感染症学雑誌
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55 巻, 4 号
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  • 舟田 久, 手島 博文, 服部 絢一
    1981 年 55 巻 4 号 p. 221-233
    発行日: 1981/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    悪性Pソバ腫の2症例に対する自家骨髄移植が無菌室治療のもとで施行され, 腸管内無菌化のための非吸収性の経口抗生剤処方 [dibekacin (DKB) 250mg, vancomycin (VCM) 500mg, nystatin 300万単位を1回量として1日4回投与 (DVN)] の効果に検討が加えられた.
    DVNの投与1週目以降, 便菌叢は, LactobacillusとCandidaを除いて, ほぼ完全に抑制され, 投与終了1週目に無菌化前の菌数レベルに回復をみた. ただ, 移植前処置による嘔気・嘔吐のためにDVNの内服が一時的に困難となつた1例で, 腸内細菌の急激な増加がみられた. 咽頭菌叢は便菌叢よりも抑制が一層困難であつた. LactobacillusはもともとVCMやDKBに大きいMICを示したうえに, 投与されたDKBや1inc。omycinに速かに耐性化傾何を示した. CandidaはDVN投与中にみられても, 著増を示すことがなかつた.
    DKBの腸管吸収は1日投与量の0.7~2.7%で, 腸管病変により吸収増大がみられた.DVNの内服により著明な血清コレステロールの低下, 軟便, 時に嘔気がみられた. なお, 無菌室治療中に両症例ともにHerpessimplex virus感染による発熱をみたものの, 細菌や真菌による感染はなかつた.
    このような成績から, DVNは腸管内無菌化のための抗生剤処方として十分に使用に耐えうると考えられた.
  • 長岡 章平, 伊藤 章, 小原 侃市, 児玉 文雄, 福島 孝吉, 岡村 淳, 杉政 龍雄, 谷 荘吉
    1981 年 55 巻 4 号 p. 234-241
    発行日: 1981/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1961年4月から1980年6月まで当教室に入院した8人の・7ラリア患者について臨床的検討を加えた. 年度別では1963年1人, 1960年2人, 1970年1人, 1972年1人, 1976年1人, 1978年1人, 1980年1人であり, 年齢は20歳から47歳の男子であつた・感染地域は東南アジア5人が最も多く, 原虫種は三日熱マラリア6人, 四日熱マラリア1人・三日熱・熱帯熱マラリア混合感染1人であつた. 予防薬を全く内服しなかつた者4人, 内服はしていたが不完全であつた者4人であつた.
    検査成績は血沈充進, CRP陽性, 単球増多症を半数以上に認めたが, 総じて軽度異常にとどまつた.
    治療は第1次選択剤として・クロロキン, キニーネ, MP錠を用い, 後にプリマキンを併用した者が主体であつた.
    死亡例は1例もなく, 合併症もみられなかつた.
    以上マラリア症例の臨床的検討と, 南アメリカで罹患した四日熱マラリアの症例とを併わせて報告した.
  • 第1報特に, 緑膿菌の血清型と感受性分布について
    小林 由美子, 薩田 清明, 黒川 顕, 大塚 敏文
    1981 年 55 巻 4 号 p. 242-253
    発行日: 1981/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1977年4月から1979年12月の間に当センターの患者の945の臨床材料から228株の縁膿菌が分離された. この縁膿菌について血清型や6つの抗生物質に対する感受性を検討し, 次のような結果が得られた.
    1) 縁膿菌は945検体中228検体の24.1%から分離された. 喀痰で45.0%, 分泌液で43.5%, 熱傷部切片で40.1%, 尿で13.1%であつた.
    2) 121菌株について血清型を検査したところ119株 (98.3%) で判明した.E型がもつとも多く88株 (72.7%), 次いでG型が10株 (8.2%), B型が9株 (7.4%) であつた.
    3) 100μg/ml以上の耐性を示す菌株がDKBで67%, SBPCで68%, TOBで56%であつた. AMKに対する耐性は, わずか1%であつた.
  • 岩日 朋幸, 土屋 皖司
    1981 年 55 巻 4 号 p. 254-261
    発行日: 1981/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Proteus mirabilisによるマウスにおける実験的上行性尿路感染症を, 菌液0.05mlを膀胱内に経尿道的に注入後, 外尿道口を6時間閉塞することにより作製した. 102colony-formingunits (CFU)/mouse以上の菌量を接種したマウスは, ほぼ全例尿路感染症を起こした. 約103CFU/rnouseの菌量を膀胱内に注入後, 翌日105CFU/mouse以上の尿中細菌数を示したマウスのうち, 約20%は感染20日後までに死亡したが, 残りの約80%は10週以上生存した. 感染後死亡したマウスの体重は, 漸次減少したが, 生残したマウスの体重は, 感染4日後まで減少し, その後徐々に増加した.
    約103CFU/mouseの菌量を膀胱内に注入したとき, 感染の翌日105CFU!ml以上の尿中細菌数を示し, 体重減少が感染前の体重の15%以下であつたマウスの感染経過を追求した. 感染は先ず膀胱で進行し, 感染2~3日後までに両腎に波及した.感染3日後の膀胱および腎の菌数は臓器当り104~107CFUであり, この菌数が数週間持続した. 血液中には感染のいずれの時期にも感染菌を認めなかつた.
    本感染モデルは, 多くの臨床例でみられると同様に, 上行性に進展し, 発症率も高く, かつ比較的慢性経過を辿つた. また実験の再現性も高かつた. それゆえ, 本モデルは尿路感染症の治療に使用する薬剤の評価ならびに尿路感染症の病因あるいは免疫機序の解明のための有力な手段になると思われる.
  • 岡田 淳
    1981 年 55 巻 4 号 p. 262-275
    発行日: 1981/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    老年者特に寝たきり老人の尿路感染症は無症候性のことが多く, 混合感染を伴つて難治性となる傾向があるとされている.著者は, 1974~1979年の6年間に脳血管障害後遺症で入院中に尿路感染症を合併した患者638例を対象に臨床細菌学的検討を行ない, 2~3の知見を得た.
    1.のべ1267回の尿培養で, 1901株の細菌が分離され, 主要菌種はE. coli, Klebsiella, Proteus群で, グラム陰性桿菌が全体の90%を占めた.分離菌の年次推移をみると, Proteus群ことにイソドール陽性Proteusの増加が著しかつた. 又混合感染は約45%にみられた.
    2.薬剤感受性試験の成績では年々耐性化傾向がみられ, 分離頻度の高いProteusで各種薬剤に多剤耐性を示した. 又化学療法剤投与による治療成績では, 一部の菌株に菌数および菌種の変化がみられた.
    3.女性の難治性尿路感染症患者を対象に腔内細菌培養を試みた結果, 多菌種の細菌が分離され, 膣内のnormal floraに加えて, いわゆるopportunistic pathogenも少なからず認められた. これらの成績から脳血管障害後遺症例に合併した尿路感染症の治療に際しては, 耐性菌による菌交代を考慮し, 適切な化学療法剤を選択することが第一であるが, おむつによる汚染を避けるため, 局所の清潔を保つと同時に, 女性患者では膣内洗浄の実施も, 尿路感染防止の有効な手段と考えられた.
  • 北本 治, 小林 宏行, 高村 光子, 長浜 文雄, 安田 真也, 中林 武仁, 平賀 洋明, 高木 浩, 矢口 慧, 荻 光春, 久世 彰 ...
    1981 年 55 巻 4 号 p. 276-324
    発行日: 1981/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Mezlocillin (MZPC) の呼吸器感染症に対する有効性, 安全性ならびに有用性をAmpicillin (ABPC) を対照として比較した.
    対象は, 年齢16歳以上の細菌性肺炎・肺化膿症, 慢性呼吸器感染症または二次性呼吸器感染症で入院中の患者とした.投与量はそれぞれ29×2/日d. i. とし, 原則として14日間投与することとした.
    その結果, 臨床効果は全例233例 (MZPC群111例, ABPC群122例) ではMZPC群76.6%, ABPC群64.8%であり, 疾患群別に層別した場合, 非肺炎例でMZPC群76.5%, ABPC群56.3%の有効率が示され, いずれもMZPC群が有意にすぐれる効果が示された.また, 疾患群別, 重症度又は基礎疾患・合併症の有無により層別した場合, 重症度が中等度以上の全例および非肺炎群, また, 基礎疾患・合併症なしの全例および非肺炎群, さらに, 感染症の経過, 予後に影響をおよぼすような基礎疾患・合併症をもつ群での全例および肺炎群で, それぞれMZPC群の方が有意にすぐれる成績が得られた.
    副作用は全例252例 (MZPC群120例, ABPC群132例) について検討され, MZPC群で5.0%.ABPC群で9.1%の発現頻度であり, 両群間に有意差はみられなかつた.
    有用性は全例237例 (MZPC群113例, ABPC群124例) について評価された.「有用性あり」はMZPC群75.2%, ABPC群60.5%で, MZPC群が有意に高い成績が得られた.
    以上の結果より, 呼吸器感染症に対しMZPC49/日群はABPC49/日群に比し, 臨床効果の点で一般にすぐれた成績が示され, とくに中等度以上に進展した症例および難治性因子を有するごとき症例に対してABPC群に比し有意にすぐれた成績が見出され, かつ副作用も少なかつた.
    以上よりMZPCはとくにこの領域における臨床的有用性が十分期待出来うるものと考えられた.
  • 1981 年 55 巻 4 号 p. 335-337
    発行日: 1981/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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