日本東洋医学雑誌
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43 巻, 1 号
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  • とくに術前投与効果と中医弁証の検討
    薄場 彰, 高 令山, 元木 良一
    1992 年 43 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    術後肝障害に対する小柴胡湯の効果, 特に術前投与について検討し, さらに中医弁証的考察を加えた。対象は呼吸器および消化器外科患者66例で, 小柴胡湯5g/dayを術前のみ投与したI群 (16例), 術後も投与したII群 (17例) で, 臨床症状, 血液生化学検査, 中医弁証の三面より対照のIII群 (33例) と比較し以下の成績を得た。1) 臨床症状: 全身倦怠感, 食欲不振, performance status いずれもII群が最良でI群, III群の順に不良となった。2) 血液生化学検査: III群では術後GOT, GPT, LDH,γ-GTP, LAP, TB, DBが上昇し遷延したが, I・II群では上昇しないか, 上昇しても速やかに正常化した。3) 中医弁証: 術前の証の36.4%が術後転化したが特にII群は47.1%と高率で脾虚証への転化が多数みられた。
    以上より小柴胡湯は術後肝障害軽減に有効で術前投与でも効果が期待できた。
  • 喜多 敏明, 土佐 寛順, 寺澤 捷年, 小林 豊, 金木 英輔
    1992 年 43 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    胃X線造影撮影の胃角の高さと漢方診断学的症候ならびに有効方剤との間連性について検討した。対象は人間ドックを受けた健常人744例 (健常群) と患者270例 (患者群) である。両群で男女別に胃角の高さを比較すると, 男性は女性に比べて胃角が高く, 患者群は健常群に比べて男女ともに胃角が低い傾向を示した。年齢, 肥満度, 血中アルブミン値, 総コレステロール値, 血色素量との関連について検討したところ, 胃角の高い例は肥満度と総コレステロール値が高値を示した。患者群において腹力, 脈力と胃角の高さとの関連をみると, いずれも有力な者は胃角が高く, 軟弱な者は胃角が低い傾向がみられた。また, 気虚スコアーが高値の者は胃角が低かった。さらに有効方剤の検討により, 胃角の高さが証の要素である虚・実と関連する可能性が示唆された。
  • 清熱薬の応用
    尾崎 哲, 下村 泰樹
    1992 年 43 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    自律神経症状のめまいの治療薬として緩和精神安定剤等が用いられるが, 副作用のため増量が困難な事がある。このため漢方方剤の可能性を探るべく, 鎮静作用を持つ清熱薬の有用性の検討を行った。この結果,黄連解毒湯, または三黄瀉心湯による4週後のめまいの有効率は80% (75.0%) と高値を示した。効果発現は, 約1週後と速効性であったが, 脱力感等の副作用は認めなかった。有効領域は中間証領域に存在することが考えられた。
    西洋医学では, 自律神経症状のめまいは, ストレスが関与するとされており, 今回の投与試験での高い有効性は, 清熱薬の交感神経系に対する鎮静作用に拠った可能性が考察された。東洋医学では, めまいは水毒と関連するとされている。このため我々は水毒の治療薬である五苓散を投与したが, 有効率は66.7%と清熱薬に及ばなかった。以上の知見から, 自律神経症状のめまいは〈気の異常〉を一次的なものとし, 二次的に水毒等, 他の病態を併発した可能性が推測された。
  • 柴原 直利, 桑原 泰則, 加藤 正夫, 島田 多佳志, 檜山 幸孝, 土佐 寛順, 寺澤 捷年
    1992 年 43 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    脳血管障害後遺症に伴う痛み・しびれ感に対し和漢薬随証治療を試み, その効果と有効処方について検討した。対象は当科を受診した痛み・しびれ感を主訴とする脳血管障害患者38例である。
    結果は, 1) 著効13例 (34.2%), 有効11例 (29.0%) と対象症例38例中24例 (63.2%) に症状の改善が認められた。2) 改善症例の背景には特徴的なものは見出されなかった。3) 処方の解析では, 柴胡剤と黄連解毒湯あるいは柴胡剤と駆〓血剤との併用が有効であった症例が多かった。4) 部位と処方との解析では, 顔の症状に対しては黄連解毒湯と他剤との併用が有効であり, 上肢の症状に対しては駆〓血剤と他剤との併用が有効である傾向が認められた。以上の成績より, 脳血管障害後遺症に伴う痛み・しびれ感に対し和漢薬随証治療が有用であり, その症状の部位が方剤を選択する上で一定程度の示唆を与えるものであることを考察した。
  • 金 充哲, 松川 義純, 新井 善正, 長瀬 千秋, 松本 克彦
    1992 年 43 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    我々の施設における, 慢性関節リウマチ (RA) に対する治療状況と漢方治療の有効性について調査検討を行った。96名のRA患者に対し, 八綱・気・血・水弁証に基づき漢方薬を投与した。漢方のみ投与された者の割合は約30%で, 他の者には非ステロイド系消炎剤 (NSAID), 副腎皮質ステロイド剤, 遅効性抗リウマチ薬 (DMARD) を単独あるいは複数で投与した。治療開始後3ヵ月後に, 痛み・腫脹・疲れに関する自覚症状の程度と, 血沈値・CRP・RFなどの臨床検査値について調査を行った。自覚症状はアンケート調査を行い, 回答が得られた50名に関しては何れの項目にも改善傾向がみられた。臨床検査値は一部をのぞいて有意差が認められなかった。漢方処方は, 越婢加朮湯, 麻杏〓甘湯, 桂枝加朮附湯などの〓湿解表剤が多く用いられた。漢方治療は, 短期的にみた場合, 消炎効果よりも自覚症状の改善という意味において有効であると考えられた。
  • 漢方随証治療の効果
    伊藤 隆, 寺澤 捷年, 三潴 忠道, 嶋田 豊, 土佐 寛順, 中神 和清
    1992 年 43 巻 1 号 p. 43-53
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    難治性喘息23例に対する長期漢方随証治療の効果を検討した。なお一著効例についての約7年間の経過を提示した。治療成績は発作重症度および副腎皮質ステロイド剤治療点数により評価した。治療期間2年以上の群 (18例) では治療2年時で, 2年未満の群 (5例) では調査時で, 治療効果をそれぞれ検討した。重症度の評価では全例が重症であったが, 治療後は軽症2例, 中等症17例, 重症4例 (死亡2例を含む) となった。また全例に副腎皮質ステロイド剤が併用されていたが, 治療の結果, 中止6例, 減量9例, 不変4例, 増量4例となった。臨床効果は改善15例 (65%), 不変3例 (13%), 悪化5例 (22%) と判定され, 高い改善率のあることが明らかとなった。使用した漢方方剤を遡及的に検討した結果, 治療期間2年以上の改善例14例のうち11例において茨苓四逆湯あるいは八味地黄丸を主方とするものであることが判明した。
  • 橋爪 圭司, 山上 裕章, 古家 仁, 奥田 孝雄
    1992 年 43 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    慢性疼痛患者では, 痛みに反応して生来の性格偏位が増幅され, 神経症を併発している場合が多い。難治性の神経症の一型に, 心気症傾向とヒステリー傾向が高い型 (転換V型) がある。元来女性に多い型であるが, 男性にもみられ, 治療抵抗性で抗不安薬等では不十分なことが多い。しかし女性では加味逍遥散がしばしば奏効する。そこで, 転換V型を示す男性の慢性疼痛患者で, 抗不安薬等の効果に限界があった15例 (平均54.3±13.7歳) に対し, 加味逍遥散エキス顆粒剤 (1日量7.5gを4週間) を投与し, その有効性を検討した。その結果, 有効率は33%で, 全体では「やや有効」であった。臨床効果は鎮痛薬としてではなく, 抗不安薬様の作用として現れた。無効例は性格偏位のポイントが高い例に多く, 神経症の重症度が加味逍遥散の効果に反映された形となった。眠気, ふらつき等の副作用なしに, 抗不安作用を期待できる点が大きな特長であった。
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