近年,生体材料(バイオマテリアル)としての用途に特化した機能性高分子の開発が盛んになっている。合成高分子の最大の特徴は,原料となるモノマーの種類やその重合度を自在に変えることによって,さまざまな強度や柔軟性を兼ね備えた材料として得られる点である。しかし,さまざまな強度の材料が得られるが,硬組織の代替材料として用いることができるほど高い強度や剛性を実現することは難しい。また,血液や体液と接触することによって,反応に関与する触媒や未反応モノマーが溶出し,毒性を示す場合もあるのが問題点である。一方,生体高分子は,感染症や抗原性のリスクや,物性制御が困難であるなど,合成高分子にない特徴的な欠点がある。本稿では,合成高分子と生体高分子の比較という観点から,高分子系生体材料を概説する。
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