溶血レンサ球菌分離のための平板培地は, 一般に5%緬羊 (ウマ) 脱線維血液寒天平板培地 (Regular培地) が使われている.しかし, この培地はグラム陽性菌は勿論, 陰性菌もよく発育し, 目的のレンサ球菌がマスクされて釣菌の困難なことが多い.そのため, 選択培地としてcolistinとnalidixic acidを加えたColumbia CNA agarが市販されているが, 今回, 基礎培地としてheart infusion agarを用いた自家製のCNA培地を作成しその効果を検討した.その結果, グラム陰性菌の発育は抑制したが, 陽性菌とくにブドウ球菌は阻止できなかつた.そこで, ブドウ球菌をも抑制する目的で自家製CNA培地にcrystalvioletを加え, またレンサ球菌の発育を促進させるため, yeast extractとNaClを加えCNA-CYNともいうべき培地を考案し, N-O (エヌオー) 培地と仮称した.
このCNA培地とNO培地に5%の割合に緬羊脱線維血液を加えたものと, 従来のRegular培地を, 当所入所児 (結核, 気管支喘息, 肥満等) と大阪市内小学校の健康学童を対象に, それぞれの咽頭溶血レンサ球菌 (A.B.C.G群) の検出率を比較した.当所入所児ではRegular培地で11.6%の検出率であつたが, CNA培地で21.5%と上昇し, NO培地では30.0%とさらに向上した.健康学童ではRegular培地で23.3%であつたが, CNA培地では31.1%と上昇し, NO培地では59.2%と著明に増加した.群別でみるとA群も勿論であるが, B群の検出率の増加が顕著にみられた.
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