感染症学雑誌
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58 巻, 12 号
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  • 島田 邦夫, 辻 英高, 小野 一男, 木村 英二
    1984 年 58 巻 12 号 p. 1271-1278
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近, 下痢症の原因菌としてCampylobacter jejuni/coliが注目されている. 我々はCampykobacterの培養性状について基礎的な検討を加え, ニワトリからC. jejuniおよび小児下痢患者からのC. jejuni, Salmonella, Rota virusの検索を試みた.
    C. jejuniおよびC. fetus ss. fetusの至適温度は臨床用チオグリコレート培地で, それぞれ36.5℃および32.5℃付近にあり, 37℃培養では両菌種とも増殖は70時間でplateauの域に達する. C. jejuniはCary-Blair輸送培地中で生残性が高く, 糞便の輸送培地として適当であった.
    小児下痢患者からのC. jejuni, SakmonellaおよびRota virusの検出は, 307検体中それぞれ76件 (検出率24.8%), 25件 (8.1%) および23件 (7.6%) で, C. jejuneは年間を通じて検出され, Salmonellaは夏期に, Rota virusは冬期に多発した. また年齢からみるとC. fejuni, Salmonellaはどの年齢からも検出されるが, Rota virusについては検出した者の91.3%までが2歳以下の幼児に集中した.またC. jejuniとSalmonella, C. jejuniRota virusによる混合感染例がそれぞれ5名, 2名認められた. ニワトリからのC. jejuni検出は直腸便45検体中18件 (検出率40.0%), テバ9検体中1件 (11.1%) が陽性であったがミンチ肉3検体からは検出できなかった. 牛乳中でのC. jejuniの生残性は高く, 25℃や37℃保存では徐々に菌が減少し, 4℃では1週間後でも菌の減少を認めなかった. このことは本菌食中毒の感染様式を考察する上に注目すべきことと言える.
  • 1. 福井県嶺北地方住民の慈虫病リケッチアに対する抗体保有状況
    高田 伸弘, 立藤 規子, 星野 孝, 緒方 昭, 藤木 典生
    1984 年 58 巻 12 号 p. 1279-1284
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近の全国的な慈虫病の急増を背景に, 北陸地方において本病の疫学的側面につき調査を開始した. 今回は福井県嶺北地方住民のR. tsutsugamushiに対する抗体の保有状況について報告, 論議した.
    1. 14地区の合計1,103名の成人についてGilliam株抗原により間接蛍光抗体法で調べたところ, IgG抗体の保有率は平均10.0%(2.2-27.7%), 抗体価の分布は10倍 (52.7%), 20倍 (33.6%), 40倍 (9.1%) および80倍 (4.5%) で, それらのうち12.7%にIgM抗体が検出された.
    2. 性別, 年齢別での抗体保有率の偏りは少ないと思われたが, 職業別には農林業従事者に陽性率が高く, 一般に山麓・山間地区に高率な傾向がみられ, 有毒地の存在も示唆された. 最も保有率の高かった勝山市郊外の地区では健康診断の資料などから本病の発症の裏づけを試みたが, 明らかにできなかった。
  • 児玉 博英, 徳満 尚子, 杉山 純一, 島田 俊雄, 坂崎 利一, 志甫 美徳
    1984 年 58 巻 12 号 p. 1285-1288
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1983年10月, 富山県内で, 東南アジア旅行後の1下痢症患者から分離された菌株OT 30株は, その生化学および血清学的性状からShigella boydii 18型と同定された. 同菌型は, これまでにインド亜大陸や西アジアにおける分布が知られているが, 本事例により, 東南アジアにも分布することが判明した. 本邦では初の分離例と思われる.
  • イブプロフェンを対照薬とした比較検討
    田村 昌士, 伊藤 隆司, 須藤 守夫, 田沢 稔, 佐山 恒夫, 吉田 雅美, 鈴木 あや子, 佐藤 正男, 村上 剛久, 宮本 伸也, ...
    1984 年 58 巻 12 号 p. 1289-1304
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    急性上気道炎は, 日常多く遭遇する疾患の一つであるが, 現在のところ有効な原因療法は期待し難い. したがってその治療法も咽喉頭痛, 発熱, 頭痛, 鼻汁等に対する対症療法が主となり, 薬物療法としては非ステロイド系鎮痛・抗炎症剤, 抗生物質が繁用されている.
    フルルビプロフェンflurbiprofen, 2-(2-flnuoro-4 biphenylyl) propionic acidはプロピオン酸系の非ステロイド系鎮痛・抗炎症剤であり, 英国ブーッ社で開発され, Fig. 1に示す化学構造式を有し, 本邦においては「フロベン」という商品名ですでに発売されている. その鎮痛および抗炎症効果については, すでに慢性関節リウマチ, 腰痛症をはじめ口腔外科領域の疼痛等について臨床試験が行われ, 高い有効性と安全性が確認されている.
    今回われわれは, 急性上気道炎に本剤の有用性を検討するために, すでに有用性が確められ繁用されているイブプロフェンを対照薬とした二重盲検比較試験を行ったので報告する.
  • 西浦 常雄, 加藤 直樹, 中尾 亨, 熊本 悦明, 橋爪 壮, 北川 龍一, 林 康之, 中村 正夫, 長田 尚夫, 小島 弘敬, 赤尾 ...
    1984 年 58 巻 12 号 p. 1305-1314
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近, 米国で開発されたChlamydia trachomatisの主要膜タンパクに特異的なFITC標識モノクロナール抗体 (Micro Trak TM Chlamydia trachomatis Culture Confirmation TestおよびDirect Specimen Test) の有用性について検討した.
    reference strainを用いた検討では, Micro Trak試薬はChlamydiapsittaciとは全く反応せず, C.trachomatisの15血清型とのみ強く反応し特異的であった. Micro Trak法により検討された延べ症例数は1,034例であった. Culture Confirmation Testによる成績は培養法でのGiemsaまたはヨード染色による成績と全く一致していたが, 検出された検体中の封入体数はMicro Trak法が多い傾向がみられ, その特異性の点からも優れた方法と考えられた. Direct Specimen Testの培養法との陰性一致率 (培養法陰性例に対する培養法陰性例中のDirect Specimen Test陰性例の率) は89.0%で, 直接塗抹標本においても反応は特異的であることが確認された. 陽性一致率 (培養法陽性例に対する培養法陽性例中のDirect Specimen Test陽性例の率) は69.7%であったが, 塗抹標本からのChlamydiaの粒子の検出には検体の採取法, 塗抹法および鏡検上の習熟が大きな影響を持つことから, これらの改善, 習熟により検出率はさらに向上することが示唆された. 以上より, Direct Specimen Testは特別な設備を必要としない, 簡便, 迅速なC.tmchomtis検出法として極めて有用な臨床検査法であると考えられた.
  • 酒井 克治
    1984 年 58 巻 12 号 p. 1315-1328
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    新規非修飾型静注用乾燥イオン交換樹脂処理人免疫グロブリン製剤SM-4300と抗生剤との併用効果および安全性と有用性について検討し, SM-4300は外科領域における重症細菌感染症に対して, 抗生剤と併用して, その臨床効果ならびに細菌学的効果が期待され, 安全かつ有用な静注用人免疫グロブリン製薬であると考えられる結果を得た.
    対象は昭和57年12月から昭和59年3月までに全国35施設に入院した重症細菌感染症患者で, 3日以上の抗生剤療法による治療効果が不充分かあるいは認められなかった153例にSM-4300が投与された.
    主治医判定の評価対象は129例で, 著効12例 (9.3%), 有効44例 (34.1%), やや有効39例 (30.2%), 無効34例 (26.4%) であり, 有効以上の有効率は43.4%で, やや有効を含めると73.6% の有効率であった.
    判定委員会における採用症例は82例で, 著効8例 (9.8%), 有効37例 (45.1%), やや有効21例 (25.6%), 無効16例 (19.5%) であり, 有効率は54.9%で, やや有効を含めると80.5%であった. また, これらのうち, 細菌学的効果を検討し得た症例は52例で, 分離菌別細菌学的効果は57株中菌消失22株 (38.6%), 菌減少8株 (14.0%), 不変27株 (47.4%) であった.
    判定委員会採用症例について, 基礎疾患の種類, 感染症の種類, 原因菌の種類ならびにSM-4300の投与量および投与回数と臨床効果の関係について検討したが, 一定の傾向は認められなかった.
    副作用については, SM-4300の投与された全153例のうち, 自・他覚的副作用の発現した例はなく, 臨床検査値異常は3例 (2.0%) に認められたが, いずれも臨床上問題と考えられるものはなかった.
  • 特に急性期の病像について
    高松 健次, 中野 義隆, 小松 裕司, 南川 博司, 西本 正紀, 宮本 修
    1984 年 58 巻 12 号 p. 1329-1337
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    昭和57年4月より58年7月までの16ヵ月間に当科で治療した在宅発症細菌性肺炎71例中67例についてそのX線陰影吸収速度を検討し, 7例 (10.4%) で炎症所見消失後も8週間以上の陰影吸収の遷延を認めた. これら7例について患者背景, X線像, 起炎菌を検討すると共に, 通常の経過をたどる肺炎と急性期においても病像の相違があるか否かを検討した. 7例の平均年齢は68.1歳と高齢で, うち6例が男性であった. 5例に基礎疾患がありCOPDが4例と多数を占めた. X線像に特徴的なものはなく起炎菌も不明なものが多かった. 急性期の発熱の程度, 白血球数, CRP, 血沈値にも, 全体71症例及び65歳以上の高齢者32例と比較し, 特別の偏りは認められなかった. 治療に対する初期の反応を治療開始後からの発熱, 白血球増多, CRP陽性の持続日数で観察してみると, それぞれ平均5.8日, 7.8日, 21日間であり, 全体71例のそれぞれ3.1日, 7.7日, 11.7日と比較して, 発熱とCRP陽性の持続日数が約2倍の延長を示すのに対し, 白血球増多日数は変わらないという結果であった. すなわち陰影吸収の遷延する肺炎は, それ自体特別に重症なものではないが, 治療に対する初期の反応において治癒傾向発現の若干の遅延が認められた. 一方, 末梢白血球増多が比較的速やかに消失したことは, 病巣内白血球との消退速度とも関連し興味ある点と思われた。
  • Cross over法による比較試験
    珠玖 洋, 山田 一正, 小林 政英, 井野 晶夫, 平野 正美, 鈴木 例, 仁田 正和, 御供 泰治, 杉原 卓朗, 大野 竜三, 吉川 ...
    1984 年 58 巻 12 号 p. 1338-1351
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    造血器疾患に併発した重症感染症に対する静注用乾燥イオン交換樹脂処理人免疫グロブリン製剤 SM-4300の抗生剤との併用効果について検討した。 方法は静注用乾燥ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン製剤 (PEG・γG) を対照とするCrossover法による比較試験により, その有効性および安全性を評価し, 以下の成績を得た. なお, 投与量は両剤とも5.0g/dayl回点滴静注とした.
    1. 総投与例数は48例で, 先行剤および後続剤が投与され同一患者による両薬剤の優劣比較を行い得た症例数は26例であった. また, 先行剤あるいは後続剤において脱落と判定された7例を除く70例中, SM-4300投与例は34例, PEG・γG投与例は36例が総合臨床効果判定対象とされた.
    2. 両薬剤の効果を比較し得た26例中, SM・4300が優れたもの7例, PEG・γGが優れたもの5例, 同等と判定されたものは14例であり, 両者ほぼ同等の成績であった。
    3. 総合臨床効果の判定において, SM-4300投与34例中12例 (35.3%) に, PEG・γG投与36例中12例 (33.3%) に有効以上の効果が認められ, やや有効を含めると SM-4300投与例50.0%, PEG・γG投与例52.8%であり, いずれも両薬剤群間に有意差は認められなかった.
    4. 副作用は全77例について検討したが, SM-4300投与39例中1例に点滴静注直後に軽度のふらつき, 冷汗が認められた以外に臨床検査値異常を含め副作用と判定されたものはなく, 両薬剤の安全性は同等と考えられた.
    以上の成績よりSM-4300は, PEG・γGと比較して, 有効性および安全性は同等と考えられ, 重症感染症における抗生剤との併用において有用な製剤の1つと考えられた.
  • 1984 年 58 巻 12 号 p. 1433-1435
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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