固液撹拌において固液間物質移動係数を把握することは,撹拌装置の設計,運転条件において重要であり,この固液間物質移動係数は撹拌翼回転数とともに増加し,浮遊限界回転数で増加率は低減する.そのため,浮遊限界回転数を把握することが固液撹拌操作の要となる.本稿は,前報であるKamei et al.(2008)の固液物質移動実験から導出された浮遊限界回転数の結果とZwietering(1958)など既往の研究との関係を調査し,翼高さbなどの翼条件や翼取付け位置の浮遊限界回転数への影響を考察した.さらに,Zwietering(1958)の浮遊限界回転数の推算式を次のように修正することで,撹拌所要動力に基づいた浮遊限界回転数の推算式を導出した.
ウイルスを含む汚濁水の濾過操作による浄化において,濁質の濾過特性およびウイルスの除去特性を支配する因子の究明を試みた.懸濁微粒子濃度とウイルス濃度が適切な関係にあるとき,ウイルスは微粒子表面に吸着し,粒子が凝集する様子が観察された.ウイルスによる粒子の粗大化により,膜面上に形成される濾過ケークの平均濾過比抵抗は小さくなり,濾過性が向上した.この現象は,ウイルスが等電点をもつことから溶液環境の影響を大きく受け,溶液のpHが等電点以下になると粒径増大とウイルス除去が顕著となり,pH 4.5において平均濾過比抵抗は1/3程度に減少し,除去率99.999%以上(5.4 log)が得られた.孔径が大きいため分離膜のみによるウイルス阻止が困難な場合においても,ウイルスが粒子に吸着することで濾過ケークとして阻止されること,またケーク透過時にウイルスの吸着が促進され除去率が上昇することが明らかとなった.4種類の微粒子と2種類のウイルスによる検討から,ウイルスの吸着はさまざまな微粒子に対して生じ,汚濁水のpHが吸着特性に多大な影響をおよぼすことが確認された.pH制御によりウイルスを珪藻土に吸着させることも可能で,珪藻土プリコート層によるウイルス除去が実現できることを示した.
ホッキ貝等の蓄養水槽に泡沫分離装置を設置した水質維持システムの構築を目的として,夏季および冬季に泡沫分離装置設置の有無による蓄養水槽内循環海水の水質変化を検討した.試作した泡沫分離装置によって汚濁物質を蓄養水槽外に除去できる.夏季において,泡沫分離装置の設置により蓄養水槽内の循環海水水質の悪化を抑えることが可能であり,シロガイ斃死率も低下する.冬季においては泡沫分離装置の設置により蓄養水槽内の循環海水水質は生海水と同等に維持できる.
VOCガスの酸化触媒には,一般に,球状アルミナに白金黒をコーティングした固体触媒が使用されている.一方,白金は高価な希少貴金属である.そこで,白金と同じ貴金属であるが,安価である銀を用いて触媒活性を測定し,銀の添加量によって性能が向上することを見出した.しかしながら,その性能は,優れた値ではなかった.その結果を踏まえて,銀の拡散を防止し,アルミナボール表面に銀が偏在するように,支持体に使用している球状酸化アルムニウムを熱処理することを試みた.最終的に,銀触媒の性能は白金触媒にはおよばないが,触媒性能が大きく改善できることを見出した.