日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
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64 巻 , 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
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総説
  • 高橋 秀実
    64 巻 (2013) 1 号 p. 1-9
    公開日: 2013/07/20
    ジャーナル フリー
    1990年代に入り,現代免疫学は体内免疫システムを,主として体表面に配置された異物(邪気)に対する記憶形成を伴わない「自然免疫」と血液中を循環し記憶形成をともなう「獲得免疫」に大別し,その認識抗原の実体ならびに機能について研究を展開してきた。一方,2000年以上前に記載された「黄帝内経」には,我々の体内には邪気と闘う「衛気(えき)」と「営気(えいき)」の2つのシステムが構築されており,前者「衛気」は体表面に配置され発汗調節を担い,「濁」である物質群を制御するのに対し,後者「営気」は「清」と呼ばれる純化された物質を選別し「栄養素」として「血管」内に送り込み,血液の運行を含め全身を統御するものであることが記載されている。本総説では,以上の点を踏まえ,「衛気」と自然免疫;「営気」と獲得免疫との関連性について概説し,「東洋医学」と「西洋医学」とを統合した新たな「医学」を模索する上への礎としたい。
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  • 小野 孝彦
    64 巻 (2013) 1 号 p. 10-15
    公開日: 2013/07/20
    ジャーナル フリー
    近年,糖尿病性腎症,慢性腎炎,腎硬化症など各種の腎疾患をひとまとめにして慢性腎臓病と呼んでいる。レニン・アンジオテンシン系に働く治療薬は慢性腎臓病治療の第1選択とされているが,七物降下湯は併用効果が期待される。基礎的研究では糖尿病性腎症の進展に八味地黄丸の抑制効果がある。近年の研究から腎炎や一次性ネフローゼ症候群において,柴苓湯はステロイドや免疫抑制薬の減量効果が期待される。慢性腎炎やネフローゼ症候群の背景となる病態として,柴朴湯の治療は頻回の上気道炎を減少させ,柴苓湯はアレルギーの関与が考えられるネフローゼ症候群に対して効果的な場合が見られる。小児の IgA 腎症に対して,前向きの臨床試験による柴苓湯効果のエビデンスも得られている。透析に至る前の慢性腎不全に対して温脾湯は,透析導入への延長効果が知られている。五苓散は血液透析時の透析困難を改善し,腹膜透析においては腹膜線維化の問題点に対して柴苓湯の改善効果が期待される。
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臨床報告
  • 犬塚 央, 田原 英一, 大田 静香, 土倉 潤一郎, 大竹 実, 岩永 淳, 矢野 博美, 木村 豪雄, 三潴 忠道
    64 巻 (2013) 1 号 p. 16-21
    公開日: 2013/07/20
    ジャーナル フリー
    今日,急性熱性疾患において陽明病期の病態を見ることは稀である。我々は,腹満,便秘を目標に大承気湯を投与し,解熱の得られた3症例を経験した。
    症例1:82歳男性。ウイルス感染症疑い。38 ℃台の発熱が持続。腹満,便秘,喘鳴を目標に大承気湯を投与したところ,多量の排便とともに腹満が消失し,36 ℃台へ解熱。さらに喘鳴も消失し,低酸素血症が改善した。
    症例2:67歳女性。中枢性発熱疑い。38 ℃台の発熱が持続。腹満,便秘を目標に大承気湯を投与したところ,多量の排便とともに腹満が消失し,36 ℃台へ解熱した。
    症例3:43歳男性。周期性好中球減少症に伴う麻痺性イレウス。発熱後3日目より著明な腹満,便秘と腹痛が出現。大承気湯を投与したところ,多量の排便とともに腹満,腹痛が消失し,36 ℃台へ解熱した。
    持続する発熱に腹満,便秘を伴う場合,西洋医学的治療の有無に関わらず大承気湯の使用を考慮すべきと考える。
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  • 岩永 淳, 田原 英一, 土倉 潤一郎, 大竹 実, 村井 政史, 矢野 博美, 犬塚 央, 木村 豪雄, 三潴 忠道
    64 巻 (2013) 1 号 p. 22-26
    公開日: 2013/07/20
    ジャーナル フリー
    症例は食欲不振にて通院中の68歳女性である。体重が22kg まで低下し,1月21日低血糖発作およびウェルニッケ脳症にて緊急入院,その後呼吸不全にて人工呼吸器管理となった。3月24日,呼吸器感染症により発熱を認めた。抗生剤治療を開始し桂枝二越婢一湯を投与したが,26日再び発熱。1日投与量の1/10量の大承気湯を開始し解熱した。3月31日再び発熱。4月1日大柴胡湯加芒硝を1日投与量の1/10量投与し解熱。投与を継続し4月3日以降発熱を認めなかった。
    柴胡加芒硝湯は,基本となる方剤が大柴胡湯なのか小柴胡湯であるのか,古来より議論されている。本症例では裏熱の存在を疑い,腹候にも従い陽明病に非常に近い少陽病に位置する大柴胡湯加芒硝を投与し効果を得た。またるいそうが著明で,平素は陰証あるいは虚証を呈していても,病態により陽証や実証に変化する場合があるが,体格や体力に応じて投与量は調節する必要があると思われた。
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  • 岩田 健太郎, 梅本 善哉, 神澤 真紀, 原 重雄, 横崎 宏, 西本 隆
    64 巻 (2013) 1 号 p. 27-31
    公開日: 2013/07/20
    ジャーナル フリー
    腸管スピロヘータ症はBrachyspira 属によるまれな消化管感染症である。臨床症状は多彩で無症状から消化管出血,下痢,腹痛など多岐に及ぶ。メトロニダゾールなど抗菌療法を用いることが多いがその治療効果は確立されておらず,難治例も少なくない。この度,腸管スピロヘータ症に大建中湯エキスを用いた症例を経験したので,文献的な考察を交えて報告する。治療方法が確立していない腸管スピロヘータ症であるが,慢性下痢,腹部膨満感,腸管ガスの変化などを主症状とする場合は大建中湯エキスがよい選択肢かもしれない。
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  • 八代 忍, 及川 哲郎, 花輪 壽彦
    64 巻 (2013) 1 号 p. 32-40
    公開日: 2013/07/20
    ジャーナル フリー
    感染症の中でも特に難治とされている骨・関節感染症に漢方治療が有効であった2症例を経験したので報告する。[症例1]34歳,女性。MRSA 肺炎からDIC となり治療を受けていた。この間,左股関節の異常に気付かず,化膿性股関節炎を発症。5回の手術が施行されたが,創は閉鎖せず浸出液排出が続いた。補中益気湯の内服で発熱を認めなくなり,創部に良好な肉芽が形成された。千金内托散料に転方後は浸出液量が減少し,十全大補湯への転方と創外固定術が施行されると,上皮化も進行し,創は閉鎖した。[症例2]79歳,女性。大腿骨頚部外側骨折に対し骨接合術が施行された1年6ヵ月後,手術痕が自壊し,多量の浸出液が排出され,遅発性術後感染症と診断された。十全大補湯の内服で栄養状態が改善するとともに,MRI で浸出液減少と瘻孔閉鎖が確認された。難治性の骨関節感染症には補剤が有効であり,黄耆と人参を増量することでさらに高い治療効果が得られたと考えた。
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  • 村井 政史, 伊林 由美子, 八重樫 稔, 今井 純生, 大塚 吉則, 本間 行彦
    64 巻 (2013) 1 号 p. 41-44
    公開日: 2013/07/20
    ジャーナル フリー
    ホットフラッシュに陰証の方剤が奏効した1例を報告する。症例は56歳の女性で,閉経後に顔面のほてりと発汗を認めるようになった。加味逍遙散と苓桂朮甘湯で治療を開始したところ,ホットフラッシュはやや改善したが,疲れた時に増悪した。そこで証を再考し,陰証で虚証と考え小腹不仁が著明であったため,八味丸に転方したところホットフラッシュはほとんど出現しなくなった。しかし疲れやすく,疲れた時にホットフラッシュが増悪したため,心下痞鞕を目標に人参湯を併用したところ,疲れにくくなりホットフラッシュは出現しなくなった。ホットフラッシュには陽証の方剤が有効な場合が多いが,病態に応じて陰証の方剤も考慮すべきと思われた。
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Perspective
  • 舘野 正美
    64 巻 (2013) 1 号 p. 45-50
    公開日: 2013/07/20
    ジャーナル フリー
    中神琴渓は,我が国江戸時代最大の医家の1人である。この琴渓の治術と,その根底にある医学思想は,日本漢方医学史上,極めて重要な位置を占めるものであるが,未だ殆ど手つかずの状態であると見受けられる。
    そこで本稿においては,琴渓の生生堂雑記・生生堂養生論・生生堂治験・生生堂医譚・生生堂傷寒約言を対象とし,先ずは文献学的に読み解き,その治術の内容を的確に把握し,さらにその医学思想について概観した。
    その結果,琴渓の治術は多岐に亘り,(1)鈹鍼(瀉血),(2)潅水,(3)灸,(4)湯薬,等の実例を示すことが出来た。琴渓は,先達の考えや治術を学びつつも,彼独自の医学思想に基づき,彼自身の治術の局面を展開したが,それは彼の正確で執らわれのない見立てのもたらすところであった。
    畢竟するところ,琴渓の治術は常に様々な療法の〈規則を離れ〉た融通無碍な展開のもたらす所だったのである。
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