ワイル病の病原レプトスピラには
Leptospira interrogans serovar icterohaemorrhagiaeと
serovar copenhageniとがあるが, それらは相互に類属性が強く, 血清型の同定は通常の免疫動物血清による凝集反応では困難であるため, モノクローナル抗体を作製し, それらの抗体を用いてレプトスピラの血清学的性状の解析を試みた. すなわち, 細胞融合法によって
serovar icterohaemorrhagiaeと
serovar copenhageniに対する20系統の凝集抗体産生ハイブリドーマを作製した. それらのうち, serovar
icterohaemorrhagiaeとserovar
copenhageniとにほぼ同じ価で反応する抗体 (SHIRMA4) と, serovar
icterohaemorrhagiaeに高い特異性を示す抗体 (RGAMA1) およびserovar
copenhageniに高い特異性を示す抗体 (SHIRMA1) との3抗体を用いて, レプトスピラ病患者と
Rattus norvegicusから分離した25株のレプトスピラに対する反応性を検討した. その結果, 25株のうち, 24株はすべてSHIRMA4と反応がみられた. さらに, それらの24株は, SHIRMA1とRGAMA1との2つの血清型特異性が高い抗体のいずれか一方だけに反応がみられ, 18株は
serovar icterohaemorrhagiae, その他の6株はserovar
copenliageniと同定された. さらに, 従来,
serovar copenhageniと
serovar icterohaemorrhagiaeとは, 血清学的に, 前者は完全型 (AB), 後者は不完全型 (A) という関係にあるとされていたが, 両者は, それぞれの血清型に特異性抗原と共通抗原とを有することが明らかになった. なお, 3抗体のいずれにも反応しなかった1株は, 従来の免疫家兎血清を用いた凝集反応によりserovar
autumnalisと同定された.
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