感染症学雑誌
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56 巻, 9 号
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  • 甲田 雅一, 富川 久美恵, 前田 尚廣, 奈良 和子, 横山 祐子, 松崎 廣子, 千田 俊雄, 中谷 林太郎
    1982 年 56 巻 9 号 p. 747-752
    発行日: 1982/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    直腸部分泌液 (1例)・便 (1例)・尿 (3例)・中耳炎耳分泌物 (1例)・胆汁 (2例) より分離したPseudomonas putrefaciensの細菌学的特徴と, DNAの塩基組成及び抗生物質感受性を調べた.
    分離菌はすべてチトクロームオキシダーゼ試験陽性, 硫化水素を産生し, 糖分解試験ではグルコース, サッカロース, ラクトースともに陰性で, 従来この種の菌には使用されていなかったTCBS寒天培地に発育した. これらの成績から, TSI寒天培地で高層, 斜面ともに糖非分解性で, 硫化水素を産生し, TCBS寒天培地に発育する菌はP. putre faciensであると推定診断を下してもよいように思われた.
    分離菌のDNAのGC含量は, 47.3%, 53.1%及び54.0%の3種類であった.この成績と37℃での発育, SS寒天培地での発育等より, 47.3%のものはOwenの分類のGroup IIIに, その他はGroup IVに属すると考えられた.
    本菌はLCMには耐性を示したが, 他の多くの抗生物質には感性であり, EMに対してさえ感性を示した.ペニシリン系の抗生物質に対しては, 35℃ と25℃ で感受性に差が見られた.
  • 尾花 芳樹, 西野 武志, 谷野 輝雄
    1982 年 56 巻 9 号 p. 753-761
    発行日: 1982/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    臨床分離Acinetobacter calcoaceticus 40株を用いて, マウスに対する菌力を検討し, さらに実験的感染モデルの作製, 各種抗生物質の治療効果および非特異的生体防禦因子などの関与について検討を行った.本菌をmucin添加で腹腔内接種した時のLD50 (cells/mouse) を検討したところ約60%の株が>106cells/mouseというLD50値を示したが残りの40%については≦106ceuslmouseを示し, 15%が103-105cells/mouseの強い菌力を有していた.またmucin無添加で腹腔内あるいは静脈内接種した時のLD50値はmucin添加時に比べ, かなり低かった.実験的腹腔内感染症に対する抗生物質の治療効果を検討したところ, in vitro抗菌力の優れているテトラサイクリン系, アミノ配糖体系, ペプタイド系抗生物質の効果が, in vivoでも優れていることが認められた.非特異的防禦因子の関与について, マウス血清の影響, 多核好中球による食菌現象を検討したところ, 菌力が強い株では, いずれの作用にも抵抗することが認められた.
  • 尾花 芳樹, 西野 武志, 谷野 輝雄
    1982 年 56 巻 9 号 p. 762-768
    発行日: 1982/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Acinetobacter calcoaceticusの加熱死菌を用いて抗血清の作製を試み, 得られた抗血清移入およびワクチン投与によるhomologousおよびheterologousな菌種に対する感染防禦効果について検討した.本菌で免疫し, 得られた家兎抗血清の抗体価 (凝集素価) は256~≧1024倍を示した.またこの抗血清の移入による感染防禦効果を検討したところ, homologousな菌株および緑膿菌による感染症に対してオプソニン効果を示し, 有効であることが認められた.しかし大腸菌, セラチア感染症に対しては無効であった.また死菌ワクチンを投与したマウスを用いて, 同様に感染防禦効果を検討したところ, homologousな菌株および緑膿菌感染症に対して有効であることが認められたが, 大腸菌あるいはセラチア感染症に対しては無効であった.
  • 島田 馨, 稲松 孝思, 井熊 克仁, 浦山 京子
    1982 年 56 巻 9 号 p. 769-774
    発行日: 1982/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ABPCによる偽膜性腸炎の糞便よりCl.difficileとKl.oxytocaを分離した.このCl.difficileの毒素は腸管ループテストは陽性であったが, 培養細胞変性試験は陰性をしめした.このCl.dif后cileとKl.oxytocaをハムスター盲腸内に接種すると, Cl.difficile接種群, Cl.difficile+Kl.oxytoca同時接種群では充血性滲出性盲腸炎が作成されたが, Kl.oxytoca接種群の盲腸には病的所見はみられなかった.この事実より本症例の下痢の原因菌はKl.oxytocaでなくCl.difficileと推定された.
  • 池田 信也
    1982 年 56 巻 9 号 p. 775-782
    発行日: 1982/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    昭和48年5月から50年12月の間, 154名の小学校1-4学年の学童が合計11回溶連菌咽頭保菌が追跡され, その間48年11月, 50年10月に血清が採取され, 溶連菌の群別, T-型と血中T抗体とASOが検討された. 分離された溶連菌は合計417株で最も多かったのはT-1型で25.7%, ついでT-4型21.3%, T-12型17.4%であった. しかしその流行時期は異なっており, T-4型は48年初期, T-1, T-12型は48年後期から49年にかけて多かった. ASO値はこの年齢としては普通の分布であり, 咽頭培養の都度咽頭を観察したが異常はなかった. 両年度におけるT-抗体の陽性率はT-4型に対しては31.2%と32.5%, T-1型に対しては12.3%と13.0%, T-6型に対しては9.7%と5.8%, T-12型に対しては2.6%と3.9%で検出菌型と比例せず菌力の差を示唆した. また対象児から殆んど検出されなかったT-25, T-28, T-Imp 19に対しては抗体陽性者はなくT-抗体の特異性を示唆した. 対象児の中には複数のT抗体をもつものも少くなかったが, いつれか一つのT抗体をもつ者について抗体スコァとASOの関連を検討したが相関はないと考えられた. 2希釈段階以上の変動を陽転あるいは陰転としてT-4抗体のみを有する者について, 抗体の変動とT-4型の保菌の関連をみると, 陽転例においては他菌型よりもT-4型の保菌が有意に多く, 陰転あるいはすべての抗体が陰性であった者に較べてもT-4型保菌が多く, T-4の保菌がT-4抗体と特異的に関連していることが示唆された.
  • 柏木 征三郎, 林 純, 加地 正郎
    1982 年 56 巻 9 号 p. 783-788
    発行日: 1982/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    B型肝炎の集団発生は, 一般にまれとされているが, 某精神障害児施設において, 1976年から1978年にかけて園児9例および看護婦4例の計13例のB型肝炎の集団発生がみとめられた.当時は充分な検査ができず断定できない面もあったが, 近年に至り可能となったHBc抗体およびHA抗体測定法を用いてB型肝炎と診断した.
    この集団発生の8型肝炎は, 13例中11例は一過性であり, 9例は黄疸を伴っていた.また, このうち1例は慢性化しcarrierとなったが, この他に3例は肝炎を発症せずにcarrierとなったことがみとめられた.これらのcarrier化した4例 (14歳および17歳の男性, 15歳および12歳の女性) はかなり高年齢であり, carrier化する年齢を考える上で興味深い成績であった.
  • 澤木 政好, 三上 理一郎, 三笠 桂一, 辻村 みち子, 中野 博, 鴻池 義純, 播金 収, 増谷 喬之, 石井 勇次, 大堀 真知子, ...
    1982 年 56 巻 9 号 p. 789-798
    発行日: 1982/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症と上気道常在細菌との関係を明らかにする目的で, 呼吸器感染症の患老58例に経気管吸引法 (以下TTA) を74回施行し, その吸引物と同時喀出疾について細菌の検索を行ない比較検討した.TTAで細菌が検出されたのは40例54回であった.TTAと喀出疾では検出菌が一致しない例があり, 慢性下気道感染症では23%において検出菌が全く一致しなかった.検出された細菌の種類はTTA19種に対し, 喀出疾23種で大差はなかった.TTAでは54%に複数で細菌が検出された.細菌の出現頻度は, TTAではH. influenzaeが48%, 次いでS. pneumoniaeが33%と多かったが, B. catarrhalisとH. parainfluenzaeも15%に検出した.喀出疾ではN. nonpathogen 70%, α-streptcoccus 65%と多かったが, H. influenzae 24%. S. pneumoniae 28%と少なかった.慢性下気道感染症におけるTTAでは, 上述の細菌を90%に認め, 同一細菌がくり返し検出される例も多かった.
    以上の成績より, 呼吸器感染症では単独ないし, 複数の上気道常在細菌が容易に下気道に侵入すること, さらに慢性下気道感染症では侵入した細菌が下気道に定着し, 固有細菌叢を形成することが推測された.呼吸器感染症, 中でも慢性下気道感染症は “常在細菌感染症” が主体をなしていると考える.
  • 大谷 杉士, 青山 友三, 倉田 毅, 甲野 禮作, 佐藤 猛, 庄司 紘史, 高須 俊明, 塚越 廣, 萬年 徹, 水谷 裕迪
    1982 年 56 巻 9 号 p. 799-824
    発行日: 1982/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    全国の病院に入院したHSV脳炎症例を対象として, Ara-A投与の有用性を評価するための臨床試験を行なった.
    ウイルス血清学的検査成績を中心とした診断基準に従って, 研究会でHSV脳炎と判定した症例群を対象とする薬効評価試験では, 対照群 (43例) の致死率が33%であったのに対して, Ara-A投与群の致死率は8%であった.従って治療群の致死率は, 有意の差 (p<0.05) で, 対照群のそれより低かった.投与後90日で判定した後遺症の程度についても, Ara-A投与群が軽かった.
    Ara-A投与群内層別を行ない, 各層間の致死率, 後遺症の程度に関する検定を行なった.層別因子のなかで, Ara-Aの薬効に影響するものは, 投与開始病日であった.従って, 早期投与の励行により, Ara-A投与の効果は更に強められるものと考えられる.
    今回の臨床試験では, Ara-A投与全症例を調査したが, 重篤な副作用は認められなかった.
  • 大柳 光正, 三谷 頼永, 河合 喜孝, 岩崎 忠昭
    1982 年 56 巻 9 号 p. 825-831
    発行日: 1982/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Mycoplasmapneumoniae (以下M.Pn.と略す) による心炎 (心膜・心筋炎) は, 比較的稀で, 本邦では10例を数えるにすぎない.
    今回, M.Pn.感染症に合併した心炎の2例を経験したので報告する.
    症例1: 38歳, 男性.昭和55年11月20日, 発熱, 29日, 胸部X線上, 肺炎を指摘され入院寒冷凝集反応 (×8→×2048) と, M.Pn・抗体価 (CF) (×64→×4096) の著明な上昇を認め, M.Pn.感染と診断・入院時, 心電図上, 心房細動 (A.f.), 心室性期外収縮 (VPC) があり, A.f.は第2病日軽快.VPCは, 第6週でも認め, 運動負荷にて増悪した.以上より, M.Pn.心筋炎と診断.長期間の心電図の経過観察の重要性が示唆された.
    症例2: 78歳, 男性.昭和56年3月27日, 発熱にて入院.寒冷凝集反応 (×8→×256), M.Pn.抗体価 (CF) (×16→×128) の上昇があり, 第6病日, A.f.を来たし, 心エコー上, 心のう液貯留を認め, M.Pn.心膜炎と診断.A.f.は第2週にて消失.心拡大も軽快した.
    以上.M.Pn.感染に合併した心炎の2例を報告し, M.Pn・感染時の循環器系の検索の必要性と共に, 長期間の経過観察の重要性につき考察を加えた.
  • 1982 年 56 巻 9 号 p. 832-834
    発行日: 1982/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 1982 年 56 巻 9 号 p. 835
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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