本試験は抗酸化物質として作用するアントシアニン系色素に注目し,アントシアニン系色素含有量の低いアオシソと高いアカシソを供試し,異なる塩ストレス条件下での色素の存在と変化を明らかにし,その抗酸化能力がシソの耐塩反応にどのように関与するかを検討した。
その結果,アントシアニン系色素を含有するアカシソの耐塩性は含有しないアオシソに比べて高く,その耐塩機能は直接のイオンストレスや浸透圧ストレスに対応するイオン恒常性の維持機能ではなく,二次的な活性酸素消去機能にあった。すなわち,アカシソでは抗酸化物質としての色素の抗酸化能力が主たる耐塩機能であり,塩ストレスが増加すると先ず色素の含有量は約2倍に高まり,その後カタラーゼを主とした活性酸素消去系酵素による抗酸化作用が補助的に生じた。塩ストレスで植物の含有するアントシアニン系色素量が高まることは,色素のもつ抗酸化性によって劣悪栽培環境下での植物の環境耐性を高めるのみならず,植物体内の抗酸化物質の増加をもたらした。また,これまで良く知られている塩ストレスによる野菜の糖度上昇効果とともに新たな付加価値をもたらす植物栽培方法を示唆した。