感染症学雑誌
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57 巻, 7 号
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  • I. 体液性免疫との関係について
    平林 淳朗, 長瀬 啓三, 戸谷 徹造
    1983 年 57 巻 7 号 p. 551-562
    発行日: 1983/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    消化管内では腸管内常在細菌が腸内細菌叢を形成し, 宿主との間にhost-parasite relationshipが成立し互いに共利共存関係が維持されている. こうした環境下に新たに消化管寄生虫の感染が宿主にいかなる影響を及ぼすか. C57BL/6germfreeマウスを用い酵素抗体法, Plaque法等によりconventionalマウスと免疫学的に比較検討を試みた.
    腸管粘膜固有層における免疫グロブリン産生細胞の変動はconventional群, germfree群とも数は異なるがほとんどが小腸では絨毛基底部近辺の粘膜固有層, 大腸では管腔側の粘膜固有層に認められた. IgA産生細胞数はgermfree群ではconventional群に比し極度に減少していたが, IgG, IgMは共に軽度の減少を示したのみであった. また消化管寄生虫N. brasiliensisを感染した群では免疫グロブリン産生細胞にさほど大きな影響を示さなかった.
    JerneのPlaque法によるIgM-PFC, IgG-PFCの検討ではconventional群はIgM-PFC, IgG-PFCともに週齢の増加に伴って高値を示し, また感染群でも同様な傾向が認められた. これに対しgermfree群ではconventiona1群に比し著しい傾向が認められた.
    一方, 両群における血清IgAは週齢の増加とともに上昇傾向が示され感染による影響がみられた. germfree群では全般的にconventional群に比し低値を示した. またIgGも同様な傾向が認められた. IgMはconventional群で若齢より10週齢まではIgA, IgGに比し高値を示したが, 20週齢に至り低値を示した. germfree群では感染群がいずれも高値を示した.
  • II. 細胞性免疫との関係について
    平林 淳朗, 長瀬 啓三, 戸谷 徹造
    1983 年 57 巻 7 号 p. 563-569
    発行日: 1983/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    腸管内常在細菌叢と消化管寄生虫の関係について前報の体液性免疫に次いで細胞性免疫とのかかわりをC57BL/6germfreeマウスを用いてN. brasiliensis感染により塩化ピクリルによる遅延型皮膚反応と足蹄試験により検討を行った.
    遅延型皮膚反応ではconventional群, germfree群とも一次反応, 二次反応が認められ10週齢をpeakに以後減少するpatternを示し加齢に伴って低下を示した.
    足踪試験ではconventiona1群, germfree群ともにN. brasiliensis 感染後10日目まで増加傾向を示したが, 以後減少を示し, 両者に遅延型反応における有意差を認めなかった. 足踪試験における惹起抗原の共通抗原性についてはN. brasiliensis抗原, Salmonella typhimurium抗原などにて検討し, N. brasiliensis抗原, Salmonella typhimurium抗原に強い足踪腫脹が認められた. 尚, 対照としてのヌードマウスには腫脹は認められなかった.
  • 輸入鳥について
    三宅 恭司, 石原 佑弌, 藤浦 明, 井上 裕正
    1983 年 57 巻 7 号 p. 570-575
    発行日: 1983/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近, 輸入鳥に起因する動物検疫官のオウム病罹患や, 一般人の重症例, 死亡例が報告され, 感染源として輸入鳥が注目されてきた.
    そこで, 輸入鳥7種類, 計242羽についてChlamydia psittaciに対する抗体保有率を調べ, CF抗体陽性であった鳥については病理学的検査も行い以下のような結果を得た.
    242羽のCF抗体陽性率は19羽 (7.9%) であった. 鳥種別ではボタンインコが22.2%と最も高く, 次いで十姉妹の17.0%で, 他の鳥種では6.7~9.7%の陽性率にとどまった. なお, 文鳥及びキンカ鳥は全例CF抗体陰性であったが, HI抗体は24.3%と, 12.5%にそれぞれ認められた.
    19羽のCF抗体価は4~128倍に分布したが, 比較的高い抗体価を保有した例は十姉妹に多く認められた.
    また, 19羽の内部臓器肉眼検索では, 十姉妹の1羽にオウム病の特徴所見と言われる肝と脾の腫大がみられた. 組織学的検索では14羽の肝に実質細胞の巣状壊死, ビマン性壊死, 炎症性細胞浸潤等の病変が認められ, 14羽中11羽の肝あるいは脾に封入体の存在が確認された. 肝病変あるいは封入体の存在はCF抗体価8倍以上を保有した例に多く認められた.
    以上から, CF抗体陽性であった19羽のうち14羽にオウム病が示唆された. また, 封入体の存在から11羽にChlamydia psittaciの保有が確認され, 人オウム病の感染源としての重要性が示唆された.
  • 伊藤 武, 斉藤 香彦, 柳川 義勢, 甲斐 明美, 高橋 正樹, 稲葉 美佐子, 高野 伊知郎, 坂井 千三, 大橋 誠
    1983 年 57 巻 7 号 p. 576-586
    発行日: 1983/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1979年から1981年の3年間に東京都で発生したカンピロバクターによる集団下痢症例は15例認められた. その発生場所は, 保育園, 福祉園, 寮, 飲食店および家庭が8例, 他の7例は他府県への団体旅行に際して発生した.
    15例の患者総数は858名であった. このうち調査した849名の患者の主症状は下痢 (84.1%), 腹痛 (74.1%), 発熱 (48.2%), 頭痛 (30.0%), 嘔気 (31.1%) であって, 嘔吐は少なく9.4%にすぎなかった.
    原因食品は飲食店で発生した例が“あさりのぬた”, 家庭の誕生日パーティーによる例が鶏肉であった. その他の13例については原因食品を明らかにできなかった.
    患者ふん便630件中278件 (44.1%) からC. jejuniが検出された. なお, 高校生の修学旅行の際に発生した例 (事例No.15) では患者ふん便からC. jejuniが86.7%に検出されたが, 同時にenteropathogenic E. coli O111: K58が9件 (30.0%) 検出され, 本例は両菌種による混合感染例であった. 各流行例から検出されたC. jejuni 313株中305株が著者らの血清型に該当した. 認められた血清型はTCK1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 14, 18および21の各型であった.
    7例の集団発生例患者を対象に分離菌株に対する血中抗体価を検討したところ, 一例の回復期患者血中には特異抗体の上昇が認められたが, 他の6例の患者では抗体の上昇が認められなかった.
  • 小林 宏行, 北本 治, 斎藤 玲, 加藤 康道, 富沢 磨須美, 中山 一朗, 阿部 守邦, 氏家 昭, 木下 与四男, 矢島 敢, 長浜 ...
    1983 年 57 巻 7 号 p. 587-629
    発行日: 1983/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症に対するCefpiramide (CPM) とCefmetazole (CMZ) の臨床効果と副作用を比較検討する目的で, 全国42施設の共同研究として二重盲検比較試験を行い, 以下の成績を得た.
    1) 呼吸器感染症に対するCPM1日2gとCMZ1日4gの臨床効果については, 両薬剤群間に有意差は認められなかった.
    2) 細菌学的効果ならびに症状, 所見, 臨床検査値の改善度においても, 両薬剤群間有意差は認められなかった.
    3) 副作用および臨床検査値異常の種類および発現率において, 両薬剤群間に有意差は認められなかった.
    4) 臨床的有用性においても, 両薬剤群間に有意差は認められなかった.
    以上よりCPM2g/日は, CMZ4g/日とほぼ同程度の臨床的有用性を有するものと考えられた
  • 矢野 敬文, 宮本 祐一, 野田 和良, 江頭 泰幸, 斉藤 敏明, 大宅 一平, 庄司 紘史, 加地 正郎, 倉田 毅, 青山 友三
    1983 年 57 巻 7 号 p. 630-637
    発行日: 1983/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    激症型単純ヘルペス脳炎の2剖検例を報告した. 症例1は26歳, 女性, 血清, 髄液のCF抗体価陰性, ELISA抗体価陽性, CTでmass effect, 線状影, 輪状影を認め第11病日に死亡. 剖検で急性壊死性脳炎の所見を呈し, 脳組織に蛍光抗体法で, HSV抗原, 電顕でウイルス粒子を認めた典型例であった. 症例2は24歳の女性, 三叉神経の関与を示唆する顔面痛, 眼痛で発症し, 血清, 髄液のCF抗体価陰性, ELISA抗体価陽性, CTで線状影を認め26病日に死亡. 剖検所見での病変は軽微で, 非典型的であったが蛍光抗体法でHSV抗原陽性であった. 激症型単純ヘルペス脳炎の生前診断は必ずしも容易でないが, CT, ELISA抗体価測定は早期診断の手がかりとして有用であった. また, 感染経路に関して若干の考察を加えた.
  • 1983 年 57 巻 7 号 p. 639-641
    発行日: 1983/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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