日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
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59 巻 , 2 号
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教育講演
  • 酒谷 薫
    59 巻 (2008) 2 号 p. 181-191
    公開日: 2008/09/18
    ジャーナル フリー
    中国伝統医学(以下,中医学)では,陰陽五行学説を基礎として人体機能を考えている。陰陽五行学説は古代中国の自然哲学であり,難解で不可解なものとして日本漢方では重視されてこなかった。しかし,陰陽五行学説を現代科学の視点から見直してみると,両者には共通している点が少なくない。本講演では,陰陽五行学説の考え方を現代科学の観点から読み解き,これを基にして中医学の人体機能や病態に対する考え方について解説する。
    1.陰陽五行学説と複雑系
    陰陽五行学説は陰陽学説と五行学説から成り立っている。まず陰陽学説であるが,太極図の中にその意味することが全て示されている。太極図で注目すべき点は,白(陽)と黒(陰)の中に反対要素である極化点が存在することである。これにより人間を含めた世界というものは無限に陰陽に分割され,その全ての部分が太極図と同じ構造を持つことになる。すなわち,部分が全体を示すというフラクタルな世界観を示している。中医学では,舌や耳等の身体の一部分に全身状態が反映されていると考えるが,もし人体がフラクタルな構造を持つと仮定するとこの考え方も理解できる。一方の五行学説は,中医学における臓器機能の基礎となっている。五行学説に従って臓腑(五臓)は木・火・土・金・水の5種類に分類され,各臓腑の間には相生(=positive feedforward)と相克(=negative feedforward)という力学的関係が存在し,その相互作用により全体の機能バランスが維持されていると考える。興味深いことに,この考え方はカオス理論に基づいた生体モデルに酷似している。このように陰陽五行学説の考え方は,現代科学の複雑系理論に通じる点が少なくない。
    2.中医学における人体機能と病態
    中医学における臓器の特徴は,脳が臓腑(五臓六腑)に含まれていない点である。すなわち中医学では,脳のさまざまな機能を五行学説に従い五臓六腑や関連する器官に分散させているのである。このため脳疾患は単一臓器の障害ではなく,上述の臓器間の機能バランスの障害による全身性疾患と考えられている。もう一つの特徴は,陰陽学説のフラクタルな世界観によりヒトと環境を一体として捉えている点である。つまり西洋医学では,ヒトは皮膚などのさまざまな「膜」により外界より分離した環境を保つことにより生命活動を維持していると考えるが,中医学では,ヒトは環境と一体化して存在し,ヒトの機能は環境から強い影響を受けると考えられている。
    3.まとめ
    陰陽五行学説に基づいた中医学の人体機能に対する考え方は,われわれの西洋医学と異なるが,非科学的なものではなく現代科学にも通じるユニークなものである。中医学と現代科学を融合させた新しい医学の構築に向けて,伝統医学研究は,その治療効果に加えて生命観に関する理論的研究も重要と思われる。
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学会シンポジウム
原著
  • 木村 容子, 清水 悟, 田中 彰, 鈴木 まゆみ, 杵渕 彰, 稲木 一元, 佐藤 弘
    59 巻 (2008) 2 号 p. 265-271
    公開日: 2008/09/18
    ジャーナル フリー
    抑肝散およびその加味方の有効な頭痛の患者タイプを検討した。対象は,随証治療にて抑肝散およびその加味方を投与した頭痛の患者45人(男性6人,女性39人,中央値38歳,範囲25-68歳,片頭痛34例,緊張型頭痛6例,混合型頭痛5例)とした。年齢,性別,身長,体重と,初診時に認められた体質傾向と随伴症状からなる31項目を説明変数とし,頭痛改善の有無を目的変数として,多次元クロス表分析により最適な説明変数とその組み合わせ検討した。この結果,単変量解析では,抑肝散による頭痛改善に有効な情報は,「眼痛」,「背中の張り」,「目の疲れ」,「イライラ」の順であった。多変量解析では,「眼痛」,「イライラ」,「背中の張り」の組み合わせが,抑肝散による頭痛改善を予測する一番よいモデルとなった。古典的考察を加え,抑肝散およびその加味方は「肝」と関連する頭痛において治療効果を期待できると考えられた。また,抑肝散およびその加味方は,呉茱萸湯で軽快するもののストレスによって再び増悪する頭痛にも有効で,ストレスなどの頭痛発作の誘因や増悪因子を抑えるはたらきがあると推察された。従来,抑肝散には緊張興奮型などの腹証が重要視されてきたが,本研究では興味深いことに,むしろ背部所見に頭痛改善と強い相関を認めた。これまで抑肝散に関する背部所見の有用性について述べた報告はなく,今後は抑肝散証では背診も重要となることが示唆された。
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  • 假野 隆司, 土方 康世, 清水 正彦, 河田 佳代子, 日笠 久美, 後山 尚久
    59 巻 (2008) 2 号 p. 273-277
    公開日: 2008/09/18
    ジャーナル フリー
    当帰芍薬散の免疫不育症への臨床的有効性を診断統計学的に考察した。主対象は12週以内の反復流産症例で,3回目の妊娠成立後当帰芍薬散療法にもかかわらず初期流産に終わり,流産胎児の染色体核型が46,XXまたは46,XYを確認した38例とした。コントロールは3回以上の初期流産の既往を有する244例であり,両者の自己免疫異常,同種免疫異常の診断率を統計学に検定した。両不育症の診断率には有意差が認められなかった。この結果,当帰芍薬散は免疫不育症に対しては臨床的に有効ではないと考えられた。当帰芍薬散は黄体機能不全妊娠,子宮の過緊張による流産を阻止すると推察された。免疫不育症の漢方療法は柴苓湯療法が合理的である。
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  • 御影 雅幸, 遠藤 寛子, 香月 茂樹, 垣内 信子
    59 巻 (2008) 2 号 p. 279-285
    公開日: 2008/09/18
    ジャーナル フリー
    前報で,釣藤鉤の薬用部位に関する歴史的変遷を調査した結果,古来の原植物はアカネ科のカギカズラUncaria rhynchophylla (Miq.) Miq. であると考証し,また薬用部位は明代前半までは藤皮,明代後半からは現在のような鉤つきの茎枝由来に変化したことを明らかにした。薬用部位が変化した理由として明代の本草家が「藤皮よりも鉤の方が効力が強いこと」を挙げているので,本研究では日局「釣藤鉤」の規定に基づき,日本産カギカズラの藤皮と鉤の総アルカロイド(リンコフィリン及びヒルスチン)含有率を比較した。その結果,藤皮の方が有意に高いことが明らかになり,アルカロイド含量で評価する限りは藤皮の方が薬効的に優れていると判断された。
    近年の研究では,リンコフィリンには学習記憶改善作用,ヒルスチンには血圧降下作用などのそれぞれ異なった作用が知られている。このことから,日本産カギカズラにおいては,藤皮と鉤では成分組成にも違いが見られるため,薬効にも違いがある可能性が考えられ,今後の薬理学的な研究が待たれる。
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臨床報告
  • 森脇 義弘, 杉山 貢
    59 巻 (2008) 2 号 p. 287-290
    公開日: 2008/09/18
    ジャーナル フリー
    鍼治療後の両側気胸症例を経験した。58歳の女性,体調不良に対し頸部から腰部にかけて約20箇所の鍼治療直後に胸部違和感,呼吸困難感自覚し,救急搬送された。意識清明,血圧200/110mmHg,脈拍数151回/分,呼吸数36回/分,苦悶様顔貌,発汗著明であったが,チアノーゼや気道狭窄音,呼吸音の左右差はなく,心臓超音波,心電図で異常なく,血液検査でも白血球上昇以外異常はなく,動脈血ガス分析(酸素10l/分)はpH7.215,Pao2118.7mmHg,Pco263.9mmHgであった。前医鍼灸院から情報を得て,胸部単純X線検査で両側気胸と診断,両側胸腔ドレナージを施行した。血液ガス分析はpH7.326,Pao2181.6mmHg,Pco242.8mmHgと改善,症状も消失し,第13病日退院となった。
    考察・結論:気胸など鍼治療の合併症が生じると鍼治療担当者とは別の医師が治療を行うことになるが,鍼治療合併症に対する対応体制は未発達である。今後は,鍼治療時のインフォームドコンセントの充実と合併症時の鍼灸治療者と救急医療機関との連携あるシステム構築が必要と思われた。
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  • 門倉 義幸, 石田 良, 柳 裕一郎, 門倉 淳二, 世良田 和幸, 池田 尚弘, 洲崎 春海
    59 巻 (2008) 2 号 p. 291-295
    公開日: 2008/09/18
    ジャーナル フリー
    西洋医学的治療で治癒困難であった末梢性眩暈症患者7例に対し鍼灸治療を行い臨床的効果を検討した。観察期間は6~15カ月で男女比は1対6,平均年齢44.7歳(29~73歳)であった。施術方法は鍼灸治療(置鍼+温灸)を4回以上施行,施術前後に行った日常障害度アンケート調査結果を用いて効果判定を行った。効果は治癒・軽快・不変・悪化の4段階とした。治癒1例,軽快5例,不変1例であり85%に有効性を認めた。無効例を1例に認めたが悪化するものは認めず,鍼灸治療による副反応は認めなかった。難治性の眩暈症に対して鍼灸治療は一定の効果を示したことから前治療として抗眩暈薬等の西洋医学的治療が無効の症例では代替治療として本鍼灸治療を施行することで治療効果が期待できる。
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  • 関矢 信康, 並木 隆雄, 笠原 裕司, 大川 徹, 地野 充時, 大野 賢二, 平崎 能郎, 寺澤 捷年
    59 巻 (2008) 2 号 p. 297-301
    公開日: 2008/09/18
    ジャーナル フリー
    喉頭肉芽腫は声帯後部に生じる非特異性肉芽腫性病変で発症要因が多岐にわたるとともに確立された治療方針がないことから,再発例が多く治療に難渋する疾患とされている。西洋医学的治療に抵抗性で再発を繰り返した特発性喉頭肉芽腫に解労散が奏効した一例を経験した。症例は30歳,男性。外科的切除後に再発し,再度の外科的切除とレーザー焼灼およびプロトンポンプ・インヒビター,トラニラスト内服,マクロライド少量持続内服療法,ステロイド吸入などが施行されたが再発し漢方治療を併用した。半夏厚朴湯,柴芍六君子湯および桂姜棗草黄辛附湯では肉芽腫には変化ないため解労散に転方し,その3週間後には肉芽腫は内視鏡にて消失が確認され,その後の再発はない。本症例の経験から倦怠感,体重減少,両側胸脇苦満,両側腹直筋緊張,臍上悸・臍下悸,上腹部を中心とした鼓音の存在などが解労散の使用目標となりうる可能性が示唆された。
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  • 寺澤 捷年, 関矢 信康, 並木 隆雄, 笠原 裕司, 地野 充時, 大野 賢二, 平崎 能郎
    59 巻 (2008) 2 号 p. 303-307
    公開日: 2008/09/18
    ジャーナル フリー
    麗沢通気湯は『蘭室秘蔵』収載の方剤であるが,その治験報告はこれまでに一症例の記載に止まっている。著者らは最近,本方に散風通竅の効能がある辛夷を加味した方剤を用いたところ,40年来,諸治に応じなかった常習性頭痛(65歳・男性),当帰四逆加呉茱萸生姜湯で完治しえなかった気管支喘息(38歳・女性)で著効を得た。また気管支アミロイドーシス(40歳男性)では原疾患の退縮は得られていないが,末梢での酸素飽和度と自覚症状の明らかな改善を見たので,文献的考察等も含め報告する。
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