サイエンスコミュニケーションをご存知の方は多くても,それを学生が行っていると知る方は少ないのではないだろうか。そんな学生によるサイエンスコミュニケーション活動の紹介と,それを振興しようと活動しているNPO法人サイエンスリンクの紹介をする。
東京大学CASTは科学の面白さを多くの人に伝えることをモットーとしたサークルである。活動の中心軸となっているのは年間100回以上行われる出張科学イベントである。そのほかにも活動の形態は多岐にわたっており,SNSを利用した実験動画の配信などの取り組みも行われている。
東京工業大学公認サークル東工大ScienceTechnoは,小学校や公民館などで年間約60回の科学実験・工作教室の企画・運営を行っている。科学や技術の楽しさを多くの人と分かち合うことを活動の目的としており,特に子供が科学の不思議に触れる機会を作ることで,科学を好きになるきっかけとなることを目指している。
首都大学東京の化学実験ボランティアサークルTMU-SFCは,小学校や科学館における「出張実験」や本学実験室での「体験!化学実験」を実施している。実験を通して,より多くの人に化学の面白さを体感してもらうことを目標に,子供たちが化学とふれあう機会を提供している。本稿では活動の概要と実験の一例を紹介する。
子供たちに科学の楽しさを伝えたい! そんな想いをもった東京理科大学生98人が集まった学生サークルがある。そんな東京理科大学サイエンスコミュニケーションサークルchibi lab.を紹介する。
「東海大学サイエンスコミュニケーター」は,理科離れを防ぎ,科学の楽しさを通して人と人とのつながりを作ることを目標とした学生プロジェクトである。これまでに,全国各地で様々なサイエンスコミュニケーション活動を行ってきたが,その代表例として本稿では本プロジェクトが独自に企画・実施している「世界一行きたい科学広場in湘南」という科学イベントを紹介する。これは,研究者やサイエンスコミュニケーション団体と接する機会を提供し,子どもたちに科学を身近に感じてもらうことを目的とした企画である。
訪問科学実験は,小中学校をはじめとする地域からの依頼を受けて先方に出向き,子供たちと科学実験を楽しむ学生主体の自主的活動である。将来,教員となることを目指す学生が,子供たちとふれあい,子供の気持ちや行動を理解する能力を高め,理科について正しい知識を身につけ,面白さや楽しさを子供たちに効果的に伝えることのできる能力を育成することとともに,地域へ貢献することを目的としている。
長岡技術科学大学Technical Education Circle(TEC)は,青少年の科学技術教育の推進を目的に活動する学生サークルである。TECは長岡市内を中心に主に新潟県内で実験教室や工作教室を開催し,子どもたちに科学の楽しさを伝える活動を行っている。本稿では,その取り組み内容について紹介する。
高校の化学実験で電池作成を行うことは多い。電池とは酸化還元反応を利用し電気エネルギーを取り出す装置であり,高校の授業では酸化・還元の授業の延長線上で実験を行うことが考えられる。本稿では,電池作成の歴史や高校でよく行う電池の実験について記述し,授業や実験時の工夫や注意点を中心に説明する。また発展的な内容についても触れたい。高校でよく行う実験については,ダニエル電池やボルタ電池,鉛蓄電池,マンガン乾電池の作成時の工夫や注意点について触れる。発展的な内容については,燃料電池やリチウムイオン電池などについて触れる。
リチウムイオン電池は小型・軽量化を実現した二次電池であり,現在のモバイルIT社会の実現に大きな貢献をしてきた。現在ではほぼすべてのモバイルIT機器の電源として世界中で用いられている。このリチウムイオン電池の市場状況,電池の仕組み,特徴,構成材料,電池構造,電極構造を解説する。こうしたモバイルIT用途分野(小型民生用途)においての25年以上の市場実績により,電池性能の向上,信頼性の向上,コストダウンの実現がなされてきた。こうした市場実績によりリチウムイオン電池は車載用(電気自動車用)という次の転換期を迎えている。
反応によって化学製品を製造する場合,反応器からは求めようとする製品の他に副生物や未反応の原料が出てくる。したがって,製品を得るためには分離精製が必要になる。分離操作の中で工業的に最も使用されている蒸留について,そのしくみと蒸留塔について概説する。
山梨県の増富温泉の泉水中にはラドン222以降のウラン系列の核種が含まれている。本研究では,粉末にしたゼオライトを用いて,泉水中の鉛214やビスマス214などを分離し,ゼオライト上でそれらの核種が時間とともに減衰する様子を,安価な測定器を用いて簡単に確認できる実験法を開発した。本実験で扱う放射性物質の量はごく微量で,また酸やアルカリのような危険な薬品を一切使用しないので,学校現場での活用が期待できる。