従来濾過でものを分けるには, 濾紙や濾布が用いられてきた。しかしこのような濾過では, 液体中に存在する粒子や沈殿物などの固体は分離できても液体中のコロイド粒子, 溶解している分子やイオン, 空気中の酸素や窒素などの気体を分離することは不可能である。しかし近年各種の高分子膜が開発され, これらの膜を用いる濾過で, 液体中の粒子はもちろん, 溶解している分子, イオン, 気体などが, その大きさや化学的性質によって, 相互に分離することが可能となった。そして今日では, これらの膜を用いる分離技術は, 電子, 光学, 原子力, ファインケミカル, 医療, 医薬品, 食品, バイオテクノロジーなどの先端産業分野で, 物質の分離, 濃縮, 精製に大きな貢献をしている。このような高分子分離膜の開発の現状と今後の展開について紹介する。
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