人間と環境
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51 巻, 1 号
人間と環境 第51巻第1号通巻136号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 富樫 親
    2025 年51 巻1 号 p. 3-14
    発行日: 2025/02/10
    公開日: 2025/08/10
    ジャーナル フリー

    パリ協定において,世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて1.5℃に抑えるという目標達成のため,メタン排出削減は喫緊の課題となっている。

    本稿は,その中でも,近年米国及びカナダで注目されている放置された廃止石油坑井(Orphaned Gas Wells: OGW)からの温室効果ガス排出量を推計し,環境影響と封鎖削減の公共事業としての可能性を分析する。秋田県秋田市の黒川油田を対象に,過去の調査資料と現地調査に基づき,OGWからの天然ガス(メタン)排出量を年間で約8千t二酸化炭素換算(以下,CO2e)と推計した。坑井封鎖コストは約7.6億円と試算されたが,費用便益分析では,有益性が認められた。また,OGW封鎖は,炭素価格導入や脱炭素技術普及に寄与し,環境意識向上にも貢献する可能性があることが示された。

  • 平岡 俊一
    2025 年51 巻1 号 p. 15-29
    発行日: 2025/02/10
    公開日: 2025/08/10
    ジャーナル フリー

    本稿は,持続可能な地域づくり推進を目的にした中間支援組織による地域内の諸主体との信頼関係の構築に関するプロセスや取り組みなどについて,滋賀県東近江市の「まちづくりネット東近江」を対象に実施した事例調査をもとに考察した。まちづくりネット東近江は,東近江市役所が主導して設立した組織である。設立当初は,同団体の職員が地域づくり活動の支援活動の経験をほとんど有していないという状況下で,市内の地域づくり・市民活動団体を訪問,取材等を行う活動に力を入れた。これは,同団体の存在を諸団体の関係者に認識してもらうこと,あわせて,それらの団体が抱える課題などを把握することを目的にしていた。その次の段階でまちづくりネットは,市内の諸団体関係者の間で交流や意見交換を行う事業を積極的に実施している。こうした取り組みは,合併してから時間があまり経過していなかった当時の東近江市において,市内各地の地域づくり・市民団体関係者のネットワークを生み出す役割を果たした。一連の調査結果から,まちづくりネットは諸主体との信頼関係を構築するために,①地域各所に出向き,諸主体との積極的なコミュニケーションやニーズ把握を図る,②地域内での関係者間のネットワークを形成する,③市の多様な課と関わりをもつ,といった取り組みに力を入れていたことが分かった。

研究ノート
  • 長屋 祐一, 川本 千景
    2025 年51 巻1 号 p. 30-40
    発行日: 2025/02/10
    公開日: 2025/08/10
    ジャーナル フリー

    三重県津市におけるサトウキビ(Saccharum officinarum L.)春植え疎植栽培の収量向上を目的として,マルチングおよびトンネルハウスを利用しない通常栽培(対照区),生育初期に定植後の畝を透明フィルムでトンネル状に被覆するトンネル栽培(トンネル処理区),定植直前に畝を黒色フィルムで被覆するマルチ栽培(黒マルチ処理区)を2年間栽培し,生育と収量を比較検討した。トンネル処理区と黒マルチ処理区は対照区と比較して地温上昇が見られ,初期生育においてサトウキビの出葉数と茎数が対照区より増加した。処理区の収量を春植え栽培の全国平均値と比較すると対照区は80%,トンネル処理区は107%,黒マルチ処理区は113%であった。サトウキビ春植え疎植栽培において,生育初期のトンネル栽培または黒色フィルムのマルチングは収量の増加が見込める栽培技術であった。

  • 佐藤 輝
    2025 年51 巻1 号 p. 41-52
    発行日: 2025/02/10
    公開日: 2025/08/10
    ジャーナル フリー

    イタリアの農村振興のため,アグリツーリズモ(AT)農家で使用される食材に対しては,AT各州法によって「地産地消」の高い割合が規定されている(従来のホテル・レストラン・カフェ業者との差別化も意図して,価格として全体の60~100%を自家と州内の生産物によってまかなう義務)。この農産物調達ネットワークの支援の方法を把握するために,下記の3州における先進的なAT諸協会,および優良なAT農家の双方を対象にして半構造化インタビューをおこなった。地理的表示(GI)制度のイタリアにおける州別の単位人口あたりのワイン生産量と食品生産者数の多い州を統計的に分析し,トレンティーノ=アルト・アディジェ(以下,TAA)州,ヴェネト州,サルデーニャ州を選び出した。

    その結果,各AT協会が主に個別の電話対応(TAA州のガッロ・ロッソ協会で),あるいはインターネット農産物検索データベース(テッラノストラ協会では全国的に)の方法を駆使して,食材の州内での調達にとって重要な役割を担っていることが明らかとなった。ただし,いずれの地域でもAT協会がAT農家でのGI登録食品だけの利用を強く推奨しているわけではなかった。むしろ地理的・歴史的に小規模AT農家の多いTAA州のガッロ・ロッソ協会では,GI制度とは別に,独自の高品質ブランド登録制度を立ち上げて,オンラインショップも併設する等によって販売促進を図っていた。ヴェネト州ではAT農家がGI食品を含めた高品質認定食品類を15%以上提供するようAT州法で規定していた。サルデーニャ州の調査農家では自家有機ブランドを地元販売向けに創出していた。つまり,イタリア各地で上記の方法を広く実施することを通じて,一定量のさまざまな高品質・地域ブランド産品を流通させることが「結果的に」AT農家やGI生産者の雇用促進に結実しているものと考えられた。

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