感染症学雑誌
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56 巻, 7 号
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  • 親ウイルスDNA合成の開始前と後における細胞内ウイルスDNAの分子形の特性
    吉村 教皋
    1982 年 56 巻 7 号 p. 543-551
    発行日: 1982/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ヒトサイトメガロウイルス (HCMV) をWI-38細胞に感染させ, ウイルスDNA合成開始の前と後で, 細胞内ウイルスDNA分子をCsCl密度勾配平衡遠心法で単離しこれを電子顕微鏡 (Kleinschmidt法) で検索した. ウイルスDNAの複製開始前 (感染後4時間及び42時間) に収穫した細胞には二本鎖の線状DNA分子の他に, 環状分子とconcatemerが観察された. 単位大の線状二本鎖分子の長さは50±2μmで, 全分子数の91%~81%を占めた.単位大の環状二本鎖分子も同じ長さで, 全分子数の1%~4.5%を占めた. 分枝のない単位大の環状分子が観察された事実は, HCMV-DNAは末端部かその近くにくり返し塩基配列をもつこと, この部は感染細胞内でエクソヌクリエースによる消化を受けること, そして一本鎖部は互いに補い合って環状分子となりうることを暗示していると考えられた. 終末小環をもつウイルスDNA分子も5%~6.7%に観察され, これは逆順序に並んだくり返し塩基配列が末端部附近に存在することを示唆するものと考えられた. ウイルスDNA複製開始後 (感染後53時間) のサンプルでは複製性の“eye”loopまたはforkをもつ線状分子, およびconcatemerも観察されたが, 枝分れ分子をもつ単位大環状分子は見い出されなかった.
  • 町田 裕一, 深沢 信博, 金沢 義一
    1982 年 56 巻 7 号 p. 552-559
    発行日: 1982/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    従来のジフテリア, 百日咳, 破傷風に対する三種混合ワクチン (旧DPTワクチン) と, 改良三種混合ワクチン (改良DPTワクチン) のラットに対するIgE抗体産生能をラヅトhomocytotropic antibodyを指標として比較検討した.
    旧DPTワクチン感作ラヅト27例の感作16日後の血清中ジフテリアトキソイド, 破傷風トキソイドに対する抗体陽性率は, それぞれ78%, 19%であり, 陽性例についての平均抗体価は, それぞれ32倍, 2倍であった.
    一方, 改良DPTワクチン感作ラット27例の感作工0日後の血清中ジフテリアトキソイド, 破傷風トキソイドに対する抗体陽性率は, それぞれ41%, 7%であり, 抗体陽性例についての平均抗体価は, それぞれ2倍, 1倍であった.
  • 天児 和暢, 向野 賢治
    1982 年 56 巻 7 号 p. 560-565
    発行日: 1982/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    臨床材料より分離したレイ菌89株の各種動物の血球に対する凝集能を調べた. 動物種は, ヒト, モルモヅト, ニワトリおよびウシである. このいずれかに凝集性を示す株は, 66株で74%であった. ヒトおよびウシの血球を凝集する株は少なく7株であった. 最も多い凝集パターンは, モルモット, ニワトリの血球に対して凝集性を示すもので49株あった. ヒトの尿中での凝集に関与していることの明らかな線毛 (US5型線毛) に対する抗体を作製し, この線毛抗原の分布と血球凝集パターンとの関係をスライド凝集反応を用いて調べたが. 血球凝集パターンと無関係に多くの株にこの線毛の抗原が分布していることが明らかになった. 電子顕微鏡による線毛の観察でも, 形, 抗原性の異なるさまざまな線毛が多くの菌に分布していることを知った.
  • Enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) による血清抗体価測定の試み
    有田 耕司, 山内 英子, 水野 新一, 牧 淳
    1982 年 56 巻 7 号 p. 566-573
    発行日: 1982/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    CampyJobacter fetus subspecies jejmi (以下C. jejuni) 腸炎患児血清 (23例, 38検体) 中のC. jejuniに対する抗体価を, Fnzyme-linked immunosorbent assay (EHSA) により測定し, 菌体凝集価および補体結合反応 (CF) による抗体価と比較した.
    ELISA抗体価を, 抗原陽性we11の吸光度/抗原陰性wellの吸光度で計算した場合, 対照群のEHSA・19G抗体価の平均値±標準偏差 (S・D・) は2.47±0.75, ELISA・IgM抗体価の平均値±S・D・は168± 0.42であった. C.jejuni腸炎患児血清中のELISA抗体は, 胃腸炎症状出現後比較的早期 (第5病日以後) から出現し, 発病後2~6週の回復期血清では, 免疫抑制剤投与を受けていた1名を除き, 全例でELISA抗体は陽性 (≧ 対照群の平均値+3S.D.; ECISA, IgG抗体価≧4.7, EHSA・IgM抗体価≧2.9) を示した. そしてELISA・IgG抗体は約3ヵ月間, ELISA・IgM抗体は約2ヵ月間陽性で, その後陰転化した. またEHSA・IgG抗体価と菌体凝集価, ELISA・IgM抗体価とCF抗体価との間には, それぞれr=0・785 (P<0.01), r=0.818 (P<0.01) の有意の相関が得られ, ELISA・IgM抗体価と菌体凝集価との間にもr=0.689 (P<0.01) の相関がみられた.
    以上の成績から, C.jejuniに対するEHSA抗体価の測定は, C.jejuni感染症の血清診断法として有用であると考えられた.
  • 梶岡 実雄, 田口 文章
    1982 年 56 巻 7 号 p. 574-581
    発行日: 1982/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    BKウイルス (BKv) とJcウィルス (Jcv) の赤血球凝集 (HA) 素に対する非特異的阻止物質の分布状況とその性状を把握するために, 両ウイルスをもちいてヒト血清20例およびプール血清について赤血球凝集抑制 (HI) 試験を実施し, 次の成績を得た.
    1.未処理ヒト血清における平均HI活性値はBKvではlog, 7.1, Jcvではlog25.8を示し, BKv平均HI値がJcv平均HI値よりも高い値を示した.2.BKVに対する非特異的HA阻止物質は, KIO4, RDE処理により完全に除去可能であったが, アセトン処理では不完全であった. 一方, Jcvに対する非特異的HA阻止物質は, KIo4, RDE, アセトン処理のいずれの方法をもちいても完全に除去可能であった.
    3.BKvとJcvに対する非特異的HA阻止物質は, 遠心分画法によりIgM画分に沈降した. しかし, 2-mercaptoethanol (2-ME) 耐性, KIO4感受性を示すことより, IgMグロブリンと分別することができた.
    4.非特異的HA阻止物質を含むIgM画分を免疫電気泳動にかけるとα2macroglobulin (α2M) の単一沈降線を形成した. しかし, 抗α2M血清による吸収試験では, 非特異的HA阻止物質の活性は除去できなかった.
    これらの結果は, BKvとJcvに対する非特異的HA阻止物質はIgMとほぼ同. じく沈降するが, IgMでもα2Mでもないことを示唆する. しかし, その本態については未だ不明であるため, 今後さらに詳細に検討する必要がある.
  • 田中 信介, 渡辺 言夫, 宮沢 博, 芦原 義守
    1982 年 56 巻 7 号 p. 582-587
    発行日: 1982/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    妊婦145名についての風疹抗体測定を, 近年開発されキット化されたRUBEHSA®を用いて行い, HIと比較した. また, 青年女子25名に風疹ワクチンを接種し, そのうち18名について抗体価を測定, その副反応も検討した.
    結果は, RUBELISA value 0.14以下を抗体陰性とすると, 抗体保有率は74.1%であった. HIでは23名が8倍未満で, 抗体保有率は84.7%であった. これら2方法の一致率は88.0%であり, 相関係数は0.85であった. 1977年秋の風疹ワクチン接種開始時すでに16歳以上であった予防接種対象外の者が現在妊娠可能年齢層となっており, いまだに妊婦の風疹感染の可能性が残されていると考えられた.
    青年女子のワクチン接種では8名32%に副反応を認め, すべてが関節症状を呈し, 関節痛6, 関節腫脹と痛み2であった. 抗体価は測定全例で上昇し, 平均HI価は25.1であった。年齢の高い女子の場合には, 副反応としての関節症状が重要であることが注目された.
  • 聴性脳幹反応を用いて
    東條 雅宏, 森川 良行, 砂川 慶介, 南里 清一郎, 山下 直哉, 秋田 博伸, 堀田 昌宏, 市橋 保雄, 溝井 一敏
    1982 年 56 巻 7 号 p. 588-593
    発行日: 1982/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    アミノ配糖体剤の投与ルートに関して, 現在多く議論されているが, 今回われわれは, 新生児に点滴静注で投与した際の血中濃度につき検討した. 新生児にTobramycinを2.5mg/kg 1 時間点滴静注で12時間ごとに投与し, 血中濃度を測定したところ, peak値は1.80~5.75μg/ml (3.54±1.18) でtrough値は, 0~1.86 (0.50±0.61) であった. peak値は予想より低い値が多かったが, 蓄積性もなく比較的有効な血中濃度がえられた. また, アミノ配糖体剤の副作用としての聴力障害を新生児期に早期診断するために, Anditory Brain stem Responseを用いてみた. Tobramycin投与例7例中1例にABRの異常を認めたが, アミノ酸糖体剤による障害か否かは判別できなかった. しかし現在, 新生児期の聴力障害につき, ほかに他覚的診断法がないため, 経時的にABRを行うことは意義があると思われた.
  • 藤森 一平, 竹田 義彦, 小林 芳夫, 井原 裕宣, 斉藤 篤, 小林 宏行, 小山 優, 渡辺 健太郎, 中川 圭一, 山岡 澄夫, 真 ...
    1982 年 56 巻 7 号 p. 594-618
    発行日: 1982/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    持続性アモキシシリン製剤 (C・AMOX) の吸収排泄および臨床効果について検討を行った・3施設で健康成人ボラソティアを対象として, C・AMOX500mgおよび1,000mg軽食後1回投与・ならびに500mgおよび1,000mg1日2回空腹時連続投与AMPC500mg軽食後および空腹時1回投与し, 血中濃度・尿中排泄を検討した. その成績は, C-AMOXはAMPCに比べ明らかな持続性を示し, 500mgと1・000rngの投与でDoseresponseが認められ, 連続投与による蓄積性は認められなかった. また本剤投与10~12時間後までの尿中回収率は63~69%であった.
    呼吸器感染症109例, 尿路感染症59例, 腸炎10例の合計178例に原則として本剤500m9を1日2回食後経ロ投与し臨床効果をみた. 著効26例, 有効108例, やや有効24例, 無効20例であった. 有効率は75.3%であった. 本剤投与前後の細菌学的検索をなし得た症例は80例でグラム陽性菌20例, グラム陰性菌56例および混合感染14例で菌消失率はそれぞれ85.7%, 64.8%および58.3%であった.
    副作用は183例中薄麻疹, 悪心, 軟便各1例および胃部不快感3例を認めたが, 悪心を呈した1例を除いて全例投与を継続した. 本剤投与後の臨床検査値異常は, 白血球数減少, 好酸球増多, GOT上昇, GOT・GPT上昇, GPT・ALP上昇, 血清尿素窒素・血清クレアチニン上昇それぞれ1件計6件であった.
  • 高橋 寛彦, 国広 誠子, 中村 功
    1982 年 56 巻 7 号 p. 619-622
    発行日: 1982/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    赤痢菌は, 稀に小児外陰膣炎の一次的病原体となり得る. 最近我々はShigella flexneri 2aによる小児外陰腔炎の一例を経験したので報告する. 症例は6歳女児で黄色帯下を主訴として受診した. 外陰部からShigellaを分離したので4日後再検した. 膣, 外陰部から再びShigellaを分離したが直腸内からは分離し得なかった. 治療はFosfomycinを使用, 5日間経口投与で急速に軽快治癒した. 直腸内からShigellaを分離し得なかったことおよび発症前に下痢の既往もないことから, 赤痢による二次感染ではなくShigella flexneri 2aによる一次感染と考えられた. 家族の便培養も陰性で感染源は不明であった.
  • 明石 光伸, 野村 邦雄, 斉藤 厚, 原 耕平, 石野 徹, 藤井 薫, 荒木 潤, 宮本 勉
    1982 年 56 巻 7 号 p. 623-629
    発行日: 1982/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性. 家族歴では兄の子2人が25歳と30歳頃進行性の痴呆状態で死亡している.
    昭和40年頃より慢性関節リウマチのため, 時々通院していたが, 52年4月頃よりリウマチ肺臓炎を合併し, 労作時の呼吸困難や咳漱を認めるようになった. 53年2月頃よりフラフラ感, 軽度の言語障害を訴えるようになり, 同時に強い関節痛のため2月23日入院した.
    リウマチ肺臓炎の悪化も認められたのでステロイド剤の投与を行い, 1週間後には関節痛もほとんど消失したが, 次第にうつ状態となってきたのでステロイド剤を減量し, 1ヵ月後には中止した. しかし3月下旬には幻視が出現し, 呼びかけにも応答しなくなり次第に無動性無言症の状態となった. この頃より上下肢にミオクローヌス様不随意運動が出現するようになり, 昏睡状態となってきて全身状態が悪化し, 5月26日呼吸不全で死亡した。
    経過中脳波で周期一同期性放電がみられた。病理学的には大脳皮質全領域に海綿状態, 反応性肥大アストログリア, 神経細胞脱落がみられた。
    剖検時に採取した脳材料を用いてマウスへの接種実験を行ったが, 1年経過した現在までのところ発症を認めていない.
  • 1982 年 56 巻 7 号 p. 646
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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