感染症学雑誌
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55 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 鈴木 幹三, 中森 祥隆, 蝶名林 直彦, 立花 昭生, 中田 紘一郎, 岡野 弘, 谷本 普一, 松岡 ひろ子
    1981 年 55 巻 11 号 p. 795-801
    発行日: 1981/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1971年から1980年までの過去10年間の虎の門病院における痰中細菌の分離状況を調べ, 総検体数, 検出菌数, 検出率, 各種細菌の検出率の年次別推移を明らかにした.P.aeruginosaについては, Mucoid型, Non-Mucoid型別にも検討し, 1969, 1974, 1979年度における薬剤感受性をみた.検出菌は培地上 (+) 以上とし, 薬剤感受性についてはDisc法の判定で (++) 以上のものを感受性ありとして集計した.その結果, 次のような成績を得た.
    1) 総検体数は過去10年間に約2倍の増加を示し, 細菌検出率は50%前後を示した.
    2) 年次的な変動として, グラム陰性桿菌の増加, なかでも同定できないブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌, Serratiaの増加と, Klebsiellaの減少が目立つた.
    3) P. aeruginosa, H.influenzaeは増加の傾向を示した.
    4) P. aeruginosaではMucoid型は減少し, 薬剤感受性ではMucoid型が優れていた.
  • S.enteritidis SPAのマウスに対する感染防御効果について
    神谷 和人, 杉原 久義, 田中 哲之助
    1981 年 55 巻 11 号 p. 802-811
    発行日: 1981/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    S.enteritidis2547株 (SPA強力産生株) の培養濾液であるSPAで1回免疫されたマウスは同株の100LD50の攻撃に耐えるが, SPA非産生株である2822株ではそのような効果は見られない.2547株SPAで免疫されたマウスの血清を正常マウスに移入すると, このマウスは10LD50の菌量の攻撃に耐え感染死が防御される.この免疫血清をSPAで吸収すると防御効果は消失する.SPA免疫血清中には0抗体, H抗体はほとんど含まれておらず, また同じO, H抗原構造をもつ菌でも株によつて防御性が異なることから, 感染防御抗体は0抗体, H抗体とは異なるものと思われる.
    このような感染防御性は加熱死菌体, ホルモルワクチンを用いてもSPA産生性とよく平行することが認められた.
    SPAによる防御効果は免疫3日目には出現し, 180日後でも持続する.しかし免疫血清の受身移入による防御効果は90日では消失している.このことよりSPAによる感染防御は体液性抗体のみでなく, 他の因子も関与していることが判る.
    SPA免疫マウスの腹腔細胞を用いてMITを行つたところ, マクロファージの遊走が阻止され, 細胞性免疫の関与が示唆された.
    SPA免疫マウスを強毒菌で攻撃し, 血液, 臓器中の菌数を調べたところ, 攻撃菌はやや増加するが, 徐々に減少し遂には消失する.しかし非産生株ではこのような効果はなく, 菌数は次第に増加し, マウスは死亡する.
  • 第3報ヒトに棲息する黄色ブドウ球菌に汚染されたにぎりめしによる食中毒について
    後藤 喜一
    1981 年 55 巻 11 号 p. 812-818
    発行日: 1981/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近10年間に岐阜県内で発生した黄色ブドウ球菌食中毒24事例から分離された分離株のコアグラーゼ型はII, III, VIおよび靱型に限局された.にぎりめしを原因食とする13事例のうち養護施設M学園で発生したブドウ球菌性食中毒について検討した.
    原因食にぎりめしからコアグラーゼVI型菌が分離されたが, 調理材料, 調理器具等に異常が認められなかつた.にぎりめしを調理した職員の手指, うがい液から原因食からの分離株と同コアグラーゼ型の黄色ブドウ球菌が分離された.これらの分離株は米飯中で良好な増殖を示した.原因食にぎりめしの汚染源は調理した職員に棲息する黄色ブドウ球菌であろうと推定された.にぎりめし調製時における米飯へのブドウ球菌汚染の機序について考察を加えた.
  • 中野 昌人, 神崎 玲子, 早川 正勝, 安達 正則, 河合 美枝子, 今高 國夫, 滝塚 久志, 岡山 謙一, 勝 正孝, 野瀬 信子, ...
    1981 年 55 巻 11 号 p. 819-825
    発行日: 1981/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    合成抗菌剤Miloxacinはグラム陰性桿菌に対し, 幅広く, かつ強い抗菌活性を有している.さきに我々は, 各種感染症に対する本剤の臨床効果を検討し, その成績を報告した.
    今回さらに, 腸管感染症に限定し, その臨床効果, とくに排便回数正常化, 便性回復に要する日数に主眼をおき有用性を検討した.
    腸管感染症25例に投与し, 著効8例, 有効13例, 無効4例であつた.また, 排便回数正常化に対する効果は72%が3日以内に, 84%が6日以内に正常化した.便性回復については77%が3日以内に, 91%が6日以内に回復した.細菌学的には.E.coli6株中5株のほか, Citrobacter3株, Klebsiella1株, Proteus1株, Vibrio Parahaemolyticus2株, Campylobacter1株におのおの菌の消失をみた.
    副作用として1例に軽度のめまいの発現をみたが, Miloxacin投与によると思われる臨床検査値の異常は認められなかつた.
  • 徳田 正夫, 田中 陸男, 大北 和彦
    1981 年 55 巻 11 号 p. 826-832
    発行日: 1981/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    昭和55年11月21日に発熱を伴つて発病した5歳女性の患者は初診時に無菌性髄膜炎と診断されたが, その後嘔吐, 頭痛, 咽頭発赤, 項部強直, ケルニッヒ徴候, 昏迷, 昏睡さらに左上下肢の軽い不全麻痺や身体諸所の疼痛などの臨床症状を示した.
    髄液には細胞 (リンパ球) 増多, 蛋白量の増加, 糖量の低下が認められた.髄液から結核菌が分離培養された.
    ポリオ2型ウイルスとの補体結合反応, 中和反応の両者によりポリオ2型ウイルスに対する抗体が病日の経過と共に血清中に出現し, その抗体価の上昇が認められた.
    以上の事実により, 本症例は結核菌とポリオ2型ウイルスの混合感染による結核性髄膜炎と急性灰白髄炎の合併症であることが証明された.
    結核菌の感染源は肺結核の父方の叔母であるが, ポリオ2型ウイルスの感染源は不明である.
  • 渡辺 一功, 南出 和喜夫
    1981 年 55 巻 11 号 p. 833-839
    発行日: 1981/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Pasteurella multocidaはグラム陰性の小桿菌で, 以前より動物の出血性敗血症, 家禽コレラの起炎菌として獣医学の領域で問題となつていたものである.人での感染症としては猫および犬などの動物による咬傷または擦過傷による局所化膿症がほとんどであり, このほかにも敗血症, 髄膜炎などの全身感染症, 慢性呼吸器感染症を基礎疾患としたものに気道感染症におこすものなどが欧米では報告されているが, 本邦では局所化膿症での膿, および中耳炎症例での耳漏より本菌を分離した症例は報告されているが, 未だ本菌による全身感染症や感染症の報告はないようである.
    我々は53歳, 男性の農業に従事している気管支拡張症患者の喀痰より本菌を連続的に純培養状に分離した症例を経験したので, この細菌学的検討と, 本菌に感受性をもつST合剤を投与して著効を示した臨床経過および本菌の消長を報告するとともに, 本菌による呼吸器感染症について若干の文献的考察を加え報告し, 今後の本菌の呼吸器感染症における意義について検討した.
  • 1981 年 55 巻 11 号 p. 887-889
    発行日: 1981/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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