イチゴは主に可食部の花托と葉部からなる植物である.イチゴ葉は花托収穫後に廃棄されるものの,抗酸化性成分やフェノール類などの有用成分を含んでいる.これらの有用成分を,環境負荷が小さく無害な溶媒で抽出回収できれば,イチゴ全体を有効利用できる可能性が広がる.本研究では,人体に無害である溶媒の利用を意図して,極性が小さいCO2と極性物質の水からなる超臨界CO2+水混合溶媒を用いたイチゴ葉の抽出を行い,温度(308–333 K),圧力(10–30 MPa),H2O/CO2供給モル比(0–0.3)にて抽出物の抗酸化能(AOC)や総フェノール量(TPC)を評価した.その結果,超臨界CO2の共溶媒として水を使用することで,超臨界CO2抽出の場合と比較してAOCとTPCが増大することがわかった.308 K, 20 MPaでの超臨界CO2+水混合溶媒抽出におけるAOCとTPCは,H2O/CO2供給モル比に対して極大値を有していた.また,AOCとTPCは20 MPaで温度に対して極小値を有し,308 Kで圧力に対して極大値を有しており,これらの温度・圧力依存性は溶媒密度,溶解度の影響によるものと推察した.H2O/CO2=0.1にて応答曲面法による解析を行った結果,AOCとTPCは温度–圧力平面に対して2つの極大値を有しており,AOCは308 K, 17.0 MPaで,TPCは333 K, 22.4 MPaで最大となった.
大豆油–ヘキサン混合油と界面活性剤を添加した水を,ヘキサン耐性を有するガラスキャピラリー製マイクロ流体デバイス内へ流入させることにより,単分散なo/wエマルションを作製した.流量を調整することにより,油滴の直径を2.7–15.6 µmの範囲で制御することができた.その後,油滴内のヘキサンを蒸発させることにより,直径0.5–3.1 µmの単分散大豆油エマルションを得ることができた.本方法は,微小な単分散エマルションを作製する方法として有用であり,ヘキサン濃度を上げることにより,さらに微小な単分散エマルションの作製が期待できる.
従来のポリマーナノ粒子合成法は界面活性剤を大量に使用するプロセスであるが,自然生態系への影響が懸念されており,界面活性剤の使用量の低減が求められている.本研究では熱可逆性ゲルを粒子の重合場とすることで,界面活性剤を添加せず平均粒子径50 nm以下のポリスチレンナノ粒子を合成する手法を提案する.実験では環境および生体調和型の親水性高分子であるメチルセルロース(MC)ゲルを重合場とした.MC濃度が高くなるにつれゲルの網目格子幅は小さくなり,得られるポリスチレン粒子の粒径が小さくなることがわかった.その結果,ゲル濃度1.0 wt%で31 nmの粒子が得られた.MCゲルの網目構造によって粒子のブラウン運動を抑制し,粒子同士の凝集成長を抑えることでナノ粒子が合成されたと考えられる.粒子の分散性については酵素によって粒子表面に付着したMCを分解することで分散性の向上が確認できた.