感染症学雑誌
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55 巻, 5 号
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  • 早野 正己, 田中 厚子
    1981 年 55 巻 5 号 p. 339-345
    発行日: 1981/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A群及びB群溶連菌が菌体外に生産するesterase (STE) に対する抗体 (ASTE) を定量的に測定する方法を案出した. STEと結合したASTEをProteinAを有するブドウ球菌cowan I株でつくつた細胞壁に結合させて余分の酵素や血清成分を洗つて取除く. 抗体とともに細胞壁に結合したSTEの酵素作用をS-acetylthiophenolを基質とし5, 5'-dithiobis 2-nitrobenzoic acidを発色剤として作用させて生じたthionitrobenzoic acidanionの吸光度を412nmで測定する.
    本報告はこの方法の基礎的問題点に関する実験結果と, 猩紅熱患者として入院した88名の患者から日を追つて採血した血清についてASTE価を測定し, 同資料について測定したASO価との比較について述べた. 88例中ASO価の上昇をみたのは52例, ASTE価では55例であつた. 両者とも上昇した例は48例であつた. STEには-AIと-AIIがあるが55例中ASTE-AIの上昇は43例, ASTE-AIIの上昇は12例であつた. 又同資料中B群溶連菌のSTEに対する抗体の上昇をみた例は32例であつた.
  • 石黒 一男
    1981 年 55 巻 5 号 p. 346-354
    発行日: 1981/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    日光市内の小学校1, 2年生合計164名のうち, 昭和48, 49, 50, 52年度において他の目的で血清を採取されたそれぞれ47名, 合計94名についてT-凝集素を追求した. 用いた抗原はT-1, T-3, T-4, T-6, T-12, T-22, T-28のT抗原で, これらの菌型は調査期間中に分離された健康保菌者菌型の約90%をしめていたものである. T航体はスライド凝集反応で測定した.
    判定10倍陽性者において少数ながら陰性になるものもあり, また菌型によつて差はあつたが, 全体としては年月の経過とともに陽性者数は6年生になるまで増加した. 定量的には第1年度にすでに陽性であつた者の凝集価の低下の傾向は認められたが, T-4, T-12に対しては他の菌型に較べて比較的よく凝集価は保たれていた。第2年度に陽転した者の3年後の凝集価は31名中6名が陰転を示し, 凝集価の低下傾向を示したが, 大多数は比較的よく保持していた. 要するに血中凝集価は少くとも3~4年間木多数において保持されており, 血清免疫学的手段として利用し得ることを証明した.
    また8例の症例について観察期間中の保菌状況とT-抗体の出現との相関が検討され, 関連度の極めて高いことが示されたが, 中には限られた回数の保菌調査では検出されない例においてT航体の出現をみる例もあり, T-抗体の有用性を示した.
  • 野田 伸司, 渡辺 実, 山田 不二造, 藤本 進
    1981 年 55 巻 5 号 p. 355-366
    発行日: 1981/05/20
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    親水性ウイルス (エンテロウイルス) および親油脂性ウイルス (アデノおよび被エンベロープウイルス) の合計11種類のウイルスに対する, メタノール, エタノール, イソプロパノールおよびN-プロパノールの不活化作用を検討した.
    エンテロウイルスはメタノールによつて最も強い不活化作用を受け, 次いでエタノールであつた. イソプロパノールによつては, AHCウイルスが長時間の感作でわずかに不活化されるのを除き, 他のウイルスは全く不活化を受けなかつた.
    親油脂性ウイルスの中, 被エンベロープウイルスはN・プロパノールによつて最も強い不活化を受け, 次いでイソプロパノール, エタノール, メタノールの順であつた. これに対し, アデノウイルスはエンベロープゥイルスと同様にN-プロパノールによつて最も強い不活化を受けるが, その他のアルコール類に対する感受性は大きく異なり, 以下メタノール, エタノール, イソプロパノールの順に不活化効果が示された. アデノウィルスにおいては, 特にエタノールに対する抵抗性の強さおよび20℃ においてはイソプロパノールによりほとんど不活化を受けないことが注目された.
    エンテロウイルス中のAHCウイルスおよび親油脂性ウィルス中のアデノウイルスを除外すると, 全体的な傾向として, エンテロウイルスは炭素数の少いアルコール類, 親油脂性ウイルスはこれと反対に炭素数の大きいアルコール類により, 不活化を受け易い傾向が認められた.
  • 渡辺 実, 野田 伸司, 山田 不二造, 藤本 進
    1981 年 55 巻 5 号 p. 367-372
    発行日: 1981/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    生体試料中のウイルスに対するエタノールの不活化作用について研究を行つた.
    エタノールの反応に十分な水分が含まれている限り, 液相および固相, いずれの生体試料中においても, エタノールのウイルス不活化作用は, エタノールの濃度に比例して上昇する. 血清原液およびPBS中のポリオウイルスは, いずれも90%エタノールによつて10秒で不活化を受けるが, 70%エタノールによつては, 前者は1分, 後者は10分, 即ち10倍の感作時間を必要とし, 血清による阻害効果が著明であつた: また凝固家兎血液およびHeLa細胞に感染したポリオウイルスは, いずれも90~99.5%エタノールにより速やかに感染価の低下が示されるが, 80%以下の濃度では不活化の進行は緩やかであつた.
    これに対し乾燥血清中のウイルスには, 高濃度のエタノールによる不活化効果は低く, 99.5%エタノールには殆どウイルス不活化作用は認められなかつた. しかしこの条件下においても70-80%エタノールのウイルス不活化効果は最強ではなく, 乾燥血清中のNDVおよびワクチニアウイルスは40~60%エタノールによつて最も高い不活化効果が示された.
    最も効果的な消毒が要求される場合には, 被消毒物件の水分およびウイルスの種類に応じたエタノール濃度の選択が必要と思われる.
  • 第4報B群溶連菌その他の腟内細菌に及ぼすLactobacillusの影響及び加令に伴う腟内細菌叢の変動について
    大橋 浩文, 小酒井 望, 山田 俊彦
    1981 年 55 巻 5 号 p. 373-380
    発行日: 1981/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    前報において, 腔内のB群溶連菌 (以下GBS) の検出率が加齢に伴い増加傾向があることを報告したが, その理由として加齢に伴うLactobacillusの減少及び消失がGBS増加傾向の要因かどうか, またGBS以外の菌についても加齢に伴う変動の有無及びLactobacilluSの及ぼす影響について検討した.
    昭和52年10月から55年9月まで中央鉄道病院産婦人科外来を受診した20-60歳の腟炎のない婦人218名を対象に, 腟帯下を培養した。
    腔内からの細菌の検出状況は, Lactobacillus (53.7%), S.epidermidis (38.7%), E.coli (22.1%), Corynebacterium (18.9%) が高率に検出され, GBSは6.5%に検出された.
    GBS, E.coli, Bacteroides, S.aureus は L.actobacillus 陰性老から有意に高率に検出された.
    加齢に伴う変動としては, Lactobacillusが加齢に伴い減少していくのに対しGBSは逆に加齢に伴い増加傾向を認めた. S.aureus は50歳以上に高率に検出され, Candida albicans は若年層に高率に検出され, 加齢と共に減少傾向を認めた.
    Lactobacillusの減少ないし消失する高年層に多く認められ, Lactobacillus陰性者から有意に高率に認められたGBS, S.aureus は Lactobacillus によりその発育が抑制されていることが示唆された.
  • 1981 年 55 巻 5 号 p. 381-383
    発行日: 1981/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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