化学工学論文集
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48 巻, 3 号
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編集ノート
移動現象,流体工学
  • 大平 勇一, 島田 祐樹, 佐野 航, 島津 昌光
    原稿種別: ノート
    2022 年 48 巻 3 号 p. 71-75
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル 認証あり

    2つのタービン翼を備えた2段縦型撹拌槽の交換流量におよぼすリング状仕切板の開孔率,撹拌速度の影響を実験的に検討した.翼径Diは槽径DTの1/2とした.交換流量Qは撹拌速度n,開孔率Arに比例して大きくなった.2段縦型撹拌槽の場合でも,修正無次元交換流量Q/(nDi3Ar)と撹拌レイノルズ数の関係は3段縦型撹拌槽の場合と同じであった.また,修正無次元交換流量Q/(nDi3Ar)は2段縦型撹拌槽の槽高さの−1.7乗に比例することがわかった.

  • 大田 敦彦, 髙倉 逸仁, 中丸 真吾, 古川 陽輝, 加藤 禎人, 高 承台
    原稿種別: ノート
    2022 年 48 巻 3 号 p. 76-80
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル 認証あり

    日本で開発された各種大型翼の混合機構を解明するために筆者らはニュートン流体に対しその流脈パターンを明らかにしてきたが,塑性流体に関する流脈データは皆無である.ニュートン流体に対して大型翼の混合を改善するには翼上端と液面に距離を取った方がよかったが,塑性流体の混合に対し,降伏応力を超える応力を生み出し,全体の液量に対するキャバン領域を広げるためには,翼上端と液面の距離は短いほうがいいことがわかった.

分離工学
  • 栫 隆彦, 後藤 雅宏
    原稿種別: 報文
    2022 年 48 巻 3 号 p. 81-85
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル 認証あり

    各種イオン液体,1-アルキル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートおよび1-アルキル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドを輸送キャリアとして用いた乳化液膜による塩酸媒体からのロジウム(III)の抽出を行った.ロジウム(III)の抽出を促進するために,原料水溶液中にスズ(II)を添加し,ロジウムおよびスズの抽出挙動におよぼす各種操作条件の影響を検討した.各種金属の抽出速度は,イオン液体種,界面活性剤濃度,逆抽出剤濃度に大きく影響されることがわかった.イオン液体分子におけるアルキル鎖長並びに対アニオン部の構造の違いが抽出に影響をおよぼすことが示された.また,逆抽出剤として用いた2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールの存在量が多量のスズからのロジウムの選択的な抽出に影響をおよぼし,最適値が存在することが明らかとなった.本系における最適操作条件下において,迅速かつ定量的なロジウム抽出が達成された.

熱工学
  • 板谷 義紀, 永田 大昂, 犬飼 俊輔, 小林 信介, 中川 二彦, 高田 佳明
    原稿種別: 報文
    2022 年 48 巻 3 号 p. 86-92
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル 認証あり

    セメント産業では省エネルギー・低炭素化に向けてキルン内焼成温度を品質保持限界まで低下させることが,一つの方法として検討されている.そのような温度制御のためには高精度温度計測技術が必要となる.そこで最近,非接触2色輻射(放射)温度計測原理にダストキャンセル法の概念を新たに導入して,炉内に高濃度で浮遊するセメントクリンカーダストの影響を除去して高精度計測を可能とする方式が提案された.しかし,ダストの輻射物性に波長依存性を有する場合には,温度計測原理から物性値一定を前提として換算される温度の精度が大きく低下するため,2波長での輻射物性の差異を補正する必要が生じるが,信頼できる物性データが知られていない.本研究では,クリンカーダスト微粒子群の輻射物性として減衰効率について,コールドモデルとホットモデルにより分光計測を行った.コールドとホットの両モデルで計測された減衰効率は良好な一致を示し,可視光から近赤外領域の計測条件では減衰効率の波長依存性が小さく,その物性値に与える粒子径と粒子温度の影響もほぼ無視しうる結果となった.またクリンカーを樹脂固化させた研磨面の反射率から複素屈折率を求め,Mie電磁理論により算出した減衰効率も,コールドとホット両モデルで計測された結果とも良好な一致が認められた.以上の結果は,ダストキャンセル法による輻射温度計測へ適用しうる輻射物性の波長依存性を異なる粒子径と温度パラメータにおいて高い精度で求めることができただけでなく,輻射物性値の波長依存性やパラメータの影響を考慮しない温度計測の可能性を示唆している.

プロセスシステム工学,安全
  • 大宮司 理晴, 山下 善之
    原稿種別: 報文
    2022 年 48 巻 3 号 p. 93-98
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル 認証あり

    製油所や石油化学工場では,エアクーラを使って,プロセスのガス・液や循環冷却水を冷却している.常圧蒸留塔の塔頂にあるエアクーラには,通常,複数台のファンが設置され,固定ファンと,ピッチ角や回転速度を操作して風量を変えられる可変ファンで構成される.エアクーラはプロセス側や冷却側の外乱の影響を受けても,通常,塔頂圧力や出口温度を制御している可変ファンにより,その影響を抑制することができる.しかし,可変ファンの操作範囲を超える場合には,制御を再開するため,固定ファンを起動または停止し,操作範囲へ戻すことが必要となる.複数のファンを持つエアクーラの運転には,2つの課題がある.一つは,固定ファンの起動停止時に,空気流量が変動することであり,もう一つは,ファンの消費電力が最小化できていないことである.本論文では,まず,起動停止外乱を抑制するため,ファンの合計空気流量を推定し,これを中間変数とするカスケード制御を提案する.プロセスダイナミックシミュレータAspen HYSYS® Dynamics上で,固定ファンを起動停止すると,提案する制御は可変ファンを直ぐに操作し,空気量と塔頂圧力が安定することを示した.次に,固定ファンの発停頻度を抑えながら消費電力を最小化するように,固定ファンの稼働台数を最適化する方法を提案する.シミュレーションデータに提案法を適用した結果,従来法と比較して,固定ファン台数変更回数を変えずに,消費電力の低減が期待できることが明らかになった.

  • 大石 卓弥, 長門 琢也, 南口 拓矢, 金 尚弘
    原稿種別: 報文
    2022 年 48 巻 3 号 p. 99-103
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル 認証あり

    医薬品連続生産の異常検知の手法として多変量統計的プロセス管理(MSPC)を連続湿式造粒工程で適用した.連続湿式造粒装置の運転中に意図的に発生させたプロセスパラメータの異常な変化をMSPCによって検知できるかを確認した.異常として加水速度,センターブレード回転数,原料の粒子径を変化させ,MSPCを用いた統計量の監視によりすべての異常について高精度に検出することができた.また,正常状態を正しく正常状態と認識することもできた.

生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 真壁 勇那, 笹本 菜摘, 志田 洋介, 小笠原 渉, 竹口 昌之
    原稿種別: ノート
    2022 年 48 巻 3 号 p. 104-108
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル 認証あり

    Geotrichum sp. M111-M3株はセルロース繊維凝集性を持つ真菌であり,微生物凝集剤としての利用が期待されている.一方でその吸着因子は明らかになっていない.本研究では,プロテアーゼ処理菌体の吸着特性評価,細胞表層タンパク質由来糖鎖分析,コロイド鉄染色による細胞表層多糖検出を行い,本菌とセルロース繊維との吸着に関与する細胞表層成分を明らかにすることを試みた.プロテアーゼ処理菌体は細胞表面タンパク質が加水分解し,セルロース繊維に対する吸着性が低下した.プロテアーゼ処理上清中には6種の単糖から構成される27種類の糖鎖が検出された.プロテアーゼ処理菌体は処理前と比較しコロイド鉄染色強度が低下したことから,酸性基を有するムコ多糖体が細胞壁から遊離したことが明らかとなった.以上より,酸性基を有するムコ多糖体と細胞表面タンパク質がセルロース繊維吸着に影響を与えていることが示唆された.

エネルギー
  • 西村 顕
    原稿種別: 報文
    2022 年 48 巻 3 号 p. 109-119
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル 認証あり

    再生可能エネルギー起源電力を長期保存や長距離輸送するにはH2キャリアに変換することが好ましいとされる.本研究では,1.9 MW, 7.5 MW, 1.9 GWクラスの大規模に設置した太陽光発電システムを四日市に設置することを想定して,気象データに基づき発電電力量を算出し,得られた電力を水電解装置でH2変換後,①圧縮,②液化,③メタネーション後に圧縮もしくは液化,④有機ハイドライド,⑤NH3のいずれかに変換して輸送・消費するエネルギーサプライチェーンについて検討した.消費地まで輸送した際のエネルギー効率,CO2排出量削減効果,ならびにレジリエンスについて評価した.また,H2液化の際に液化天然ガスの気化の際に生じる冷熱を補助熱源として利用した場合についても,エネルギー効率の観点から評価した.その結果,液化CH4における輸送過程の消費エネルギー,CO2排出量が他のH2キャリアと比べて小さくなった.また消費地まで輸送後のH2を発電利用した場合のレジリエンス効果として,太陽光発電システム1.9 GWクラスを想定した場合に,圧縮CH4と液化CH4を除くH2キャリアについて2人世帯の電力需要を年間で227世帯賄えることが明らかとなった.消費地まで輸送後のH2を移動体燃料として利用した場合,CO2排出抑制効果が最も高かったのはガソリン自動車に用いたケースであった.エネルギー損失割合は,液化天然ガス気化の際に生じる冷熱の利用を考慮した液化H2について最も小さくなった.これは,H2を液化するのに必要なエネルギーに対する液化天然ガス気化由来冷熱の補助割合が64.3%と高いためである.また,エネルギー回収率は輸送距離の増加にともない小さくなる.輸送距離が0の場合は液化天然ガス気化の際に生じる冷熱の利用を考慮した液化H2が,輸送を考える場合は圧縮CH4の場合にそれぞれエネルギー回収率が最も良くなった.

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