積極的な学校や教員ほど生徒が行う化学実験を多く取り入れている。それと同時に化学実験には様々な観点からの危険性がつきまとうものでもあり,生徒が安全についての正しい知識を身につけ,実験器具や試薬を適切に取り扱えることも大切である。本稿では高等学校の化学実験から選んだ,消防法で定められた危険物*1としての物質をピックアップして,それらがなぜどのように危険なのか化学的な理解を深め活用するための説明を述べる。
ドラフトチャンバーは実験作業で使用する最も一般的な排気フードの1つである。古くから実験室で一般的に使用されている装置であり,排気と言う目に見えない機能を主とする装置であるがゆえにその進化,進歩があまり理解されていない部分がある。実際の製品を例にそれを説明することで,より良い実験環境の構築の一助としたい。
生徒に実験を行わせる上での安全管理は,化学教師にとって永遠の課題である。これまでも多くの先生方が,実践経験に基づいた事故防止の方法をまとめられてきた。本稿では,先輩教師の方々のお知恵を拝借しながら,安全に留意した実験指導を行うために,中高の化学教師に求められる授業力を考える。
「酵素」という単語は一昔前に比べて健康食品の売り場や新聞広告,テレビのコマーシャルなど私たちの日常で見かけることがとても多くなった。この酵素は実は,私たちの体の中や様々な生物の体の中で起こる生体化学反応を担っている。そして,ヒトの体の中では数千種もの酵素が存在しており,私たちが生きていくうえで重要な化学反応を体内で行っている。酵素は生体触媒とよばれ,無機触媒とは異なり常温下など穏やかな環境でも触媒として働く非常に便利なタンパク質である。
ヘムと呼ばれる鉄ポルフィリン錯体を補因子として有する一連の金属酵素は,生体内で多種多様な化学反応を触媒する。近年,様々な金属酵素の構造と反応機構の解明が進み,金属酵素の有用性を非天然の化学反応にまで拡張しようとする試みも数多く実施されている。そのアプローチの1つとして,人工的に合成した非天然の金属錯体を補因子としてタンパク質と組み合わせた「人工金属酵素」が近年,注目を集めている。生体系がこれまでに獲得することが不可能であった金属種から構成される錯体を,有機合成化学的な分子設計をもとに合成し,タンパク質と融合させることで,人工金属酵素は,天然に見られない新規の,あるいは天然を凌駕する化学的機能・反応性を発揮する。
発熱反応のスケールアップでは,冷却が難しくなり蓄熱がおこることがある。蓄熱昇温による爆発危険性はスケールアップに伴った代表的な危険性である。本稿では,蓄熱が生じる機構や予期しない発生ガス量や副生成物量の増大による危険性とその対策について述べる。