日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
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61 巻 , 3 号
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会頭講演
  • 石川 友章
    61 巻 (2010) 3 号 p. 267-281
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    古来より悪疫との戦いが東西両医学の最大のテーマであり,細菌学は起炎菌発見と同定法,起炎性の証明,いわゆるコッホの4原則という,近代科学思想の礎である再現性を担保する思想が打ち立てられた。
    しかしながら,感染症を取り巻く主要因子はhost-parasite relationshipとdrugの関係にあったが,薬剤開発に重点が置かれた。他の治療法の多様化にともないcompromised hostの出現で,この考え方では成りたたなくなった。
    臨床医学においては再現性という問題は,背景となる人間という膨大なシステムが関与するために,明快な論理が存在しない。
    漢方医学は人間を対象に治療学を行って来た医学で,システムとしての人間が表現する病態を,六経理論,陰陽虚実による證の把握により,システムとしての治療学が確立されており,その提示されている證よって,再現性の高い治療を行う事ができる。また日本漢方の口訣は先人の経験による治療効果の効率と再現性を高めるためのもので,治療上必要不可欠なバイアスである。漢方というシステム医学としての概念はこれからの西洋医学にも必須の概念になるであろう。
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原著
  • 堂井 美里, 江原 利彰, 五井 千尋, 安藤 広和, 垣内 信子, 御影 雅幸
    61 巻 (2010) 3 号 p. 282-288
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    中国では古来,生薬の目的としている薬効の向上のために煎じ時間の調節を行ってきた。医方書には各処方の煎じ時間を煎液の減少量によって定めている。本研究では,中国最古の医方書である『傷寒論』及び『金匱要略』に収載される「大黄」配合処方の煎じ時間を液量変化から調査した。その結果,大黄の煎じ時間は他生薬と同煎の場合,10,20,30,50分の4群に,後下の場合,1,5,10,20分の4群に分類できた。また,生大黄および修治大黄の煎液を調製し,主成分溶出量の変化を調査した結果,すべての条件で各成分は沸騰後30分で全量の80%以上が溶出された。すなわち,古来,大黄は主成分が全量未溶出である10~30分に調節して煎じる場合と,50分かけて全量が溶出されるまで煎じる場合があったことが明らかになった。一方,後下では煎じ終わる1~20分前に大黄を入れ,成分溶出量を調節していたことが明らかになった。
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  • 鈴木 達彦
    61 巻 (2010) 3 号 p. 289-298
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    『古今方彙』の各種版本における引用の傾向,甲賀通元の編纂の姿勢,および後代の影響について検討した。
    1.甲賀通元以前の『古今方彙』は,『万病回春』を初めとする龔廷賢の医書や,『医学入門』などの新方を中心とした処方集である。
    2.通元は,『刪補古今方彙』,『重訂古今方彙』において,2度考訂している。現在一般的な『重訂古今方彙』は,『万病回春』,『医学入門』,薛己医書等の新方が中心の処方集である。
    3.通元は処方の増補以外に,旧版の出典文献を訂正し,処方名や処方中の薬物や分量を訂正した。
    4.原『古今方彙』は,新方を選集する立場に立って成立した処方集であるが,通元の時代に良質の経験方を選集する見方が加わっている。後の日本漢方では経験方が重視されるが,『古今方彙』はその先駆けと見ることができる。
    5.『衆方規矩』は,基本処方と加減方という体系で治療を組み立てる処方集である。時代が下るとともに同書は『古今方彙』と同じ性格をもつようになる。
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  • 伊藤 隆, 菅生 昌高, 千々岩 武陽, 仙田 晶子, 王子 剛, 海老澤 茂, 大川原 健
    61 巻 (2010) 3 号 p. 299-307
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    患者2530例に対する随証漢方治療の副作用を調査した。503例に569件の味の苦情を含む副作用がみられた。甘草含有方剤は2139例に投与され64例(3.0%)に副作用を認めた。年齢は63.4±13.8歳で全体の54.9±18.1歳より高かった。診断の契機となった症候は,血圧上昇45例,浮腫16例であり,低カリウム血症は5例と少なかった。甘草投与量は,34例にはエキスで2.0±1.0(Mean±SD)g/日,29例には煎薬で2.2±1.1g/日であった。両群の投与期間と回復期間に差はなかった。黄芩含有方剤は1328例に投与され13例(1.0%)で肝機能障害を認めた。黄芩は7例にはエキスで2.3±0.5g/日,6例には煎薬で2.8±0.8g/日が投与されていた。投与期間に有意差はなかったが,回復期間はエキス群69.0±52.5日が,煎薬群22.7±16.0日より長かった。副作用例の大部分で初診時の症状の改善は得ており,当初は証に合っていたと思われる。随証治療においても注意する必要がある。
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臨床報告
  • 荒井 勝彦, 日置 智津子, 張 民浩, 高士 将典, 新井 信, 和泉 俊一郎
    61 巻 (2010) 3 号 p. 308-312
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は33歳,男性。潰瘍性大腸炎による下血の初回発作と再発作において,経時的に病態が変化し,初回発作とは異なる方剤により緩解した症例を経験したので報告する。X年5月,下血にて発症。他施設にて精査し,潰瘍性大腸炎(直腸炎型)と診断され,5‐ASAとステロイド座薬,整腸剤を投与するも緩解せず,漢方治療を希望され,当科受診した。前述した薬に加えて,柴苓湯エキス(9.0g/日)と芎帰膠艾湯エキス(9.0g/日)の併用で下血症状は改善し緩解した。その後,再出血の際に同方剤を用いたが緩解の効果は得られなかった。初回下血発作と異なる点は,先に便が出て,その後に出血した状態(先便後血)であり,“先便後血”症状は『金匱要略』の黄土湯の条文中の“遠血”症状であり,煎剤である黄土湯に処方を変更した。服用1カ月後には下血は少なくなり,服用2カ月後には下血症状は殆んど消失した。大腸内視鏡検査所見でも,直腸の活動性炎症性変化は軽快していた。本症は治療中に有効な処方が変わったことが,病位が変化したと説明できる興味深い症例と考えられた。
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  • 深谷 良, 海老澤 茂, 千々岩 武陽, 王子 剛, 大川原 健, 島田 博文, 伊藤 隆, 仙田 晶子, 中原 朗
    61 巻 (2010) 3 号 p. 313-318
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    経管栄養で嚥下性肺炎を繰り返す患者に対して大建中湯を投与し良好な結果を認めた。症例1は94歳男性,心不全と脳梗塞で入院したが,肺炎を繰り返していた。経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous endoscopic gastrostomy, PEG)後も肺炎を発症したが,大建中湯投与後は肺炎を発症せず,全身状態が安定した。症例2は80歳男性,PEG施行後,重症肺炎で入院した。治療後も嚥下性肺炎を繰り返したが,大建中湯投与で口腔内逆流が消失し,症状の安定を認めた。症例3は85歳男性,心不全と脳梗塞で入院したが,嚥下性肺炎を発症した。経鼻胃管で栄養摂取したが,肺炎を繰り返した。大建中湯を開始後は肺炎を発症せず,状態が安定し転院した。症例4は81歳男性,肺炎と心不全で入院した。食欲不振が強く,経口摂取が困難だったため,PEGを施行した。肺炎を頻回繰り返していたため,予防的に大建中湯を投与した。その後は殆ど発熱を認めず転院した。大建中湯は経管栄養下での後期高齢者の嚥下性肺炎予防に有用と思われた。
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  • 石井 恵美, 及川 哲郎, 五野 由佳理, 小田口 浩, 早崎 知幸, 花輪 壽彦
    61 巻 (2010) 3 号 p. 319-324
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    当帰芍薬散は婦人科疾患を中心に幅広く応用されるが,男性での有効例の報告は殆どない。今回我々は,当帰芍薬散料が有効であった男性の4症例を経験した。症例1は84歳,冷えや瘀血所見を伴うコントロール不良な鼻アレルギー症例に,本方加味が有効であった。症例2は63歳,主訴は気管支喘息,前立腺肥大症,鼻アレルギー。麻黄剤が使用しにくい高齢者の鼻アレルギーなど諸症状に対して,本方と半夏厚朴湯の合方が有効であった。症例3は70歳,主訴は尿蛋白持続陽性。冷え,瘀血,水滞を目標とし,本方加味により4カ月後尿蛋白が陰性化した。症例4は56歳,潰瘍性大腸炎に対し胃風湯加味が有効であったが,経過中血圧上昇を認めた。甘草が入らず構成生薬の類似した本方加味に転方,以後血圧や腹部症状が安定した。吉益南涯は,男性における当帰芍薬散の使用経験を記した。当帰芍薬散の男性症例を検討することで,より応用範囲が広がる可能性がある。
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  • 地野 充時, 石田 厚, 関矢 信康, 大野 賢二, 平崎 能郎, 笠原 裕司, 並木 隆雄, 宮崎 勝, 寺澤 捷年
    61 巻 (2010) 3 号 p. 325-330
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    下腿皮膚潰瘍の原因の一つとして動静脈瘻が知られている。動静脈瘻では患部の静脈圧上昇による末梢組織への動脈血流の低下と静脈血の鬱滞を来し,循環障害による冷感,浮腫,疼痛,皮膚炎,皮膚潰瘍などが生じることがある。症例は32歳女性。1999年頃から両下腿の浮腫,難治性皮膚潰瘍,疼痛が出現。精査により2003年に両下肢動静脈瘻と診断。両下腿の局所療法,鎮痛剤等の対症療法で治療されていたが症状が改善しないため2006年8月当科紹介初診。初診時に当帰芍薬散エキスを投与し,6週間の内服にて疼痛は軽減。その後,全身倦怠感等の気虚の症状に対し黄耆建中湯エキスを,寒冷による疼痛増悪の訴えに対し修治附子末を併用。これにより半年後には難治性皮膚潰瘍が縮小し,鎮痛剤も不要となった。我々が検索した範囲では本症の和漢薬を用いた治療報告は初めてである。本症の治療として和漢薬治療が選択肢となることが示唆された。
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  • 及川 哲郎, 米田 吉位, 玄 世鋒, 猪 健志, 八代 忍, 高橋 裕子, 橋口 一弘, 滝口 洋一郎, 花輪 壽彦
    61 巻 (2010) 3 号 p. 331-336
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    日常診療でめまいを訴える患者は多いが,標準的治療は確立されていない。今回,沢瀉湯の投与でめまいが改善した症例を提示する。症例1は38歳,女性。2年前から船酔いのようなめまいが出現,最近になり悪化した。沢瀉湯を処方,1カ月後めまいは改善した。咽中炙臠を訴えたため半夏厚朴湯加蒼朮沢瀉に転方,約2カ月後めまいはほぼ消失した。症例2は61歳,女性。4カ月前にもめまいがあった。MRIで異常なく症状も軽快していたが,数日前動揺性めまいが出現した。沢瀉湯を処方,1カ月後めまいは消失した。症例3は67歳,女性。2カ月前から仰臥位などで動揺性めまいが出現,良性発作性頭位変換性めまいと診断され投薬を受けたが改善しない。沢瀉湯3倍量を処方,1カ月の服用でめまいは著明に改善し,耳科的検査所見も改善した。沢瀉湯は,西洋医学的治療で改善しないめまいに対しても有効例があり,積極的に使用されてよい処方の一つと考えられる。
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  • 小川 恵子, 関矢 信康, 笠原 裕司, 地野 充時, 来村 昌紀, 木俣 有美子, 奥見 裕邦, 大野 賢二, 並木 隆雄, 秋葉 哲生, ...
    61 巻 (2010) 3 号 p. 337-344
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    防已黄耆湯は,『金匱要略』を原典とする方剤で,方後に「喘する者には麻黄半両を加う」と記されている。我々は,風湿あるいは風水と考えられる慢性咳嗽に対して,防已黄耆湯加麻黄を投与し,奏効した4症例を経験した。これらの症例では,身重く感じる,汗をかきやすい,身体が冷えやすい,という自覚症状と,色白で,右寸口の脈が弱いという他覚所見が共通していた。また,全例で,咳嗽のみならず,随伴症状の改善も認められた。本症例群の検討により,風湿・風水の病態を伴う慢性咳嗽に,防已黄耆湯加麻黄が有効である可能性が示唆された。
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東洋医学の広場
  • 金 璋顯, 石野 尚吾
    61 巻 (2010) 3 号 p. 345-358
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    (社)日本東洋医学会と大韓韓医学会は,日韓両国の伝統医学を代表する機関として,2009年3月29日に日韓学術交流協定を締結させ,調印式を行った。それを契機に両学会を代表して,両会長が記念講演を行った。
    金会長:中国とは異なる独自の伝統医学が紀元前から存在し,例として神農本草経に記載のないヨモギとニンニクを挙げた。中国の三国時代では日・中・韓の医学交流が広範囲に行われた。東医宝鑑の刊行後,韓医学は民衆に根付き,四象医学も生み出され,1876年以降西洋医学の流入により,二元的医療体系が成立し,現在に至っている。
    石野会長:漢方医学は古代中国に源を発するが,特に江戸時代に日本化された医学である。特徴は学より術を重視し,観念的な議論を廃し,実証主義的な立場を主張,腹診法などを発展させた。明治の医療制度改革で西洋医学中心となったのが,昭和になり復活し,西洋医学体系における医療の中で漢方医学を確立するまでの歴史的な概略を述べた。
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学会シンポジウム
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