既存のホタルの放流プログラムに代わり,ホタルを含む水生生物の簡易調査をベースとした学習プログラムを試行し,その教育効果を検証した。プログラムは,学校や地域住民が誰でも安全かつ簡単に調査地に生息する生物を調べることができる2種類のトラップ(カワニナトラップ,柴漬けトラップ)を用いるもので,事前・事後学習にタブレットを活用した。このプログラムを,2021年に広島県呉市の中学生52名を対象に実施し,生徒と教員を対象にアンケートを行った。その結果,どちらのトラップを用いてもホタルについての理解が深まっており,教員からの評価も高かった。しかし,捕獲した指標生物を用いて水質評価を行う柴漬けトラップを利用した生徒の方がより自然環境全体に対する理解が深まっていた。また,タブレットを用いることに対し,95%の生徒が肯定的な評価をしていた。現場の教員や地域団体の担当者に目的に応じて実施内容を選んでもらうことで,本プログラムは水生生物の放流に代わる効果的な学習プログラムの一つになりうると考えられる。