材料の弾性は, 弾性率が高く弾性限界の小さい固体弾性と, 弾性率が低く弾性限界の大きいゴム弾性がある。固体弾性は金属などにみられ, その変位は原子間結合の伸縮運動の偏りによっており大きな応力を示す。一方ゴム弾性は, 原子間結合の回転運動が変位の基本であり, さらにゴムは高分子であるため回転運動がもたらす分子鎖の形態変化が大きな変位を可能にする。ゴムは, 外力のかからない高エネルギーレベルの平衡状態から, 外力の大きさに応じて低エネルギーレベルの平衡状態に移行する。この両平衡状態での分子形態の差, すなわち分子差末端間距離の差がゴムの伸びを決定し, エネルギーレベルの差が応力を決定する。ゴムの応力と伸びの関係を示すゴム弾性式の基本は, 空気の体積と圧力の関係を示すボイルの式と本質的に同じである。
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