感染症学雑誌
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57 巻, 2 号
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  • 東京および近隣市部の最近4年間の症例について
    町井 彰, 新田 義朗, 村上 義次
    1983 年 57 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1976年から1980年の4年6ヵ月の期間に東京都板橋, 練馬, 豊島区の3区およびこれらに近接する区, 都下および埼玉県などの市部の住民で都立豊島病院に入院した散発性急性ウィルス肝炎のうちnon-A, non-B型肝炎は20例であった. この期間のA型肝炎は24例, B型肝炎は22例であった. non-A, non-B型肝炎は現在ウィルス学的診断が確立されていないが, 平均発病年齢はB型肝炎より高く, 29歳までの男に特に多かったが, 60歳台の高年層にも発病例がみられた.検査成績ではbilirubin値の最高値は平均値でnon-A, non-B型肝炎と他の型との間に有意差はみられなかったが, 正常化に要した日数は他の型の肝炎より有意に長かった. GOT, GPTの最高値は平均値でB型肝炎が他の肝炎より有意に高値であったが, 正常化に要した日数はnon-A, non-B型肝炎とA型肝炎はB型肝炎より有意に長かった. 経過中のGOT, GPTの二峯性はnon-A, non-B型肝炎とA型肝炎に多くみられた. 遷延例はnon-A, non-B型肝炎に2例みられ, A型肝炎とB型肝炎では全経過250日の症例がみられたが全例治癒している. non-A,non-B型肝炎は発病の季節的傾向は認められなかった. また台湾, ボルネオで感染したと考えられる症例はそれぞれ1例ずつみられたが感染経路の推定出来る症例はなかった.
  • 稲本 元
    1983 年 57 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    免疫不全が知られている透析患者において免疫担当臓器の一つであるリンパ節の結核感受性を疫学的に検討した.
    対象は全国161施設の透析患者7,274人でそのうち病巣が明らかな結核患者は137人であった.リンパ節結核患者は27人, さらに13人はリンパ節外病巣をも有していた.リンパ節結核罹患率は一般住民に比べ透析患者男子で112倍, 女子で75倍高く, また女子の罹患率は男子より高かった.罹患率は加齢とともに高くなり50歳台に極大があった.死亡率は一般住民に比べ透析患者男子で211倍, 女子で389倍も高かった.リンパ節外結核を併存する例の致命性はさらに高かった.透析患者においては全結核あるいは肺外結核に占めるリンパ節結核の割合が多く, 他の結核に比ベリンパ節結核がより発生し易いことが判明した.
  • 稲本 元
    1983 年 57 巻 2 号 p. 142-147
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    免疫不全の知られる透析患者において結核以外の感染症による死亡例につき疫学的検討を行った.
    対象は全国の透析患者7,274人である. 透析患者における感染症の死亡率は, 年度, 年齢, 性の構成をマッチさせた一般住民群の場合に比べ男子で61倍, 女子で116倍も高かった. 感染症罹患部位は肺が最も多く, 次いで敗血症, 腹腔内, 肝臓, シャント部, 腸であった. 敗血症の原病巣は腎が最も多く, 次いで肺, 創傷, 肝臓, 腹膜, 胆嚢, 口内炎, シャント部等であった. 起炎菌はグラム陰性桿菌が主であった. 発病時期は腎不全末期, 透析療法開始3ヵ月前から多くなり, 開始後3ヵ月以内に最も多く, 以後も多いが漸減した. 生存期間は10日以内のものが多く, 平均18.4日であった. 年齢は年齢, 性をマッチさせた一般住民群におけるよりも若齢であった. 腎不全の原病としては腎炎の頻度が低く, 妊娠腎, 嚢胞腎, 糖尿病の頻度が高い傾向であった. 透析患者において感染症の発見および診断に有用であった所見は一般人の場合と比べかなり異なっていた.
  • 陳 茂楠, 山川 和臣, 中沢 省三
    1983 年 57 巻 2 号 p. 148-154
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Sulfamethoxazole-Trimethoprim合剤 (以下ST合剤と略) はサルファ剤であるSulfamethoxazole (以下SMXと略) と, 葉酸合成阻害剤であるTrimethoprim (以下TMPと略) より構成された抗生剤で, 髄液内移行がよいとされているが, 具体的に検討した報告は少い, 我々はST合剤の髄液内移行をみるため, 持続脳室ドレナージ施行中の5例の患者に経口的にST合剤2錠 (SMX 800mg+TMP 160mg含有) を投与し, 経時的に脳室内髄液を採取して, SMXおよびTMP濃度を測定し, 同時に両薬剤の血中濃度を測定した. また髄膜炎患者10例にST合剤上記量を12時間毎に連続投与し, 髄液中のSMXおよびTMP濃度を測定した. 脳室ドレナージ群では, SMXの血中濃度は投与後4時間にピーク (52μg/ml) を示し, 髄液中濃度は投与後7時間でピーク (7.9μg/ml) に達した. ピーク時の髄液血清比百分率は15%であった. TMPの血中濃度は投与後4時間にピーク (1.62μg/ml) を示し, 髄液中濃度は7時間でピーク (0.65μg/ml) に達した. ピーク時の髄液血清比百分率は40%であった. 髄膜炎患者10例の髄液内濃度は, SMXは2.4~11.6μg/mlの値を, TMPは0.26~1.23μg/mlの値を示し, 連続投与でほぼ一定の濃度が保たれ有効髄液中濃度に達していた. 以上より本剤の髄液内移行は極めて良好であり, 中枢神経感染症, 特に最近増加の傾向にあるグラム陰性桿菌による髄膜炎の治療に本剤が極めて有効であるとの結論に達した.
  • 特に終末期感染について
    加藤 清, 谷 賢治, 松永 敬一郎, 高橋 宏, 坂本 洋, 成田 雅弘, 長岡 章平, 石ケ坪 良明, 千場 純, 伊藤 章, 福島 孝 ...
    1983 年 57 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    SLEにおける肺感染症の終末期感染の変化の解析のために, 当教室にて経験したSLE患者80例について検討し, 2例の終末期感染を病理学的に確認した. 1例は副腎皮質ホルモン総投与量10gをこえており, 新鮮な結核病変を確認すると同時に, SLEに伴う強い血管炎を全身に認めた. 1例は急性呼吸不全を呈し, 剖検にて肺内巨細胞封入体を確認し, CMV感染症と診断しえた. 前者については, インターフェロンI型について高い抗体価を示した. ついで日本病理剖検輯報のSLE剖検例記載病変について肺感染症を検討した. 肺炎および気管支肺炎の群は, 1962年より1965年の群に有意の増加が認められ, これは副腎皮質ホルモンの我国における使用増加時期に一致する. CMV感染症とカリニー肺炎は, それぞれ確実に増加傾向にある.
    今後, これらの免疫機能低下時の感染症について充分な検討と配慮が必要と思われる.
  • 甲田 徹三, 倉堀 知弘, 柳ヶ瀬 康夫, 庄司 宏, 本田 武司, 三輪谷 俊夫
    1983 年 57 巻 2 号 p. 162-170
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    われわれは国内感染したエルトール型コレラ菌感染の症例を経験し, その環境汚染調査を行ったので, その結果について報告する. 患者は宝塚市在住の56歳男性で農業を営んでいる. 家族歴には特記すべき事項なく, 本人ならびに家族を含め親交のあった人々には渡航歴はない. 現病歴としては1981年9月1日昼食に冷凍食品 (輸入冷凍エビを含む) を摂取し2日夜中より口区吐, 下痢, 心窩部痛, 腓腹筋落痛のため某病院に入院, 虫垂炎と診断され手術を受けた. しかし, 症状は軽減せず乏尿となり, 精査により疑似コレラ患者として隔離, 検便の結果真性コレラと判明した. 血液は濃縮, 赤血球, 白血球とも増加, 下痢便は米のとぎ汁様に白濁して無臭, 固形物はわずかで1日排便量は数lに達した. 静脈内輸液およびホスタサイクリン, ペントシリンを投与し第8病日頃より全身状態は改善され第21病日に隔離を解除した. 入院時コレラ菌の産生する何らかの毒素によって心臓 (心室性期外収縮), 肝臓, 腎臓障害が現われたが全身状態が改善されるにつれ軽快した. なお9人が同一物を摂取しもう1人が発病しているが, 他病院に入院したので詳細は不明である. 一方, 分離コレラ菌の性状および患者居住周辺の環境調査の結果, 武庫川本流および関連河川からV. cholerae non-01いわゆるNAGビブリオを検出した. K (カッパー) ファージ産生の有無を指示菌であるV. cholerae-01 H218Smr株を用いて検討した結果, 河川分離株の一部にK (カッパー) ファージの産生株が認められた.
  • 嫌気性菌の重要性
    中村 功, 小田 敏郎, 大田 迪祐, 国広 誠子, 上田 尚紀
    1983 年 57 巻 2 号 p. 171-179
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1972年11月~1981年10月の10年間に当内科で経験した成人の非結核性膿胸20例を検討した.
    膿胸20例のうち, 嫌気性菌のみによるもの4例 (20%), 嫌気性菌と好気性~通性嫌気性菌との混合感染8例 (40%) であった. 1例当りの分離菌株数はそれぞれ2.5株と3.8株 (この中の2.4株は嫌気性菌) であった. 好気性菌のみによる6例はすべて単一菌感染, 菌陰性のものは2例であった.
    これら18例から分離された細菌総株数は50株で, これらの中の29株が嫌気性菌であった. 主な細菌を分離頻度が高い順に示すと, Bacteroides属10株, Peptostreptococcus属8, microaerophilic streptococci 6, Fusobacterium属3株などであった.
    嫌気性菌感染群12例中11例 (92%) で胸水に悪臭が認められたが, 好気性菌群と菌陰性群では胸水に悪臭を認めたものは皆無であった.
    胸腔内ガス貯溜は嫌気性菌群の7例 (59%) で認められたのに対して. 好気性菌群あるいは菌陰性群のいずれにおいても, 気管支胸膜瘻を生じていた1例を除いては, みられなかった.
    これらの結果は, 嫌気性菌が大多数の膿胸の病原菌として重要な役割を演じるものであるから, 正しい細菌学的診断と適切な化学療法剤選択のために嫌気培養が不可欠であることを示している. 胸水の悪臭と胸腔内ガス貯溜は, 嫌気培養の結果が出る前に嫌気性菌が関与した膿胸であることを予測的に診断する手掛りとなる信頼すべき臨床所見である.
  • 小田 隆弘, 磯野 利昭, 中川 英子
    1983 年 57 巻 2 号 p. 180-185
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1981年8月28日から30日まで韓国 (釜山) を旅行した福岡市内一民間会社職員27名のうち16名 (発症率59.3%) が在韓中の8月29日昼すぎから帰国後の9月1日朝にかけて, 下痢 (93.8%), 腹痛 (87.5%), 脱力感 (68.8%), 頭痛 (62.5%), 発熱 (37.5%), 吐気 (12.5%), 嘔吐, 悪感 (各6.3%) を訴える集団下痢症例が発生した.下痢は水様ないしは粘液便, 回数は最高10回, 平均4.5回で, 発熱は最高38.5℃, 入院を含めた臥床者が7名いたが死亡者はなく, 経過は良好で数日後に全員回復した. 患者の発生は31日をピークとする一峰性を示した. 在韓中の食事または飲料水が疑われたが感染源の推定はできなかった.
    細菌学的検査の結果, 患者13名中10名の便より毒素原性大腸菌 (ST+LT-) が検出され, 血清型別により, 034: H10と型別不能の2種の毒素原性大腸菌による複合感染事例である事が判明した.
  • 永井 龍夫, 白松 幸爾
    1983 年 57 巻 2 号 p. 186-190
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    わが国におけるヒトのリステリア症から分離されたリステリア菌の血清型は1型或いは1b型と4b型がほとんどである. そのほかの血清型として, 著者の一人永井は1974年に4d型, 1977年に2型の分離症例を感染症学雑誌に報告している.
    1980年5月, 胆石症で札幌医大病院第一外科に入院, 胆石の摘出手術をうけた患者 (23歳, 女性) の手術時に採取した胆汁からリステリア菌が純培養の形で分離された.
    分離菌株 (越前株) はグラム陽性の短桿菌で, 生物学的諸性状はリステリア菌に一致する. リステリア菌標準菌株の免疫血清 (O血清とH血清) について定量凝集反応および吸収試験を実施した結果, 越前株はリステリア菌3型と同定された.
    リステリア菌3型の分離ははじめてなので念の為, 越前株の免疫血清 (O血清とH血清) を作製して, 交叉的に定量凝集反応と吸収試験を行った結果, 越前株はまちがいなくリステリア菌3型であることが証明された.
    本症例は胆石症であって臨床的に胆嚢炎などの炎症は全く認められていない. 従って胆汁から分離された越前株と胆石症の間には因果関係はないものと思われる.
    リステリア菌が健康人の糞便から0.5%の割合で見出されるという報告があるが, 本症例は胆汁中に潜伏的に存在する可能性を示唆する点が興味深く思われる.
  • 1983 年 57 巻 2 号 p. 191-193
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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