカル等活性酸化種と反応したと考察する.本法によれば,ヒドラジンを浪費することなく,選択的にアンモニアを分解することができ,水加ヒドラジン燃料電池の実用において有望な要素技術であることがわかった.

材料工学,界面現象
  • 渡邉 裕之, 平沢 泉
    2019 年 45 巻 2 号 p. 91-99
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
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    潜熱蓄熱材として利用が期待される炭酸ナトリウム10水塩(融点Tm,0=304.5 K, 潜熱量ΔHf,0=153 kJ/kg, ともに実測値)および炭酸ナトリウム10水塩0.6 mol/molとリン酸水素二ナトリウム12水塩0.4 mol/molとの水和塩共晶(E(P–C);融点Tm,0=298 K, 潜熱量ΔHf,0=213 kJ/kg, ともに実測値)の2種水和塩系に対し,その融液に溶解可能な添加物を混合した系について,融点Tmおよび潜熱量ΔHfの変化を測定した.簡易的な実験式を用い,各添加物の融点降下能力ameおよび潜熱量低下能力bmeを数値化した.これら能力の数値は添加物ごとに異なったが,能力比率bme/ameは添加物の種類によらずほぼ同じ数値となって,水和塩系それぞれの固有値を示した.さらに,前報(Watanabe, 2017)およびその続報(Watanabe and Hirasawa, 2018b)で得られた塩化カルシウム6水塩系およびリン酸水素二ナトリウム12水塩系の各bme/ame値もあわせて比較検討した結果,水和塩単体のTm,0およびΔHf,0でそれぞれ規格化した相対融点降下度[1−(Tm/Tm,0)]と相対潜熱量低下度[1−(ΔHf/ΔHf,0)]との間には,水和塩系の種類に依存しない下式で表されるほぼ一定の数値関係が成立することがわかった.

エネルギー
  • 名久井 恒司, 秋山 友宏
    原稿種別: 報文
    2019 年 45 巻 2 号 p. 100-107
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
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    各種水素キャリアのエクセルギー効率を解析するためには,キャリアの生成,水素分離等の条件設定が必要である.液体水素をキャリアとする場合は,多数の冷凍サイクル段ごとに「エクセルギー損失の最小化」(以下「最適化」)を図ったうえで,システム全体の最適条件を見出すことのできる適切なパラメータを持つモデルを用いる.本研究で構築したモデルは,熱交換温度領域に応じた複数の冷凍サイクルからなる.冷凍各サイクル段は逆ブレイトンサイクルを基本とし,圧縮器,膨張器および熱交換器を含む.予冷各段の冷熱供給量が最大になるサイクルを試行錯誤により定め,各サイクルの最適化を図った.

    モデルによるシミュレーションの結果,システム全体の最適化を見出すためのパラメータとして,水素液化サイクル内で水素の一部を膨張タービンに分流する率(e)が適切であることがわかった.水素液化サイクルを予冷する段で用いることが可能な冷媒は純物質としては水素,ヘリウムおよびネオンに限られるので,その3種の冷媒の比較を行うこととし,予冷サイクル段で用いる冷媒の種別ごとにeの値の変化にともなう冷熱供給必要量およびエクセルギー損失量の変化を見た.その結果,(i)冷熱供給必要量およびエクセルギー損失量の変化はトレードオフの関係にあり最適条件を定める手掛かりになること,(ii) e全域にわたり水素とヘリウムの間の差は小さく,両者はネオンに勝っていること,および(iii)水素またはヘリウムとネオンの差が小さくなる領域もあること,との知見を得た.第3の知見からは,タービンを回すのに有効な比重が大きいという特長を持つネオン,またはヘリウムとネオンの混合流体(nelium)が相対的に有利となる範囲が推定できる.また,予冷サイクルを使うとクロウドサイクルに比べ正味仕事量(エクセルギー変化量)を小さくすることができることも見出された.

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