自動車産業の揺籃期に蒸気自動車,電気自動車および内燃機関自動車という動力原理の異なる三種類の自動車が誕生する歴史において,科学,中でも化学の原理や化学者たちがその誕生にどのように貢献してきたのか,三種類の自動車の誕生の経緯と重ね合わせて,化学の貢献の歴史を解説する。
世界的な環境規制強化を受けた自動車軽量化を目的に,自動車部品へのプラスチック材料の適用が加速している。本稿では自動車に採用されている代表的なプラスチックの高分子化学的な特徴と自動車部品の応用事例を具体的に解説する。また軽量化の切り札と称されている,炭素繊維強化プラスチックCFRPの特徴とその成形法について,さらには電気自動車(EV)駆動モータが,プラスチック材料に求めている材料機能の事例を紹介する。
カーボンニュートラルに向けて注目されているのが,全固体リチウム電池である。液体電解質ではなく固体電解質を用いるこの電池は,大きな電池容量や高出力,そして高い安全性などの利点を有し,電気自動車への搭載が期待されている。現在,硫化物や酸化物の固体電解質を活用した電池研究が世界中で活発に進められている。本稿では,全固体リチウム電池の特徴や,その実用化によって我々の生活がどのように変わるのか紹介する。
分子間力は,イオン結合,共有結合,金属結合など原子間の結合に比して,高等学校「化学」での扱いはさほど大きくない。しかし,物質の性質を説明する上で分子間力の理解は重要である。そこで本稿では,物質の性質と分子間力の関わりについて,高等学校「化学」で扱われるものを中心に解説を試みる。
超分子は,個々の分子が様々な分子間力(非共有結合)によって自発的に相互作用した集合体である。古くは界面活性剤による泡(ミセル)の形成や細胞膜表面の解析などで研究されてきた。個々の分子の性能を“超える”超分子は,分子認識から分子マシンへ,そして,生体組織(細胞膜やDNA,タンパク質)を模倣したナノ構造体から新たな人工超分子システムの開発へ,大きく発展を遂げている。
内孔を持つ環状分子に機械的に分子が絡み合った知恵の輪のようなインターロック分子をいかにして合成するか。この難題を解決したのは分子間力であった。本稿では分子間力を用いたインターロック分子の合成と構造制御について紹介する。
光ラジカル開始剤である2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドとブラックライトによる近紫外光を用いて,植物油を迅速に空気酸化するシステムを開発した。また本システムを活用して,UVカットクリームや褐色ビンによる遮光について学習する実験教材を開発した。