金属の腐食反応は,金属のイオン化(酸化反応)と環境中の酸化剤の還元反応がカップルして進行する酸化還元反応である。本稿では,金属の腐食反応とその後の“さび”(腐食生成物)の形成過程について,鉄と銅を例にして概説する。
中学・高校の理科教科書の電気化学関連箇所は,戦後70年以上も「非科学」から脱していない。その根源は,「異種電荷の引き合いが電気分解を起こす」という途方もない誤解だろう。また,複雑な現象あれこれを伴う「ボルタ電池」は,中学校理科の導入素材として適切ではなく,ダニエル電池だけ扱えばよい。
有機化学反応を理解するには,そのしくみ(反応機構)を理解するのが効果的である。本稿では高等学校で詳しく教えない有機化学反応の機構について,大学の基礎的な有機化学の講義で触れる範囲から,高校生には難解と思われる4つのテーマ(アルケンへの臭素の付加,マルコフニコフ則,ザイツェフ則,芳香族求電子置換反応とその配向性)について解説する。
一口にペーパークロマトグラフィーといっても,用いる展開溶媒によって分離の機構は異なる。分離条件の最適化を図る際には,分離機構に対する理解が必要である。ペーパークロマトグラフィーは,簡便であることと材料が廉価であることが魅力であるが,必ずしも分離能が高いわけではないので,とくにデモンストレーションには,より分離能の高いTLCの利用も検討すべきである。
牛乳や雲の白色がどうして生じるかを説明し,夕焼けや空の青色の原因である光の散乱によって説明できることを示す。光が波であることを説明した後,白色光源である太陽,ハロゲンランプについて紹介し,白色と感じるのは人間の眼の構造が重要であることを示す。光の波長と比較して粒子の直径が小さいときはレイリー散乱で扱えるが,そうでない時はミー散乱を考えなければならない。他にシロクマの毛や酸化チタン(Ⅳ)粉末の白も同様に説明できる。酸化チタン(Ⅳ)粉末については不規則系における波の局在化現象であるアンダーソン局在の研究に用いられ,光の波がどのような状態になっているかの理解が進んでいる。
自然界には,大きく分けて二種類の発色方法がある。染料や顔料を用いた発色と,光の波長サイズの微細構造を利用した発色である。人類は,多くの染料や顔料を自然界から集め,それを人工的に作る方法を身につけてきた。そのおかげで,現在の我々の生活は様々な色にあふれた豊かな環境にある。しかし,21世紀になってからは,人間や環境に対して,より負荷の低い安全な素材を用いた,高耐久性,高機能性を有する色材が求められるようになり,微細構造を利用した発色材料,つまり,構造発色性材料が注目されている。本稿では,自然にある構造発色性材料を取り上げ,これまでにあまり理解されていなかった構造発色性について説明する。
地球上のあらゆる環境には微生物が生息している。私たちの腸管内も例外ではなく,むしろこの場所はあらゆる環境中で最も高密度に細菌が生息している場所である。これらの細菌集団は腸内フローラと呼ばれ,ヒトの健康維持・疾患予防に重要であるが,そのバランスが崩れると様々な疾患につながることが近年明らかになりつつある。したがって,私たちが自身の腸内フローラを意のままに制御することが可能になれば,病気を未然に防ぐことで健康長寿社会を実現できるだろう。