BKウイルス (BKv) とJcウィルス (Jcv) の赤血球凝集 (HA) 素に対する非特異的阻止物質の分布状況とその性状を把握するために, 両ウイルスをもちいてヒト血清20例およびプール血清について赤血球凝集抑制 (HI) 試験を実施し, 次の成績を得た.
1.未処理ヒト血清における平均HI活性値はBKvではlog, 7.1, Jcvではlog25.8を示し, BKv平均HI値がJcv平均HI値よりも高い値を示した.
2.BKVに対する非特異的HA阻止物質は, KIO
4, RDE処理により完全に除去可能であったが, アセトン処理では不完全であった. 一方, Jcvに対する非特異的HA阻止物質は, KIo
4, RDE, アセトン処理のいずれの方法をもちいても完全に除去可能であった.
3.BKvとJcvに対する非特異的HA阻止物質は, 遠心分画法によりIgM画分に沈降した. しかし, 2-mercaptoethanol (2-ME) 耐性, KIO
4感受性を示すことより, IgMグロブリンと分別することができた.
4.非特異的HA阻止物質を含むIgM画分を免疫電気泳動にかけるとα
2macroglobulin (α
2M) の単一沈降線を形成した. しかし, 抗α
2M血清による吸収試験では, 非特異的HA阻止物質の活性は除去できなかった.
これらの結果は, BKvとJcvに対する非特異的HA阻止物質はIgMとほぼ同. じく沈降するが, IgMでもα
2Mでもないことを示唆する. しかし, その本態については未だ不明であるため, 今後さらに詳細に検討する必要がある.
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