感染症学雑誌
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56 巻, 6 号
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  • 成川 新一, 中塩 哲士, 中村 正夫, 原沢 功
    1982 年 56 巻 6 号 p. 457-465
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    嫌気性菌感染症の起炎菌として, 患者検体より分離されたBacteroides fragilis, Fusobacterium varium, Peptococcusasaccharolyticus, Peptostreptococcus anaerobius と標準株のBacteroides asaccharolyticus (Rm-1), Veillonellaalcalescens (ATCC 17745) を用い, 5%ムチン浮遊液としてdd系マウスの背部に1回皮下接種した.B.asaccharolyticus以外では, 各菌接種により単独感染膿瘍を形成し, B. asaccharolyticusでは湿性壊疽を起こした.マウスの膿中のvolatile fatty acids (VFA) とnon-volatile fatty acids (NVFA) について, gas-liquidchromatography (GLC) で分析を行い, 培養培地および患者検体のクロマトグラムと比較検討した.その結果, 各菌の単独感染膿中のVFAは培養培地のVFAと同様のパターンが得られたが, NVFAでは両者のパターンは異なっていた.ヒトの膿の分析において, 2種類以上の嫌気性菌のVFAは, 同じ菌を用いてマウスに単独感染させた場合の膿から検出されるVFAの総和と考えられるパターンが得られた.好気性菌および通性嫌気性菌感染材料からは, GLC分析において, VFAのiso-Butyric (iB), Butyric (B), iso-Valeric (iV), Valeric (V) iso-Caproic (iC), Caproic (C) の各acidはいずれも検出されないので, これらのacidのうち, いずれかを産生する嫌気性菌については, その存在あるいは菌種同定に, GLC分析を利用することができると考える.
  • 武内 俊彦, 塚田 勝比古, 広瀬 昭憲, 藤野 信男, 伊藤 誠, 加藤 政仁, 山本 俊幸, 川俣 順一, 山之内 孝尚, 李 鏑注
    1982 年 56 巻 6 号 p. 466-475
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1978年より1979年にかけて名古屋市立大学医学部において, 実験動物に関係する医師に流行性出血熱の発生をみた. 今回, 本症の臨床像, 臨床検査成績について検討したので, その特徴および治療について報告する. 発症11例は全例男性, 年齢は26~40歳で, 動物実験あるいは動物飼育に関係した医師である. 流行性出血熱の診断は韓国高麗大学李教授に御依頼し測定していただいた韓国型出血熱蛍光抗体値の成績より確診された症例である. 全例突然の悪寒と高熱 (38~40℃) で発症し, 多くは著明な腰痛, 筋肉痛を伴い, 有熱期間は3-10日で, 解熱とともに自覚症の消失と多尿が認められた. 37000ml/日以上の多尿は8例にみられた. 本疾患の特徴である口腔粘膜内出血斑などの出血傾向が認められたものは3例で, 凝固学的に血管内凝固症候群の診断が得られたのは3例であった. 血液生化学的検査では, 発病初期にはほとんどの症例で白血球数, 血小板数がおのおの5,000以下, 5×104以下の減少を示し, 全例肝機能異常が観察され, 凝固学的あるいは臨床的に出血傾向を認めた5例の症例では, GOT, GPT, LDHの上昇度が強く, 総蛋白, コリンエステラーゼの値は低値の傾向を示した. また血中尿素窒素の上昇は5例にみられたが, 腎不全などの状態を示すことなく全例完治した. 出血傾向, 腎不全, ショックなどの重篤な合併症の発生にはDICの関与が強く示唆されDICに対する処置が重要と考える.
  • 久保田 武美, 高田 道夫
    1982 年 56 巻 6 号 p. 476-485
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    骨盤内病巣より菌が検出された27例 (35病巣) ならびにバルトリン腺膿瘍より菌が検出された41例を対象にして, 産婦人科領域における複数菌検出例の実態について検討した.
    1) 複数菌検出例の頻度は骨盤内感染症では68.6%であり, 婦人科感染症に比し産褥感染症, 帝王切開術後感染症において高頻度であった.バルトリン腺膿瘍においては19.5%に複数菌検出例がみられた.
    2) 骨盤内から複数菌が検出された患者では全例に抵抗性の減弱をきたす因子が関与し半数の例で既に化学療法が行われていた.
    3) 検出菌種数は通常2~3種であるが, 子宮内感染, パルトリン腺膿瘍では4種のこともあった.
    4) 検出菌の組み合わせではグラム陰性桿菌と嫌気性菌との組み合わせが最も多く, 中でもE.coli+Bacteroidesが多かった.
    5) 同じグラム陰性桿菌とBacteroidesの組み合わせでもE.coli+Bacteroidesは重症, Klebsiella+BacteroidesおよびP.cepacia+Bacteroidesでは軽症というように菌種の組み合わせの違いが感染の成立に関与していると思われた.
    6) 複数菌検出病巣における菌の変動パターンを, 初回検出菌残存, 交代, 一部残存一部交代の3群に分けて検討した.菌種の変動と病状変化の関係から, 複数菌検出病巣における検出菌の種類, その組み合わせ, その消長が感染症の成立に関与すると思われた.
  • 臨床的ならびに疫学的検討
    西村 忠史, 田吹 和雄, 高島 俊夫, 広松 憲二
    1982 年 56 巻 6 号 p. 486-495
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    昭和52年7月, 本学病院の小児病棟で入院中の患者31名中に, salmonella typhimuriumによる院内感染 (下痢症9名, 保菌者6名) が発生した.
    下痢症患者は全員高熱と腹痛, 発症時より頻回の水様ないし泥状下痢便を認め, うち8名は血便も認めた. 白血球数は正常ないし軽度増加, CRP強陽性を示し赤沈は充進した. また患者糞便より分離したS. typhimuriumを抗原として測定した凝集価の経日的変動では, 発症後2~3通間で最高凝集価を示し, 下痢症患児は160倍以上を示した.
    疫学的ならびに細菌学的調査では, 医療従事者, 給食関係者, 出入商人などには菌陽性者は認めず, 患児の家族内調査で, 1下痢患児の母親が下痢の既往をもちS. typhimuriumの保菌者であったことが分かった. また環境汚染調査の結果, 便所のフラッシュバルブからS. typhimuriumが検出され, 同便所をこの母親が使用した事実も判明した. またその他の採取材料からはすべて菌陰性であった. 以上の成績より, 本事例は保菌者の母親によってもち込まれたS. typhimuriumによる下痢症の院内流行であったと推察された.
    感染防止対策としては, 患児および保菌者の隔離と消毒, 滅菌の徹底, とくに一般患児と医療従事者の手洗いの励行と薬剤の除菌効果により, 以降新たな下痢症患者ならびに保菌者の発生はみなかった. また治療としてはCP, ABPC, KMなどによる化学療法では除菌効果がみられず, Fosfomycinを投与することにより全例除菌することができた.
  • 新堀 精一, 新島 恭樹, 川上 隆, 薩田 清明, 武内 安恵
    1982 年 56 巻 6 号 p. 496-508
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1979年7月から1980年6月における栃木県下のブタを対象に, その血清中のA型インフルエンザウイルスに対するHI抗体価を測定し, 血清疫学的研究を行うと共に, 自然感染ブタにおける移行抗体について検討し, 次のような成績が得られた.
    1) Aブタ型株は, ブタの間で絶えず流行が繰り返えされ, 一旦, 流行すると, その拡大も激しく, また, 獲得HI抗体も高く, その対象地区のHI抗体保有率が100%6に達することが認められた.
    2) Aホンコン型株は, Aブタ型株ほど激しい流行は呈さず, A/Bangkok/1/79株の月別の抗体保有率は, 肉用ブタで10~50%6を示し, 一般に緩慢な流行の持続が認められた.
    3) A/Bangkok/1/79株に対する抗体陽性のブタで他のAホンコン型の動きをみると, 最近の流行株はもとより, A/山梨/20/75株のような旧い株にも19.2%6の抗体保有率が認められた.
    4) Aソ連型株に対する抗体陽性ブタが2頭に認められた.
    5) 母ブタから初乳, 常乳および子ブタ血清へのA型インフルエンザウイルスの抗体の移行は, 母ブタの抗体価のレベルに左右され, 母ブタのA/NJ/8/76株のHI抗体価2,048倍のもので, 初乳1,024倍, 常乳256倍および1ヵ月齢の子ブタ血清で64倍の抗体の移行を認めたが, 生後2, 3ヵ月齢に達すると, その値は16倍未満に低下した.
  • 粟津 緑, 中野 康伸, 武内 可尚
    1982 年 56 巻 6 号 p. 509-512
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年海外旅行の簡便化, 国際交流の緊密化などからわが国にも一般の予想以上に多くのマラリア患者がいると言われている.
    今回私達は2例の三日熱マラリアを経験し報告した. 2例とも来日後3, 4週目までクロロキンを予防内服しており, その後約2ヵ月して発症した. 症状は発熱・頭痛で末血標本よりマラリア原虫が検出され, 潜伏期なども考え合わせ三日熱マラリアと診断した. 発熱発作はクロロキンにて行い第1例のみFansidarを併用した. 根治療法は感染地がパプァニューギニアであることを考慮しプリマキン30mgを7日間, 1ヵ月おいて2回投与した. 現在に至るまで2例とも再発を見ていない。
    実際にマラリアの症例を経験し, 海外旅行歴があって発熱を訴える患者には, まず疑いを持つことが大切であることを痛感した。
  • 1982 年 56 巻 6 号 p. 540-542
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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