感染症学雑誌
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57 巻, 3 号
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  • 第II報特に緑膿菌の血清型と感受性分布について
    薩田 清明, 黒川 顕, 大塚 敏文
    1983 年 57 巻 3 号 p. 195-204
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1977年4月から1981年12月の約5力年間に当センターに収容された患者の臨床材料から検出されたP.aeruginosaについて血清型や6種の抗生物質に対する感受性を検討し, また, これらの菌株と患者の糞便およびベットの周辺部から検出された菌株との間の血清型について調査し, 次のような成績が得られた.
    1) P.aeruginosaは2987検体中438検体14.7%から検出された. 分泌液, 喀痰, 熱傷部切片, 膿 (33.9~21.1%) などから比較的多く検出されたが, 尿からは, わずか5%であった. 年度別にみて, 提出される臨床材料は増加傾向を示しているが, 逆に, P.aeruginosaの検出率は減少傾向にあった.
    2) 328菌株について血清型を検査したところ, 325株 (99.1%) で判明した. E型が最も多く165株 (50.3%), G型が42株 (12.8%), I型が34株 (10.4%) であった. 年度別には, いずれの年度でもE型の占める割合が最も多いが, 徐々に減少傾向を示し, その他のいろいろの血清型が認められるようになった.
    3) 100μg/ml以上の耐性を示す菌株がSBPCで53.0%, DKBで39.5%, TOBで35.5%であった. 一方, AMK, CL, PLBに対する割合は, わずか1~2%であった. また, 年度別耐性菌の割合をみると, SBPC, DKBでは減少傾向を, TOBで増加傾向をそれぞれ示し, さらに, CL, PL-Bに対する耐性菌は1981年に入ってはじめて認められるようになった.
    4) 4症例中3症例の糞便およびベットの周辺部から, それぞれの臨床材料由来のものと同一血清型のP.aeruginosaが検出され, 残る症例でもほとんど同様の傾向で認められたことはOpportunistic infec-tionの様相を示唆しているものと推測される.
  • 岡崎 武二郎, 町田 豊平, 小野寺 昭一
    1983 年 57 巻 3 号 p. 205-211
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1981年に都立台東病院および慈恵医大病院で臨床分離された淋菌116株に対する Penicillin G, Ampicillin, Tetracyline, Kanamycin, Spectinomycinの5薬剤の最小発育阻止濃度とβ-lactamase活性について検討した.
    Penicillin GおよびAmpicillinでは, MIC 0.8μg/ml以上を示す耐性株は約55%であった. また, Tetracyclineでは, MIC 3.13μg/ml以上を示す耐性株は約30%であった. 一方, Kanamycinでは, MIC 25μg/ml以上の耐性株は約7%と少なく, Spectinomycinでは耐性株は認められなかった. Penicillin G と Ampicillinの間には, 強い感受性相関が認められた. 一方, Penicillin G と Tetracycline, Kanamycin, Spectinomycinの3薬剤の間には感受性は認められなかった.
    β-lactamase産生淋菌は約10%(116株中12株) で, その感染源は多くが国内感染であった.
  • 日本病理剖検輯報からの解析
    石ヶ坪 良明, 谷 賢治, 千場 純, 加藤 清, 松永 敬一郎, 長岡 章平, 成田 雅弘, 坂本 洋, 高橋 宏, 伊藤 章, 福島 孝 ...
    1983 年 57 巻 3 号 p. 212-218
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    SLEに合併する感染症の変遷およびSLEの死因における感染症の占める役割を解析する目的で, 日本病理剖検輯報に記載のあるSLE症例より, 感染合併例を抜枠し検討した.
    結果1958年より, 1976年までの19年間のSLE剖検例1,097例中, 感染合併例は526例 (48%) の高頻度に認められた. しかし, 年度別合併率については, 19年間の治療の変遷にかかわらず, 一定の傾向を認めず治療の修飾が, SLEにおける高率の感染合併に与える影響は少ないものと思われる. 又, 年齢別合併率についても, 各年齢層で有意の差を認めなかった. 感染所見のなかで, 特に頻度の高いものに, 肺炎 (1,097例中23%), 真菌症 (8%), 結核 (6%), 敗血症 (3%) 等が挙げられるが, 肺炎 (1,097例中3.5%) を除いて, 真菌症 (3.3%), 粟粒結核症 (2.5%), 敗血症 (2.0%) 等はこれらの感染症が直接死因となる症例が高率に認められた. 又, 近年, 化膿性脳脊髄膜炎も直接死因としての記載を認める (1.1%). 主死因別に感染合併率を検討したが, 死因が, ループス腎炎, 中枢神経症病変等のSLEの直接の原因によると思われる症例 (全症例の58%) に感染合併例の頻度が少ない結果 (2.2%) よりSLEの直接の病変が, SLEにおける高率の感染合併に与える影響は少ないものと思われる.
  • 堀内 成子
    1983 年 57 巻 3 号 p. 219-230
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    外科病棟における術後感染の様相を知る為の基礎的研究のひとつとして, 消化器手術患者の身体各部位における菌の動態を明らかにすることを目的として細菌学的検索を行った. 11例の対象について術前から退院まで経時的に身体各部位から検体を採取した結果, 以下の知見を得た.
    1) 検体総数493, 検出菌総株数761であった. 部位別にみると, 鼻腔でG.N.R.は検出菌のうちの12.7%を占め, 同様に咽頭13.5%, 喀疾17.2%, Staph. aureusが各々順に18.2%, 4.6%, 7.6%, 検出された. 術創・ドレーン排液からはStaph. aureusが28.2%・35.3%, G.N.R. が17.9%・35.3%検出された.
    2) 鼻腔, 咽頭細菌叢の術前後の変化をみると, 術後1病日に正常細菌叢のみの検体が術前より減少, Staph. aureus, G. N. R., 等が増加した.
    3) 鼻腔では, 経鼻胃内カテーテル挿入側に先ずStaph. aureus, P. aeruginosa等が検出され, カテーテル挿入と鼻腔内細菌叢の変化に関連性が認められた.
    4) P.aeruginosaを複数部位から検出した者は4例で, その全例が糞便中に同菌を認めた. 術後検出されたP. aeruginosaは部位は異っても同一患者においては血清型・薬剤感受性パターンが同一であった.
    5) Staph. aureusを複数部位から検出した者は6例で, その全例に共通の部位は鼻腔であった. 手指に検出した4例中2例は鼻腔・咽頭・喀疾・糞便中の同菌のコアグラーゼ型・薬剤感受性パターンも同一であった.
  • 臨床分離菌の群別と疾患との関連
    沢江 義郎, 竹森 紘一, 横田 英子, 筒井 俊治, 田辺 シヅェ
    1983 年 57 巻 3 号 p. 231-239
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    九大病院検査部において, 昭和54年から昭和56年にかけて分離されたβ溶血性連鎖球菌100株について, 抗血清による群別と生物学的性状による菌種の同定とを行ったところ, A群30株, B群47株, C群0株, G群11株, その他の群12株であり, B群が最も多かった. A群が多数検出された場合は上気道の化膿性炎症の原因菌であると云え, 続発症をひき起こしていた. B群の場合は膣炎や尿路感染症, ときに心内膜炎などの原因菌となっていたが, 常在菌と考えられるものが多かった. G群は上気道炎症の原因菌となるが, 他の菌種との混合感染が多かった. その他の群は歯肉膿瘍などの口腔内の試料から検出されることが多かった. これらの群別にはAPISTREP 20システムによる同定が最も有用であり, 抗血清によるものはときとして判定困難な株があった. A群の確認にはバシトラシン感受性検査がなお有用であるが, G群やその他の群のものが混入する可能性があった. B群の確認にはコロンビア培地での色素産生能が有用であった. また, A群溶連菌の血清型別ではT-12, T-6が半数を占めていた.
    薬剤感受性成績では, PC系やCEP系薬剤には未だ全く耐性菌は認められなかった. しかし, アミノ配糖体系薬剤にはB群は100%, その他の群も約70%が耐性で, TCにはA群とB群の約50%が耐性で, A群はさらにマクロライド系薬剤に40%が耐性で, CPをも含めた多剤耐性菌が多かった.
  • 重野 秀明, 岩永 正明
    1983 年 57 巻 3 号 p. 240-251
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    従来, 非 (弱) 病原性と言われてきたウボール型エルトールコレラ菌の病原性について, 動物実験におけるセレベス型エルトールコレラ菌との比較を行った. 実験は両型菌各5株の毒素産生性・感染性 (粘膜付着性)・発病性について行った. 毒素産生性は液体培地における培養上清と家兎腸内貯留液の毒素量を逆受身ラテックス凝集法により, 粘膜付着性は腸洗浄法と走査型・透過型両電顕法により, 発病性は幼若マウス (ICR系) 致死率・幼若家兎腸内液体貯留率・成熟家兎腸管ループ法によって判定した. その結果, セレベス型菌は全株いずれの検査においても強陽性を示したが, ウボール型の2株はいずれも陰性所見を示した.しかし, ウボール型の残る3株はセレベス型菌と同様の結果であった. 毒素産生性のみについてみると, 病原性株の中にもin vitroでは測定限界以下の産生能しかないがin vivoでは多量の毒素を産生する株がみられた. 粘膜付着性と毒素産生性のいずれか一方のみ陽性を示す株はみられなかった.
  • 薩田 清明, 吉本 達雄, 石橋 祥男, 安永 孝高, 丹羽 明, 乗木 秀夫
    1983 年 57 巻 3 号 p. 252-259
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    現在, インフルエンザワクチンの予防接種が禁忌とされている腎疾患のうち, 血液透析患者123名をワクチンの接種を希望する59名を接種群, 一方, ワクチンの接種を希望しない64名を非接種群とし, 接種群に対しては1980年度の市販ワクチンを0.5mlずつ4週間隔で2回接種し, ワクチン接種前後の血清および両群の流行前後の血清を用いて, HI抗体の産生状況や感染状況について検討し, 次のような結果が得られた.
    ワクチンの接種前に比べて, 接種4週後におけるワクチン株に対する平均HI抗体が有意の上昇で認められた.
    接種前の個々のHI抗体が接種後に有意の上昇 (4倍以上) を示すものがAソ連型, A香港型, B型に対し, それぞれ73%, 83%, 66%に認められた.
    また, 両群の前記の3つの型に対する感染率は, 接種群でのそれぞれ0%, 3.3%, 0%に対し, 非接種群ではそれぞれ11%, 36%, 11%を示し, 明らかに, 接種群の方が低い感染率を示した.
    以上のごとく, これらのグループに対してインフルエンザワクチンを接種し血中のHI抗体の上昇を求めることは感染予防のために有効な手段であることを示唆しているものと考えられる.
  • 多施設二重盲検法によるIbuprofenとの比較
    勝 正孝, 安達 正則, 早川 正勝, 藤森 一平, 河野 通律, 竹田 義彦, 関田 恒二郎, 荻原 宏治, 野口 龍雄, 飯塚 邦芳, ...
    1983 年 57 巻 3 号 p. 260-272
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    急性上気道炎患者に対する非ステロイド抗炎症・鎮痛剤Sulindacの有効性と安全性および有用性についてIbuprofenを対照薬として多施設二重盲検法により比較検討した. 試験薬投与期間は4日間で, 1日投与量はSulindacは300mg, Ibuprofenは900mgとした.
    有効性および有用性評価例はSulindac群141例, Ibuprofen群150例で, 安全性評価例はSulindac群144例, Ibuprofen群152例であった. 解析の結果, 症状別評価では落痛症状 (6項目) および局所炎症症状 (4項目) のうち3日目評価では頭痛, 腰痛および扁桃発赤で, 5日目評価では腰痛でSulindac群はIbuprofen群に比べ有意な改善がみられた他は全身・気道症状 (8項目) ならびに最終全般改善度, 概括安全度および全般有用度において両薬剤間に有意差は認められなかった.
    以上からSulindacは急性上気道炎に対してIbuprofenと同等の効果を示す有用な薬剤と考えられる.
  • 森 清志, 山崎 昭, 岸川 悦子, 杉崎 登, 久米 光
    1983 年 57 巻 3 号 p. 273-279
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    我々は, ヘビなどの爬虫類の腸内常在細菌として知られているEdwardsiella tarda (E.tarda) による敗血症を経験したので報告する. 症例68歳男性. 臨床診断: 糖尿病, 肝癌, 胃癌 (重複癌) 胆管炎. 経過: 昭和54年8月30日, 発熱, 悪寒戦藻及び黄疸のため入院. 入院時より持続する悪寒戦慎及び間欠熱と炎症所見より敗血症を疑い, 動静脈血及び便の培養施行し, E. tardaを分離培養しえた. 臨床像と培養成績から本菌を病原と判断し, 抗生剤を投与. 投与開始5日目から体温37℃前後と解熱し, 検査所見の改善もみられた. 又, 同時に施行した動静脈血及び便の培養でも, 本菌の陰性化をみた.
    敗血症の誘因としては, 悪性腫瘍に対する抗癌剤の投与ならびにケトアシドーシスを招く糖尿病など感染抵抗性の減弱した患者に胆道感染症が合併して敗血症を誘引したものと推測される.
    以上, 本症例は, 血液, 便よりE. tardaを分離培養しえ, さらに血液株では, コリスチンに対し感受性であった稀少な症例を経験したので報告した.
  • 自験例, 本邦報告例の検討
    谷 賢治, 高橋 宏, 加藤 清, 松永 敬一郎, 坂本 洋, 成田 雅弘, 千場 純, 進藤 邦彦, 伊藤 章, 福島 孝吉
    1983 年 57 巻 3 号 p. 280-285
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    風疹に続発する中枢神経系合併症のうち, 脳炎を併発した成人の一例を報告し, 本邦の報告例11例の文献的考察を加え, 小児の風疹脳炎と比較検討し報告した.[症例] 22歳男性.主訴は嘔吐と意識消失. 家族歴と既往歴に特記事項なし. 現病歴は体幹部の粟粒大の発疹, 発熱と頭痛が初発症状, 3日後に症状消失, 第7病日に主訴出現し入院. 意識レベルは100で神経学的な病的反射と髄膜刺激症状はなし, 末梢血で白血球増多と核の左方移動, 血清の風疹抗体価はHI512倍, CRP (±) とIgA増加. 検尿で蛋白 (+), 糖 (2+), 沈渣は赤血球やや多数/1視野, 白血球18~20/1視野. 腰椎穿刺で初圧75mm水柱, 細胞数189/3 (顆粒球59/3, リンパ球130/3), 蛋白94mg/dl, 脳波はθ波のslowing. 第8病日の意識レベルは3で項部硬直出現. 第9病日の血清風疹抗体価4,096倍, 第11病日の意識は明瞭, 第12病日に項部硬直消失. 第14病日の血清風疹抗体価8,192倍, 第27病日は2,048倍と低下.[自験例を含む本邦の成人風疹脳炎12症例と小児風疹脳炎の比較] 発疹出現から脳炎症状出現までの日数, 臨床症状, 髄液所見で成人の風疹脳炎と小児の風疹脳炎に差は見られないが, 初発症状で小児例に嘔気, 嘔吐と痙李が見られるのに成人例では認められない事や, 予後で小児例に死亡する例が有るが成人例では無い事が異なる.
  • 1983 年 57 巻 3 号 p. 286-288
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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