平成6年からの6年間,岐阜県立岐阜高等学校・化学部において酸性雨に関する調査・研究を行った。当初は部員全員で取り組める研究として始めた調査であったが,部員たちは実に熱心に雨が降るたびに屋上に設置した雨水採取装置「レインゴーランド」に通い,pH及び導電率(EC),降水量を測定した。次いで,「日本の湖沼は少なくともあと百年は大丈夫」との酸性雨関連の新聞記事に触発され,本当に日本の水環境は大丈夫かという疑問から緩衝作用に着目した。さらに,土からのアルミニウムイオンの溶出,酸の種類やアルミニウムイオンの濃度の違いによる植物への影響を調べた。日本の森林では欧州に比べて酸性雨の被害が顕在化していないが,岐阜市の金華山では木々の立ち枯れも年々増えているように見受けられる。日本の水環境も,今のところは目立った変化はないが,陸水や土壌の吸着能・緩衝能が限界に達することがないとはいえない。
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