1973年1月より1977年10月までに栃木県日光市内にある二小学校在籍児 (延13,397名) に対して約97%にあたる12,988名について15回の咽頭培養と3回の採血を行った. 血清学的にβ溶血連鎖球菌の群別, T型別を行い, ASO価を測定し, 対象とした学童の中から発生したSF, AGN患者についても同様の調査を行った結果, 次の如くであった.
1) 二小学校におけるβ溶連菌の保菌率は冬期高く, 夏期に低く, 最高42.6%, 最低10.9%であり, この内A群82.0%, B群4.0%, C群3.5%, G群10.0%であった.
2) A群溶連菌をT型別にみると全国的な流行菌型を反映しており, 5年間を通じて, 1, 4, 12型が主要菌型であった.
3) しかし, 菌型推移は学校により異っており, 学級を流行単位として拡大して行く傾向を示している.
4) 12型については, 1, 4型とは流行像を若干異にしており, 今後に興味のある菌型である.
5) SF, AGNの患者では比較的保菌状態の乏しい結果を得た.
6) 長期保菌状態は必ずしもASO価の上昇には結びついておらず, 新たな菌型の導入によって, ASO価は変化した.
7) 保菌状態による抗体上昇は明らかであり, この意味では大きな保菌者流行を起した菌型での患者流行はむしろ稀と考えられる.
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