アメリカにおける障害のある学生の支援体制について筆者の個人的な体験を中心に述べる。アメリカ化学会における障害者委員会のアプローチ,大学における障害学生支援センターの一端を紹介するとともに,アメリカにおける障害者運動,法整備の背景を述べる。また,我が国における最近の障害学生支援体制の整備の背景にある国連の障害者権利条約,2016年4月施行の障害者差別解消法についても指摘する。
視覚障害者の立場から見た場合,化学あるいは生命科学現象を聴覚を利用してとらえたり,対象に触れて体験することが重要であるが,化学構造式は,それが画像情報であるために,視覚障害者にとってアクセスしにくい分野であった。筆者は自らの経験を基に視覚障害者自らによる構造式描画や,パソコンの出力画面やスキャンされた画像から化合物名とそれ以外の文字を一括して読み上げるシステムについて検討している。本稿では,これらの描画法や認識法について解説するとともに,関連するいくつかの知見も紹介する。
バリアフリーの問題を考えるうえでは,「障害とは個人の中に宿る特徴である」とみなす医学モデルではなく,「障害とは主流派向けにデザインされた社会と少数派の身体との間に生じる摩擦である」ととらえる社会モデルの視点が欠かせない。教育や研究といった,学知の生産及び授受の現場がバリアフリーになることは,少数派にとって必要不可欠なだけでなく,健全な学知の発展にとっても必要不可欠な条件である。
ウメ加工品の食味や香りは原料果実により左右されることから,筆者らは原料の違いと加工品品質との関係について梅酒を中心に調査した。その結果,熟度や大きさ等により食味成分や保健機能にかかわる有用成分量が大きく変動することを明らかにするとともに,これら成分量が多くなる原料果実の選び方や加工方法を明らかにした。
群馬県には農産物でも工業製品でも全国上位に位置づけられるものが少なくないが,なかでもこんにゃくは,そのほとんどが群馬県で生産されているといっても過言でない。その主成分であるグルコマンナンは,主にグルコースとそのジアステレオマー*1であるマンノースからなっている。両者がβ-(1→4)結合して主鎖を形成し,一部β-(1→3)結合やβ-(1→6)結合による枝分かれ構造を有する。そこへ水酸化カルシウムなどを添加することで,本文に述べるようなメカニズムで凝固する。カロリーの観点からは栄養価はなく,弱酸性~中性の食品が多い中で珍しく塩基性で,食感を楽しむ食品であることなど,世界的に見てもユニークな食品といえる。製造方法としては,コンニャク芋(生芋)からの工程と,精粉からの製造工程とがあり,学校や一般家庭でも同様の方法で作ることができる。こんにゃくはその試作やpHによる影響などを通じて,身近な教材としても多くの可能性を秘めている。
曜変天目は世界に3碗しか現存せず,そのすべてが,国宝に指定されている。宋時代に建窯で焼成されたもので,南宋の宮廷でも使われ,日本には室町時代にもたらされ,徳川将軍家にも伝えられた。この曜変天目の釉上に丸い斑文があり,その周囲が青く光り輝くのを特徴としている。この青く見える部分は固有色ではなく,構造色と考えられ,現在その解明が進められている。