ナノ粒子は,粒径が10 nm以下になるとやや大きめの分子やオリゴマーと同様に溶液中では「溶媒へ分散」よりも「溶媒へ溶解」に近い挙動を示すようになるため,粒子的な挙動から分子的な挙動を反映した物性把握の必要性が生じてくる.今回,著者らはデカン酸で修飾したセリアナノ粒子を擬似分子として取り扱い,種々の有機溶媒中における溶解度をレーザ光散乱を利用した白濁法より測定し,従来の石油化学産業での蒸留・液液抽出・晶析などに広く適用されてきた活量係数式を用いて相関した.デカン酸修飾セリアナノ粒子の有機溶媒中における溶解度の温度・粒径・溶媒種依存性などを明らかにしたので報告する.
撹拌所要動力に関する報告は非常に多く存在するが,撹拌翼表面粗さの撹拌所要動力におよぼす影響を定量的に論じた報告は非常に少ない.前報では撹拌翼表面にさびや材質変化を模倣した加工を施し,撹拌所要動力におよぼす表面粗さの影響を実験的に検証し,撹拌翼表面での粗さ要素の高さεと翼径dの比ε/d<0.0125では撹拌所要動力に影響をおよぼさないことを示した.本報ではさらにエッジ部の粗さを検討した.その結果,撹拌翼エッジ部での粗さ要素の高さと翼径の比ε/d>0.0125では撹拌所要動力を若干増大させることがわかった.
本報では,二枚貝のマイクロカプセル型の人工餌料製造法確立のため,生物餌料に近い表面機械的特性を有する,ヒドロゲル状マイクロカプセルを用いて,グルコース残基による特異的な餌の取り込みの実証を目的とした.カプセル材料としてグルコース残基を持つデンプンとグルコース残基を持たないゼラチンを用いた.また,二枚貝の餌の認識には粒径も重要な要因であることが報告されている.稚貝が摂食可能である5–20 µmの粒径をとるように,カプセルサイズの均一化を行った.このカプセルを用いた給餌実験によって,グルコース残基を表面に持つデンプンゲルカプセルの方がゼラチンゲルカプセルよりも,二枚貝の鰓でより効率的に捕捉されることを定量的に示した.さらに,胃の組織切片の観察においても,デンプンゲルカプセルの方が顕著に胃の中に多く存在することが確認された.このことより,グルコース残基による特異的な餌の取り込みを実証できた.