超分子は,複数の分子が共有結合ではない相互作用で集まって,元々の構成分子では発揮しえないような優れた機能を発揮するものと定義され,1987年にはノーベル化学賞の対象となった。20年の時を超えた現在,超分子が再度脚光を浴びるに至っている。以前,基礎化学として評価された超分子が何故今注目されるのか?それは,超分子が形成される過程を通して,分子からナノ,ミクロ,マクロまで,様々なサイズの系が自己組織化的あるいはそれに手を加えたかたちで多彩に形成されうるからであり,その形成能力がナノテクノロジーに必要とされているからである。さらに,超分子構造を介して我々が操作するようなマクロな力と分子の動きが連動することも可能であり,我々の日常生活からナノテクノロジーを支配する夢も見えている。本稿では,近年の超分子の動向をサイズから分類するかたちで概観し,ナノワールドと我々の眼で見ることのできる現実世界の架け橋となっている超分子の姿を紹介する。
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