1979年から1981年の3年間に東京都で発生したカンピロバクターによる集団下痢症例は15例認められた. その発生場所は, 保育園, 福祉園, 寮, 飲食店および家庭が8例, 他の7例は他府県への団体旅行に際して発生した.
15例の患者総数は858名であった. このうち調査した849名の患者の主症状は下痢 (84.1%), 腹痛 (74.1%), 発熱 (48.2%), 頭痛 (30.0%), 嘔気 (31.1%) であって, 嘔吐は少なく9.4%にすぎなかった.
原因食品は飲食店で発生した例が“あさりのぬた”, 家庭の誕生日パーティーによる例が鶏肉であった. その他の13例については原因食品を明らかにできなかった.
患者ふん便630件中278件 (44.1%) から
C. jejuniが検出された. なお, 高校生の修学旅行の際に発生した例 (事例No.15) では患者ふん便から
C. jejuniが86.7%に検出されたが, 同時にenteropathogenic
E. coli O111: K58が9件 (30.0%) 検出され, 本例は両菌種による混合感染例であった. 各流行例から検出された
C. jejuni 313株中305株が著者らの血清型に該当した. 認められた血清型はTCK1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 14, 18および21の各型であった.
7例の集団発生例患者を対象に分離菌株に対する血中抗体価を検討したところ, 一例の回復期患者血中には特異抗体の上昇が認められたが, 他の6例の患者では抗体の上昇が認められなかった.
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