クロマトグラフィーは電気泳動とともに現代を代表する高性能物質分離手段である。クロマトグラフィーは固定相と移動相をツールとして様々な手法で広範囲の物質群の相互分離に活用されており,産業界においても分析・解析目的から分取目的まで広い用途がある。本稿では,クロマトグラフィーの理解に必要な用語・基礎理論を解説し,液体クロマトグラフィー,ガスクロマトグラフィー及び超臨界流体クロマトグラフィーの要点を記述する。
核磁気共鳴(NMR)の原理と,有機化合物の構造解析において重要な1H NMRスペクトルについて概説する。1H NMRスペクトルでは磁場中の試料に電磁波を照射し,水素原子による電磁波の吸収(共鳴)を測定することで有機化合物の構造に関する様々な情報(官能基の種類,水素原子の数,隣接する官能基の組み合わせなど)を得ることができる。また13C NMRや二次元NMRについても紹介する。
質量分析と一口にいっても,実に多岐にわたる。検出器としての質量分析計でも大きく数種類挙げられるが,イオン化手法は10種を軽く超える。それぞれにユニークな特徴があり,様々な分析のニーズに応えることができる分析法といえる。
高等学校の有機化学分野では,有機化合物の最初の段階で元素分析を通じて有機化合物の組成式と分子式を決定することを学習する。有機化合物の分子式を決定することは,有機化合物の構造を決定する上で,最も重要なステップである。本稿では,高等学校の教科書での取り扱いや実際上の分析方法,あるいは最新の研究現場ではどのようにして分子式が決定されているのかを専門の書籍をわかりやすく引用・要約しながら,簡単に紹介したいと思う。
高校の化学では有機元素分析は分離・精製された化合物の構造決定のための技術として学ぶのであるが,産業界においてはごみ,堆肥,土壌,環境汚染,石油,石炭,バイオマス,高分子化合物,カーボン素材など色々な分野に必要とされている。有機元素分析の原理はC,H,Nが燃えてCO2,H2O,NO2になり化学反応の前後で総質量が変わらないという質量保存の法則に基づいている。それには完全に燃えることが重要で,燃焼条件をコントロールした燃焼法の研究も行われている。化学の定量的な利用法として炭素,水素,窒素の定量における最新の技術と活用について紹介したい。
おいしさに及ぼす物理的因子「テクスチャー」について概説する。和食はごはんとおかずから成り立っており,交互に食べることにより,食事のおいしさが引き立つ。ごはん等の物理的特性がおいしさに大きく影響する食品を味わってきたことから,日本語のテクスチャーを表す言葉が極めて多くなったのかもしれない。和食は日本人の長寿を支えるもので,世界に誇ってよいものと考える。