感染症学雑誌
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57 巻, 10 号
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  • 小林 芳夫, 藤森 一平, 王 三聘
    1983 年 57 巻 10 号 p. 839-845
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    各種疾患を有する16歳から80歳までの99名の患者から103検体の血清を採取し, 3回に分けてWashington大学に空輸し, micro immunofluorescence test (micro-IF) を実施した.
    任意に選んだ患者に拘らず, 99例中Chlamydia trachomatis (C. trachomatis) の抗体を17例 (17.4%) の血清中に証明した. 陽性者は被験者の各年齢層に分布した. 性別では男性 (9.7%) より女性 (29.7%) が有意に高率であった. 1例を除いては全てIgG抗体であった. このうち2例は再度採血した血清と比較してIgMまたはIgG抗体価の変動がみられ, 1例は1,024倍という高いIgG抗体価を示した. すなわち, 少なくともこれら3例は最近の感染を意味するものと考えられた.
    17例の陽性者のC. trachomatisに対する抗体の型別はCJ (3), H (1), B (2), ED (5), GF (6) であり, 性器感染由来の型別が大多数であった. これは欧米人にみられる所見と同様であった.
    4例は型特異抗体は陰性であったが, 網状体 (reticulate body: RB) 抗原に反応した. RBに対する反応の意義はなお不明であるが, 4例中2例はオーム病患者であった事は注目に値すると考えられた.
  • 小林 譲, 玉井 伴範, 小山 孝, 長谷川 均, 城口 朝雄, 佐田 栄司, 草場 公宏, 濱地 昌治
    1983 年 57 巻 10 号 p. 846-852
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ワイル病の病原レプトスピラにはLeptospira interrogans serovar icterohaemorrhagiaeserovar copenhageniとがあるが, それらは相互に類属性が強く, 血清型の同定は通常の免疫動物血清による凝集反応では困難であるため, モノクローナル抗体を作製し, それらの抗体を用いてレプトスピラの血清学的性状の解析を試みた. すなわち, 細胞融合法によってserovar icterohaemorrhagiaeserovar copenhageniに対する20系統の凝集抗体産生ハイブリドーマを作製した. それらのうち, serovar icterohaemorrhagiaeとserovar copenhageniとにほぼ同じ価で反応する抗体 (SHIRMA4) と, serovar icterohaemorrhagiaeに高い特異性を示す抗体 (RGAMA1) およびserovar copenhageniに高い特異性を示す抗体 (SHIRMA1) との3抗体を用いて, レプトスピラ病患者とRattus norvegicusから分離した25株のレプトスピラに対する反応性を検討した. その結果, 25株のうち, 24株はすべてSHIRMA4と反応がみられた. さらに, それらの24株は, SHIRMA1とRGAMA1との2つの血清型特異性が高い抗体のいずれか一方だけに反応がみられ, 18株はserovar icterohaemorrhagiae, その他の6株はserovar copenliageniと同定された. さらに, 従来, serovar copenhageniserovar icterohaemorrhagiaeとは, 血清学的に, 前者は完全型 (AB), 後者は不完全型 (A) という関係にあるとされていたが, 両者は, それぞれの血清型に特異性抗原と共通抗原とを有することが明らかになった. なお, 3抗体のいずれにも反応しなかった1株は, 従来の免疫家兎血清を用いた凝集反応によりserovar autumnalisと同定された.
  • 小林 一寛, 原田 七寛, 島田 俊雄, 坂崎 利一
    1983 年 57 巻 10 号 p. 853-861
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    下痢患者の糞便から分離した溶血性のあるAeromonas hydrophilaA. sobriaの腸管毒性試験をマウスあるいは家兎結紮腸管試験, 乳飲みマウス胃内投与試験およびY1培養細胞試験を使用しておこなった. 試験した2株は抗原的に異なると思われる腸管毒を産生したが, その毒素はコレラエンテロトキシンやE. coliの易熱性毒素 (LT) とも異なるものであった.
    本菌の毒素は家兎結紮腸管試験では出血性の液体貯留を招来する原因となり, Y1細胞に対して細胞壊死的活性を示し, この変性はCHO, BHK, Vero細胞に対しても認められた. これらのことからAeromonasV. choleraeE. coliが産生するcytotonicな毒素活性を示す毒素ではなくcytotoxicな作用を示す毒素を産生するものと考えられた.
    使用した両菌株によって産生された毒素は56℃, 10分の加熱処理で不活化された. さらにA.hydrophila AK-1株を使った培養温度による毒素産生は30℃から41℃の間で, 対数増殖期 (6時間培養) に産生された.
  • インフルエンザ様疾患の発生およびワクチン接種時期と学級閉鎖 (休校) との関係について
    薩田 清明, 乗木 秀夫, 長谷部 昭久, 熊谷 長慶
    1983 年 57 巻 10 号 p. 862-870
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1976~1983年の7年間のわが国のインフルエンザ様疾患の発生状況や1979~1982年の4年間の東京都内杉並区の公立小・中学校66校のインフルエンザワクチン接種時期および学級閉鎖または休校などについて調査し, 次のような成績が得られた.
    1) この7年間のインフルエンザ様疾患の発生状況は, いずれの流行年においても, おおむねそのピーク期は1月下旬から2月下旬の約1ヵ月間に認められた.
    2) 対象の66校 (延べ264校) の4年間の第2回目ワクチン接種完了日を月別にみると, 11月接種完了は203校の約77%, 12月接種完了は61校の約23%であった.
    3) ワクチン接種完了月別に学級閉鎖または休校の有無についてみると, 前者 (11月の203校中) では125校の約62%, 後者 (12月の61校中) では20校の約33%をそれぞれ示し, 明らかに前者の方が有意 (P<0.001) に高く認められた. また, 同様のことが学級閉鎖または休校した学級数の上でも明らかにされた.
    4) 同区内で4年間に学級閉鎖または休校した694学級のうち, 1) の同期間 (1月下旬~2月下旬) 内に約89%の615学級が認められた.
    以上のことから, わが国におけるインフルエンザワクチンの接種時期を再検討する必要性が考えられる. 即ち, 現行の第2回目のワクチン接種時期を1月に入って実施する方がよりワクチン効果を高められるものと思う.
  • 小林 宏行, 押谷 浩, 高村 光子, 河野 浩太
    1983 年 57 巻 10 号 p. 871-881
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    急性肺炎による呼吸不全を伴った症例 (15例) を対象に, 肺炎の早期治癒および呼吸不全の早期離脱を目的に広域抗生剤とステロイド剤の併用を行った.また家兎実験的肺炎を対象とし肺炎時呼吸不全発生のメカニズムおよびこれに対するステロイド剤の有用性について検討した.
    その結果, 肺炎発症後少なくとも4日以内にステロイドが併用されれば, 肺炎陰影の早期消失 (平均4.4日±1.7) およびPac2値の早期回復 (平均3.5日±1.4) が得られた.また, ステロイド併用によりその効果がみられなかった例は5例にみられ, これら症例のうち3例は高齢者高度進展肺炎で心不全併発による死亡例, 他の2例は肺炎治癒までに15日間を要した例であった. これら不成功例に共通することはステロイド併用開始時期の遅れ (平均7.6日±2.3) であった.
    肺炎時Pao2の低下は, 肺胞壁の著明な腫脹および肺胞腔内への滲出物充満等による肺内true shunt率増加にもとずくものとみられ, ステロイド剤はこれら肺胞壁の薄壁化あるいは滲出物を抑制しその結果呼吸不全の早期離脱を促進するものとみなされた.
    臨床的には以下の基準でステロイド併用が施行されることが望ましい. (1) 発病後4日以内, (2) Pao260mmHg以下, (3) 広域抗生剤の併用, (4) 使用期間は7日間以内.
  • 1. マウスに対する噴霧感染実験
    鉾之原 昌, 馬場 泰光, 吉永 正夫, 川上 清, 井上 博之, 地頭所 保, 寺脇 保
    1983 年 57 巻 10 号 p. 882-889
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    溶連菌の侵入門戸の探索の目的でマウスに自然感染に最も近い噴霧感染を行い, 溶連菌の侵入付着部位及び組織病変について検討した.溶連菌はLancefield分類によるA群12型を用い, 108~1010 CFU/mlの生菌及びFITCラベル菌液をマウス1匹当り2mlずつ噴霧し, 噴霧後経時的に2時間から10日目までに屠殺解剖し観察した.
    その結果, 溶連菌培養では, 咽頭で噴霧後3日目, 肺では噴霧後24時間以内で陽性であった.その他の臓器では陰性であり, 致死例は認めなかった.組織学的には, 光顕で口腔・咽頭粘膜での菌の付着が3日以内には証明され, FITCラベル菌でも24時間以内では証明された.また喉頭・気管は走査電顕で観察し, 24時間以内の気管で線毛細胞の乱れや線毛の脱落がみられた. 肺では, 生菌及びFITCラベル菌ともに, 気管支内や肺胞周囲に菌及び菌を貧食した細胞が噴霧後3日目までは多数みられた. しかし, 化膿巣は見出せなかった.
    以上の結果から溶連菌噴霧により, 口腔・咽頭粘膜では菌の付着は容易に起るが, 喉頭・気管では, 線毛細胞や粘液による清浄作用により菌の付着や侵入は起りにくく, 気管支・肺では多数の貧食細胞により速やかに貧食されたと考えられる. このことから気道の粘膜上皮によって溶連菌に対する親和性や防禦能の差があることが示唆された.
  • 前田 真一, 小林 克寿, 斉藤 昭弘, 秋野 裕信, 出口 隆, 西浦 常雄
    1983 年 57 巻 10 号 p. 890-896
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    マウスの感染防御試験において, いわゆるin vivo効果が優れているとされる第III世代のcephemsのAC-1370, cefoperazone (CPZ), cefbuperazone (CBPZ), ceftazidime (CAZ), ceftriaxone (CTRX) の食細胞機能 (遊走能, 貧食能, nitroblue tetrazolium (NBT) 還元能) に及ぼす影響についてcarbenicillin (CBPC) を含めて検討し, 以下の結論を得た.
    1. 遊走能試験の中のchemotaxisisに及ぼす影響については, 各薬剤濃度が100μg/mlではAC-1370のみが, stimulation index (S.I.) 1.40で増強作用を示し, 他剤には増強作用は認められなかった. spontaneous migrationについてもAC-1370のS.I.は1.43で, 増強作用を示し, 他剤には増強作用は認められなかった.
    2.各薬剤濃度が500μg/mlの条件下の貧食能試験で, AC-1370はS.I. 1.36で, 増強作用を示したが, 他剤には増強作用は認められなかった.
    3.尿中で, 末梢血分離多核球の貧食能を検討した.また600mOsm/l以下の浸透圧ではA℃-1370の100μg/mlの添加にて貧食率が平均24%上昇した.
    4.各薬剤濃度が267μg/mlの条件下のNBT還元能試験で, AC-1370のS.I.は1.62で最も強い増強作用を示し, CPZとCBPZのS.I.は共に1.31を示し, 他剤は1.30以下であった.
    5.以上によってAC-1370には食細胞機能を全般に直接増強させる作用があるものと思われた.
  • 1983 年 57 巻 10 号 p. 936
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 1983 年 57 巻 10 号 p. 937-939
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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