感染症学雑誌
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56 巻, 12 号
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  • 吉崎 悦郎, 神木 照雄, 坂崎 利一, 田村 和満
    1982 年 56 巻 12 号 p. 1153-1159
    発行日: 1982/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1979年4月から1982年3月までの3年間, 散発性下痢腸炎患者1,114名を対象にCampylobacter腸炎について調査したところ, C.jejuniの検出頻度は他の腸管病原菌のそれをしのぎ, 小児で13.6%, 成人で8.3%で, 検出された腸管病原菌の39.5%を占めた.また, 正常妊産婦および新生児6,815名についての調査では, それらの大便中における本菌の出現頻度は1%以下であった.Campylobacter腸炎患者の年齢分布では, 10歳以下の小児が約半数を占め, 一見小児のほうに多い感が与えられたが, 腸炎で受診する患者には小児が多く, このことが本腸炎の分布が見かけ上小児に偏るかもしれないことが考察された.性別分布では女性よりも男性に多い傾向があった.
    臨床症状では下痢, 腹痛, 発熱が主徴で, 他の腸炎と区別されるべき特徴的な症状は認められなかったが, 多くの例で下痢便に血液を混じ, その直接鏡検で好中球およびCampylobacterの特徴的形態が観察されることは, 本腸炎の診断に価値ある所見として強調された.また, 回復期における血中抗体価の著明な上昇および長期間の排菌も他の報告と同様, 本腸炎の特徴の一つとして確認された.
    分離されたCampylobacter 161株は, そのenzyme profileで多少の菌株間の相違が認められたが, 2株を除いてすべてC.jejuniと同定された.馬尿酸加水分解で例外性状を示した2株はCcoliに該当する菌株と思われるた.
    なお, Campylobacterの分離に, Skirrow寒天とButzler寒天 (変法) とを1年間にわたって比較したところ, 後者のほうが選択性および分離率において前者よりもすぐれていた.
  • 竹田 多恵, 竹田 美文, 三輪谷 俊夫
    1982 年 56 巻 12 号 p. 1160-1163
    発行日: 1982/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1979年2月から1980年4月までの14ヵ月間に, 大阪府および兵庫県に所在する15施設の一般開業医院と2施設の病院において, 急性腸炎の疑いで受診した下痢患者の検便を行なった結果, 95例中8例 (8.4%) から毒素原性大腸菌を検出した.8例の患者はすべて最近6ヵ月以内に海外渡航歴が無く, また発病の場所, 時期においても, 患者相互の伝染は考えられなかったので, 国内で感染した散発例であると結論した.
  • 有岡 敏和, 本田 武司, 竹田 美文, 三輪谷 俊夫
    1982 年 56 巻 12 号 p. 1164-1172
    発行日: 1982/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    実験的マウス感染症に対するヒト免疫グロブリン (Ig) 製剤の効果を調べた結果, 次の成績を得た.
    1) Strpneumoniae NCTC 7465, Ecoli 81およびSer.mrces6ensOH942の各菌をマウス腹腔内に投与して感染を成立させ, これによる感染致死に対するIgの効果を調べたところ, いずれの感染系でも, 未処理Ig, ペプシン処理Ig, 精製F (ab') 2のすべてが, 感染致死をほぼ同程度に抑制することがわかった.
    2) Igによる感染致死抑制効果は, 予め感染誘発菌でIgを吸収すると減少ないしは無くなった.この事実は感染致死抑制効果の有効成分が特異抗体であることを強く示唆している.
    3) Fc部分の無いIg (F (ab') 2) を投与すると, 感染後マウス血中に出現する菌量が著明に抑制された.
    4) Ig製剤で菌を処理すると, マクロファージによる菌の取り込みが促進された.この効果は, F (ab') 2でも観察された.
  • 奥山 雄介
    1982 年 56 巻 12 号 p. 1173-1185
    発行日: 1982/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    本報告は, 学校給食が起因となったA群溶連菌による咽頭炎集団発生の疫学的研究である.
    この集団発生は, 1969年7月, 埼玉県比企郡都幾川村大椚小学校 (在籍107名) 及び中学校 (在籍97名) に発生した.
    1) 患者発生は, 17日4名, 18日44名, 19日15名, 20日6名であり, 発生のピークは18日の44名で単一曝露感染を示した.
    2) 患者数は, 204名中69名 (33.8%) であり, その主な臨床症状は, 発熱 (94.2%), 頭痛 (91.3%), 咽頭痛 (66.7%), 嘔気 (26.0%) 及び腹痛 (23.1%) であった.
    3) 特に症状の重い7名の患者の咽頭培養検査を行ったところ, そのうちの6名からA群T12型溶連菌が分離された.
    4) 小学校に冷蔵保管されていた7月16日から18日までの学校給食について細菌学的検査を行ったところ, 17日給食の “焼そば” からA群T12型溶連菌が分離された.このことは, 学校給食の “焼そぼ” が原因食品であることを示唆した.
    5) 8月8日, 小学生の咽頭培養検査とASO価及びT抗体測定を行った.その結果, A群T12型溶連菌が94名中10名 (10.6%) から分離された.ASO価166単位以上の比率は, 患者群では92.3%であったが, 健康者群では38.5%であった.T抗体は93名中29名 (31.2%) 保有していたが, そのうちの1例のみがT12型抗体を持っていた.
    6) 発生6ヵ月後の両校児童及び生徒のA群溶連菌保菌状況は, 小学生26.7%, 中学生35.9%であり, A群溶連菌分離株61は, T12型 (88.5%), T4型 (1.6%) 及び菌型不明 (9.8%) であった.小学生104名及び中学生90名のASO価分布は, 両校において166単位にピークを示した.6ヵ月間でT12抗体を獲得した小学生は, 11例 (18.6%) 増加した.
    以上の事実から, この集団発生は, 食品に起因したA群T12型溶連菌による咽頭炎と考える.
  • 藤森 一平, 河野 通律, 竹田 義彦, 関田 恒二郎, 安達 正則, 早川 正勝, 荻原 宏治, 野口 龍雄, 飯塚 邦芳, 玉川 鉄雄, ...
    1982 年 56 巻 12 号 p. 1186-1195
    発行日: 1982/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    昭和56年11月から昭和57年1月までに来院した急性上気道炎 (かぜ症候群, 急性咽頭炎) で, 発症後2日以内の患者72例に非ステロイド性消炎・鎮痛剤クリノリル (一般名スリンダク) を1日量300mgとして1回150mg1日2回4日間投与した結果, 本剤の有用性はかなり高いと思われるので報告する.
    評価項目別改善度をみると落痛症状では咽頭痛, 嚥下痛, 頭痛, 腰痛, 関節痛および筋肉痛において, 投与3日目に51.7-75.0%, 5日目には69.2-92.5%の改善率を示し, 発熱については, 投与3日目の評価25例全例に解熱効果が認められた.しかし, 全身症状の倦怠感および各種気道症状については, 改善率が投与3日目, 5日目を通じて29.4-55.6%と比較的低い結果であった.また, 局所炎症症状では, 咽頭および扁桃の発赤および腫脹が投与3日目に52.8-65.0%, 5日目には72.4-100%とかなり高い改善率が認められた.
    また, 副作用は2例 (2.8%) に軽度の胃部不快感が観察されたのみで, 本剤の忍容性が良いことが認められた.
    また, 本剤に対する各医師の有用性評価も極めて有用19例 (26.4%), かなり有用26例 (36.1%), やや有用22例 (30.6%), どちらともいえない5例 (6.9%) で, やや有用以上で67例 (93.1%) と高い有用率を示した.
  • 抗生物質との併用実験を中心として
    砂川 慶介, 秋田 博伸, 山下 直哉, 城崎 慶治, 岩田 敏, 岩崎 由起夫, 佐藤 吉壮, 東條 雅宏, 小佐野 満, 市橋 保雄
    1982 年 56 巻 12 号 p. 1196-1202
    発行日: 1982/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    免疫グロブリン製剤の細菌感染症に対する効果を検討する目的で, P. aeruginosa, K. pneumoniae, S.marcescens をマウス腹腔に接種し実験的感染症のモデルを作製し, これに各種の静注用免疫グロブリン製剤 (Pep-lg, PEG-Ig, S-lg) 及び抗生剤 (CTX, PIPC, TOB) を投与し, これら薬剤の単独での効果, 抗生剤とPep-lgの併用効果を検討し, 以下の結果を得た.
    1) P.aeruginosa感染症に対し, Pep-Ig, PEG-Ig, S-Igはいずれも腹腔内単独投与で有効であった.
    2) Pep-lg, PEG-lgは腹腔内投与の方が静脈内投与よりも生存率が高く, Pep-Igの検討では投与量を多くすると生存率は上昇し, 投与菌量を増量するとPep-Igの効果は低下し, 一定量以上の免疫グロブリンが必要である事が推測された.
    3) いずれの菌, 抗生剤の組み合わせにおいても, 抗生剤とPep-Igの併用効果が認められた.
    4) 各免疫グロブリン製剤中の使用菌に対する抗体価を測定したところ, Pep-IgとPEG-Igの間に著明な差はなく, P.aeruginosa, K.pneumoniaeに対しS-Igの抗体価がやや低いという結果が得られた.
    5) Pep-lgの感染に対する効果は, 抗体価, 食菌作用の増強, 補体alternativepathwayの活性化に関係がある事がうかがわれた.
    以上の結果より, 抗生剤とPep-lgの併用はP. aeruginosa, K. pneumoniae, S. marcescens 感染に対し有効な治療法であると考えられた.
  • 秋田 博伸
    1982 年 56 巻 12 号 p. 1203-1215
    発行日: 1982/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    抗生剤抗与による副現象は現在まだ避け難いものとして多くの問題も残しているが, その内, 腸内細菌叢の変動は臨床上よく遭遇するものである. 著者はこの変動を検討する為にIsolator内で, 同一飼料にて飼育した無菌マウスを使用し, 腸内細菌叢の主要構成菌, Gram陽性, 陰性, 嫌気性のうち4種を選択し, 下記の如く, 単一, 2種, 4種感染マウスを作成し, 従来Gram陰性菌に対して用いられたABPC, GMと現在, 尚開発の盛んなCephem系薬剤を筋肉内へ投与した時の腸内細菌叢の変動を検討した.
    (1) E.coli単一感染マウス
    (2) Ecoli, Lacto.2種感染マウス
    (3) E.coli, St.faecalis, Lacto, Bac.4種感染マウス
    その結果, 胆汁排泄の少ないといわれるGM, CETの投与例では, 菌の減少は認めなかった.ABPC投与例では単一感染マウスでE.coliに対するABPcのMlc値の上昇を投与2日目より全例に認め菌数の変動は認めなかったが, 2種, 4種感染マウスではMIC値の上昇は認めず, E.coli, Lacto.で菌数減少を認めた.CEZ投与例ではE.coliの著明な減少を認めたが, Bacは著明に減少する例と, 軽度減少する例とを認めた.St.faecalisの減少は認めなかった.CMZ, LMOX, CMX投与では, 投与3日目よりE.coli, Bac.の著明な減少を認め, CMX投与例ではLacto.も同時に著明に減少した.St.faecalisは菌の減少を認めなかった.
    以上の結果, 胆汁排泄が良く, 広域スペクトルを有する抗生剤を筋肉内投与すると, 感受性菌の減少, 耐性菌の残存という菌交代を惹起させる傾向を認めた.
  • 秋田 博伸
    1982 年 56 巻 12 号 p. 1216-1224
    発行日: 1982/12/20
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    抗生剤治療における菌交代やopportunistic infection等の副現象は感染症治療を困難にしている.そこで菌交代の生ずる問題点の1つとして腸内細菌叢に着目し, 臨床例の抗生剤投与時における腸内細菌叢の変動を検討した.又, 尿路感染症 (UTI) 治療時の菌交代の出現頻度と使用抗生剤との関連についても合わせて検討した.その結果胆汁排泄の少ないと言われるCET投与例では腸内細菌叢の変動は明らかでなかった.ABPC, CEZ投与例ではそれぞれ感受性菌のSt. faecalis, ClostridiumとE.coliの減少を認めるのみで, 他の細菌の変動は認めなかった.広域スペクトルを有し, 抗菌力の優れた新しいCephem系薬剤であるCMZ, LMOX, CMXの投与例では, 投与後3日目にはSt. facealis, yeastを除いて他の好気, 嫌気性菌は検出されなくなり, 同時に下痢症状を高頻度に認めた.特にCMX投与例ではSt. faecalisのみが糞便から検出された.この傾向は乳児で特に著明であった.投与中止後, 嫌気性菌の回復は迅速であり, 好気性菌は遅れる傾向であった.下痢症状は投与を中止しなければ回復せず, 腸内細菌叢の変動との深い関係が示唆された.又UTI治療時の菌交代は腸内細菌叢への影響が明らかでないCET, Aminog-1ycosidesの投与では認めなかった.それに反して, 腸内細菌叢への影響が認められるABPC, CEZ, Cephem系の薬剤の使用例ではUTI治療時における菌交代の出現は6/23 (26%) であり, 腸内細菌叢への影響はUTI治療時の菌交代の出現頻度との間に関連を認めた.
  • 浦山 京子, 稲松 孝思, 島田 馨
    1982 年 56 巻 12 号 p. 1225-1229
    発行日: 1982/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    86歳の女性のSBPCによる腸炎 (偽膜性腸炎疑い) にClostridium difficile, Klebsiella oxytoca, Enterobacter敗血症を併発した症例を経験したので報告する.患者はCefmenoxime, PCG, Metronidazoleにて化学療法をおこなったが敗血症性ショック, DICを合併して死亡した.患者の糞便, 血液から分離されたC. difficileのエンテロトキシン産生能は陽性であった.C. difficileの血液からの分離は本邦では本症例が初めてであると考えられる.
  • 那須 繁, 福岡 義輔, 熊谷 幸雄, 岡村 精一, 沢江 義郎, 永渕 正法
    1982 年 56 巻 12 号 p. 1230-1236
    発行日: 1982/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    深在性真菌症の治療としてアンホテリシンBの出現により, 生存率は飛躍的に向上した.しかし, 副作用が強く治療を断念せざるをえないことも多い.今回, 肺クリプトコックス症, 脳内肉芽腫を伴なうクリプトコックス性髄膜炎に対し, 新しいイミダゾール系抗真菌剤miconazoleの静注および脳室内注入により軽快せしめた1例を経験した.症例は63歳, 男子.頭痛, 嘔吐, 咳漱を主訴とし当科入院.検査の結果, 肺クリプトコックス症, 脳内肉芽腫を伴なうクリプトコックス性髄膜炎と診断した.当初, アンホテリシンBとフルシトシンの併用療法を行ない, 症状は幾分軽快したものの, 数々の副作用のために治療を断念せざるをえなかった.そこで側脳室前角にOmmaya reservoirを留置し, miconazole 1日10mgの脳室内注入と1日1200mgの静注を連日行なった.その結果, 症状, 検査成績の著明改善を認めた.miconazoleは本邦では一般にはまだ入手困難であるが, 副作用が少なく今後新しい抗真菌剤として大いに期待される.
  • 1982 年 56 巻 12 号 p. 1281-1283
    発行日: 1982/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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