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坪 敏仁, 宇仁田 明奈, 古田 大河, 鈴木 雅雄, 上野 孝治, 鈴木 朋子, 秋葉 秀一郎, 小宮 ひろみ, 佐橋 佳郎, 三潴 忠道
原稿種別: 臨床報告
2019 年 70 巻 2 号 p.
99-105
発行日: 2019年
公開日: 2019/12/20
ジャーナル
フリー
びまん性汎細気管支炎(DPB)患者に対して,桂枝去芍薬加皂莢湯を用いた漢方湯液治療と鍼治療を行い,呼吸症状の改善を認めたので報告する。
症例:71歳女性 体重38.1kg
X—2年 DPB の診断を受け,エリスロマイシン投与開始 X—1年12月 DPB 進行し,在宅酸素療法導入 X年9月漢方内科入院となった。
入院時所見:咳嗽,膿性痰,労作時呼吸困難が存在した。酸素鼻カヌラで酸素1—3l/min 投与の在宅酸素療法を受けていた。ある程度の歩行,臥位は可能であった。
経過:入院4日目に桂枝去芍薬加皂莢湯と芎帰膠艾湯投与に加え,鍼治療を開始した。患者の訴えは徐々にではあるが軽減し,入院30日目に退院となった。退院時には痰の性状が変化し,量が少なくなった。また検査データの改善を見た。桂枝去芍薬加皂莢湯を用いた漢方湯液と鍼治療の併用は, DPB 患者の呼吸管理に役立つかもしれない。
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木村 容子, 山崎 麻由子, 佐藤 弘, 伊藤 隆
原稿種別: 臨床報告
2019 年 70 巻 2 号 p.
106-112
発行日: 2019年
公開日: 2019/12/20
ジャーナル
フリー
漢方医学において疲労倦怠感は気血水スコアの気虚に分類されるが,補気剤を用いても軽快しない場合がある。 一部の慢性的な症状の背景には瘀血が存在すると考えられている。慢性の疲労倦怠感が駆瘀血剤(桂枝茯苓丸加味4例,桃核承気湯2例,併用4例)で改善した10症例(M/F1/9,年齢中央値46歳,範囲23—55歳)を経験した。 体格はほぼ中等度,自覚症状では,頚または肩の凝りが9/10例,便秘が5/10例,のぼせまたはホットフラッシュが5/10例であった。食欲不振はなく,むしろ過食が10例中5例に認められた。診察所見では,舌下静脈怒張(8/10例),臍膀圧痛(9/10例),目の隈(5/10例)などが認められ,舌や腹部所見は3—8ヵ月後には軽減または消失していた。 慢性の疲労倦怠感には瘀血の徴候を呈する症例がある。これらの症例には補気剤で補うよりも,まず瘀血を目標にして治療が有効な可能性がある。
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佐藤 浩子, 佐藤 真人, 平林 香, 大山 良雄, 紫野 正人, 田村 遵一
原稿種別: 臨床報告
2019 年 70 巻 2 号 p.
113-118
発行日: 2019年
公開日: 2019/12/20
ジャーナル
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中咽頭癌術後,化学放射線療法後の嚥下困難に対し漢方治療が効果的であった症例を経験した。症例は61才女性。 中咽頭癌に対し左扁桃摘出,両側頚部郭清術,続いて化学放射線療法を施行された。治療後に自覚した嚥下困難と口腔乾燥に対し,漢方治療を試みた。半夏厚朴湯エキスを食直前に内服後,嚥下が容易となり摂食時間が短縮した。 麦門冬湯エキスを合方後,口腔乾燥が軽減した。体重が増加し,職場復帰の一助となり得た。近年,癌補助療法や緩和医療として漢方治療の併用が行われるようになった。中咽頭癌そのものによる,あるいは癌治療に伴う嚥下障害・口腔乾燥に対し,漢方治療は症状の軽減に役立ち,患者のQuality of Life を向上させる一助になりうると考えられた。
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髙村 光幸, 野瀬 由圭里, 横地 歩, 丸山 一男
原稿種別: 臨床報告
2019 年 70 巻 2 号 p.
119-123
発行日: 2019年
公開日: 2019/12/20
ジャーナル
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抑肝散および抑肝散加陳皮半夏(以下,抑肝散類)に関する口訣に,「怒り」の有無に言及したものがいくつか認められるが,実際に「怒り」の有無が処方の有効性に関連するのかを統計学的に検討した報告はない。よって一施設において抑肝散類服用症例について後方視的に多変量解析を行った。カルテ抽出した抑肝散類エキスによる主訴改善の有無を従属変数に設定し,問診などから10項目の独立変数を多変量解析に投入した。N=32(男性12,女性20),平均年齢は47.3であった。抑肝散類効果有り群16例中「怒りっぽい」は7例(43.8%)で,多重ロジスティック回帰分析では「性別」と「怒りっぽい」が有意な独立変数として採択され,女性に対する男性の調整オッズ比は21.7,「怒りっぽい」は,そうでない場合に対して調整オッズ比8.2であった。結果から男性であることや「怒り」があることは抑肝散類の有効性に関連があることが示唆された。
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宮西 圭太, 平田 道彦, 織部 和宏
原稿種別: 臨床報告
2019 年 70 巻 2 号 p.
124-129
発行日: 2019年
公開日: 2019/12/20
ジャーナル
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瘀血や気の障害が痛みに関連することはよく知られているが,痰飲が関与した痛みの報告は少ない。下肢痛に対して痰飲の関与を考慮し竹茹温胆湯が奏効した2症例を報告する。症例1は63歳女性。誘因なく右下腿の重だるい痛み・しびれを生じ,疎経活血湯を2週間投与するも改善しなかった。症例2は42歳女性。交通事故で受傷し,3 ヵ月後も右殿部から大腿部の痛みが遷延した。痛みが少陽胆経に沿った痛みであること,不眠傾向,舌上の膩苔から痰飲の関与を考慮して竹茹温胆湯を投与したところ,2症例とも1週間以内に下肢痛は緩和した。痰飲が胸部に停留すると前胸部不快感や胃痛などの脾胃不調和の症候を呈するが,痰飲の痛みは水が身体に留まることで重だるい痛みとなり,夜の安眠を妨げやすい。痛みの治療では痰飲の存在も鑑別に入れることが重要である。
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鈴木 朋子, 伊関 千書, 佐橋 佳郎, 三潴 忠道
原稿種別: 臨床報告
2019 年 70 巻 2 号 p.
130-135
発行日: 2019年
公開日: 2019/12/20
ジャーナル
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『傷寒論』を原典とする白朮附子湯は意外に報告が少ない。今回我々は痛みで体動困難となった患者に対し白朮附子湯が著効した症例を経験したので報告する。症例は介護施設入所中の84歳女性。主訴は痛みによる体動困難。 X 年1月定期受診した際左側胸~側腹部の激しい体性痛を訴え即日入院となった。精査上器質的異常は認めず,問診にて冬期にもかかわらず脱水予防のため水道水を2—3L/日近く施設で摂取させられていたことが判明した。小便は自利だが数日便秘であった。NSAIDs などは効果なく,入院当日より白朮附子湯を開始した。内服後大量の軟便を排泄するとともに痛みは急速に改善し退院調整後第13病日退院した。会津地方の介護施設で冬場に水道水を多飲させられ水毒に陥り「風湿相搏」状態となったことが今回の痛みの一因と考えられた。風湿が原因の痛みに対しては桂枝附子湯,甘草附子湯とともに白朮附子湯も考慮すべき処方と考えられる。
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土倉 潤一郎, 徳丸 佳世, 村井 政史, 矢野 博美, 犬塚 央, 貝沼 茂三郎, 田原 英一, 三潴 忠道
原稿種別: 臨床報告
2019 年 70 巻 2 号 p.
136-140
発行日: 2019年
公開日: 2019/12/20
ジャーナル
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56歳男性の原発不明癌による癌性腹水に対して,腹痛と強い寒を認めていたことから桂皮赤丸料を使用した。赤丸料を開始後,2日目より腹痛の消失,3日目より尿量の増加とともに腹水が著明に減少した。赤丸料が癌性腹水に有効であった機序は不明であるが,寒の改善によって新陳代謝が亢進し,利尿が促進された可能性を推察する。 赤丸料による癌性腹水の改善例はこれまで報告されておらず,文献的考察とともに報告する。
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嶺井 聡, 貝沼 茂三郎, 坂元 秀行, 玉城 直, 友利 寛文, 梁 哲成, 仲原 靖夫, 古庄 憲浩
原稿種別: 臨床報告
2019 年 70 巻 2 号 p.
141-145
発行日: 2019年
公開日: 2019/12/20
ジャーナル
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苓桂朮甘湯は茯苓,桂皮,朮,甘草の4つの生薬から構成され,陽証で気逆と水毒を伴う病態で,起立性調節障害などの自律神経の機能調節障害,特に副交感神経優位から交感神経優位な状態への調節が上手くいかない場合などに用いられる。今回,自律神経の調節障害と考えられた3症例に対し,苓桂朮甘湯が有効であったので報告する。 症例1は運動後や仕事終了前後に出現する頭痛,症例2は夕方から出現するふらつきや冷汗,症例3は仕事終了後や休日に出現する頭痛が主訴であったが,いずれの症例も交感神経優位の状態が長く続いた後に,副交感神経優位な状態に自律神経の調節障害が原因と考えられた。また3症例いずれも陰証や水毒を示唆する所見に乏しく,今回の検討から水毒の所見がなくても,陽証で気逆の所見に加え,交感神経優位から副交感神経優位な状態に自律神経の調節障害に苓桂朮甘湯が有効である可能性が考えられた。
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吉永 亮, 後藤 雄輔, 井上 博喜, 矢野 博美, 鍋島 茂樹, 田原 英一
原稿種別: 臨床報告
2019 年 70 巻 2 号 p.
146-150
発行日: 2019年
公開日: 2019/12/20
ジャーナル
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現代医学的に原因を特定できず,疼痛コントロールが困難であった腰下肢の電撃痛に対して甘草附子湯が著効した1例を報告する。症例は69歳の男性。左殿部外側から下肢の電撃痛のため体動困難となり救急搬送された。疼痛が持続したため入院治療を開始した。鎮痛剤の投与や仙骨神経ブロックを行うが無効で,寝返りや左下肢の伸展が困難であった。入院8日目,「之に近づけば即ち痛み劇しく」を参考に甘草附子湯を投与したところ,数時間後には座位が可能になるまで疼痛が軽減した。翌日には起立でき,5日後には自力で歩行が可能になった。甘草附子湯は激しい疼痛に対して即効性が期待できる方剤であり,「冷え」,「激しい疼痛」,「気の異常(過敏)」を参考に心因性の痛みを合併した神経障害性痛に対して考慮すべきである。
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齊藤 均, 平馬 直樹, 高橋 秀実
原稿種別: 臨床報告
2019 年 70 巻 2 号 p.
151-157
発行日: 2019年
公開日: 2019/12/20
ジャーナル
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持続する食欲不振,体重減少に対して西洋医学的な診断ができず,食欲不振に付随する症状から東洋医学的に診断し,白虎加人参湯を服用し,有効であった症例を経験したので報告する。症例は83歳男性。痰,食欲低下で受診,胸部CT にて胸膜下に磨りガラス影と網状影を認め,特発性間質性肺炎として経過観察していた。食欲不振,体重減少が続き,消化器,消化管の精査を行ったが,食欲不振の原因は特定できず,半年で約30kg の体重減少となり入院となった。神経疾患,膠原病,内分泌的疾患,精神疾患等は認めず,食欲不振,体重減少の原因を同定できなかった。頸部,両上肢,両足関節以下の冷え,頭頂部の熱感,冷えた食物の嗜好に着目し,東洋医学的に,厥逆,熱厥と診断し,白虎加人参湯の内服を開始した。その後,食事量は増加し,頸部,上肢・足の冷え,頭頂部の熱感は軽減,消失した。食欲不振に対して漢方薬で治療することは有効であると考えられた。
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