米国において数十万とも言われる石油生産事業者の経営破綻などにより放置された廃止石油・ガス坑井から排出される温室効果ガス(メタン)の削減について,米国政府の対応策を概観するとともに,問題の背景や石油生産事業者がOGW対応を行わない経済的理由とそれに対応できない制度の限界について,モンタナ州の環境NPOの活動を通じて考察した。
米国連邦政府は,2021年から保安義務者が存在しない廃止坑井(Orphaned Oil and Gas Wells)の封鎖に対して大規模な政府投資を行っている。連邦政府内部での省庁を超えたプロジェクトを構築し,封鎖を計画的に進めている。放置された坑井の問題には,石油産業の恣意的な坑井放棄に対する土地所有者や規制当局の不信感が存在することから,中立的な立場であるNPO(Well Done Foundation)がモデレーターとなり,封鎖政策を推進する牽引役となっている。